1988年「ロックの殿堂」授賞式でのザ・ビートルズの受賞スピーチ
ザ・ビートルズ(The Beatles)が、“最後のビートルズ・ソング”「Now And Then」、そして1973年に発売された2つのベストアルバム『The Beatles 1962-1966』(通称:赤盤)と『The Beatles 1967-1970』(通称:青盤)の2023年ヴァージョンをリリースすることが発表となった。
この発売を記念して、ザ・ビートルズやザ・ビートルズのメンバーが“ロックの殿堂入り”を果たした際の授賞式でのスピーチの翻訳を連続してご紹介。
本記事では、ザ・ビートルズがロックの殿堂入りを果たした1988年の授賞式でのザ・ビートルズのメンバーと関係者による受賞スピーチをお届けする(ポールは欠席)。
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リンゴ・スター:(ミックの紹介スピーチを受けて)ミックと初めて会ったのは1962年のことだった。
ここでは“どうも”とか“ありがとう”と挨拶するように言われたものでね。で、スピーチを用意してきたんだけれども……これを書いた1922年には判読できたんだけど……破り捨てることにしよう(会場笑い)。みんな、座って。何時間もここにいるつもりなんだから。ああ、後ろの方は座席がないんだね。
とにかく、ここにいるみなさんに感謝したい。僕たちをロックの殿堂に入れてくれたみんなにお礼を言いたいよ。ロックの殿堂、いい響きだよね。僕たちはずっと“ポップ・グループ”と呼ばれてきたけど……(会場笑い)。
続けろって? ジョージ、次はきみの番だ。僕はいい調子でやっている。彼にはきっとわかっているよ。まあそんなことはいいとして、僕たちは4人組だったわけだけど、ここにはジョージと僕、それにヨーコ、ショーン、ジュリアンがいる。メンバーが増え続けているんだよ(会場笑い)。だから……早いところ帰ろう。まあ僕が伝えたいのはそんなところだ。ありがとう、ありがとう、ありがとう。
ジョージ・ハリスン:どうもありがとう。僕は”静かなるビートル”と呼ばれているくらいだから、あんまり話さなくてもいいでしょう(会場笑い)。ポールがここにいないのは残念です。だってスピーチ用の原稿は、ポールが彼のポケットに忍ばせていたのですから(会場笑い)。
リンゴ・スター:なあ、どうして僕たちは「Octopus’s Garden」をやらなかったんだ?
ジョージ・ハリスン:その話はあとですることにしよう(会場笑い)。
ジョージ・ハリスン:さてと。ジョンがここにいない理由は、みなさんもご存知の通りです。彼が生きていたなら、きっと出席していたことでしょう。ザ・ビートルズの代表としてこうしてここに立たなくてはならないのは、本当につらい。残念なことだけれども、残ったメンバーはこれだけです。だけど僕たちはみんな、彼のことが大好きだったし、ポールのことも大好きです。
そもそも、僕たちがバンドを組むきっかけを作ったのは、すでに「ロックの殿堂」に入っている人たちです。レッドベリーもその一人だね。というのも、彼の楽曲を盗むところからスキッフルは始まったんだから。そして僕たちが13歳で演奏し始めた音楽がスキッフルでした。僕たちは、「ロックの殿堂」に入っている人たちや、今夜殿堂入りをする人たちから多大な影響を受けてきました。ギターを手に入れて、バンドを始めたいと思ったのは、ひとえに彼らのおかげなのです。当時はまともな職にも就つけない時代でしたし……。
とにかく、それが結果としてうまくいって、僕たちは自分たちでも予想していなかったほどの大きな成功を収めることができました。こうしてここに立てるのは間違いなく素晴らしいことです。本当に“ゾクゾクする”経験です(訳注:「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」の一節”It’s certainly a thrill”の引用)。
みなさん、特にロックンローラーのみなさん、本当にどうもありがとう。リトル・リチャードもあそこにいますね 。何もかも彼のせいだよ!
リンゴ・スター:モハメド・アリのことも忘れちゃいけないよ(会場拍手)。
ジョージ・ハリスン:そう、モハメド・アリのことも忘れはしないよ。その昔、彼は僕たちをマイアミ・ビーチで出迎えてくれたんだ。とにかく、みなさんどうもありがとう。ジョンに代わって感謝します。ヨーコ、ショーン、ジュリアンが来てくれたからそれで十分だね。どうもありがとう。みなさんに神の御加護を。
オノ・ヨーコ:ジョンがここにいなくて残念です。もしも彼がまだこの世にいたなら、きっとこの場に出席していたことでしょう。彼はそういう人でした。音楽と愛、そして遊び心に満ちていたんです。私にとって、ここに立つのはつらい気持ち ―― いえ、嬉しさとつらさが入り混じった気持ちがします。けれども人生には必ず恵みがあるものです。実際、私たちには、こんなにも素晴らしい二人の子どもたちがいます。亡き夫、ジョン・レノンにこの栄誉を授けて下さったアーメット、ヤン、そして「ロックの殿堂」の理事会に感謝します。ありがとうございました。
ジュリアン・レノン:何も用意してきていませんが……僕が言いたいのは、まず、父がここにいなくて残念だということです。ここに自分が立つのは少し場違いな気もします。ともあれ、生前、人生におけるヒントをたくさんくれた父に感謝します。そして、ザ・ビートルズのほかのメンバーにも感謝します。彼らは、僕だけでなくたくさんの人びとに人生を生き抜くヒントを与え、背中を押してきたのですから……。ありがとうございました。
ショーン・レノン:えーと……僕はまだ少し未熟なので、こういうことに慣れていません(当時13歳)。だけど……僕はいまでもザ・ビートルズのことが大好きです。僕自身は何もしていないのにこの場に立つことができて、すごく誇りに思います(会場拍手)。ありがとうございました。
リンゴ・スター:僕たちはみんな、何をしたわけでもないのにここに立っているんだ。だから賞をもらって、さっさと次に進もう(会場笑い)。
『ザ・ビートルズ 1962年~1966年』(赤盤) 2023エディション
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