史上最高のメタル・アルバム25枚
ヘヴィ・メタルは熱心なファンの献身的な愛を刺激し、お気に入りのバンドに対して揺るぎない忠誠心をファンに誓わせ、彼らが受ける他ジャンルからの侮辱に対しても戦う心構えができるという、部族的な本能を引き出した。その意味において、史上最高のメタル・アルバムを選出する作業は、非常に難しい任務である。
へヴィ・メタルは数十年に渡り何度も形を変えてきたが、それは音量や攻撃性、そしてサウンドの表現方法など多岐にわたり、常にジャンルの境界線を押し広げてきた。今回の記事「史上最高のメタル・アルバム25枚」は、絶え間なく進化するへヴィ・メタルと、メタルを表舞台へと引き出した、時代を画する重要作品であることに注目して選出した。
(*本記事およびリストは本国uDiscovermusicの翻訳記事です)
ブラック・サバス『Paranoid』(1970)
デビュー・アルバムからたった半年後にリリースされ、「Iron Man」「War Pigs」、そしてタイトル・トラック「Paranoid」という誇らしい名曲を収録したオジー・オズボーンと仲間たちによるこのセカンド・アルバムは、メタルというサウンドの青写真となる音楽を収録し、この作り手たちを偶像へと変えるほどであった。
KISS『Destroyer(邦題:地獄の軍団)』 (1976)
バンドを崇拝するコアなファン層を築いた後、KISSは4枚目のアルバムで見事に決めてくれた。イラストのアルバム・アートワークは彼らのコミック的イメージを巧みに表現し、一方で彼らのスタジオでの音楽的実験は平均的なロック・バンド以上のものを提供できると証明した。そしてこの作品は続く傑作アルバム『Love Guns』への方向性も示すことになった。
モーターヘッド『Ace Of Spades』 (1980)
フロントマンのレミー・キルミスター自身が語ったように、モーターヘッドは「最初のメタル・ムーヴメントには遅過ぎ、次の波に乗るには早過ぎた」。彼のバンドは当時犬猿の仲であったパンクスとメタル・ヘッズを同時に魅了したが、楽曲のスピードが肝のタイトル・トラック「Ace of Spades」をはじめ、このアルバム『Ace Of Spades』はまさにスラッシュ・メタルのムーブメント到来までを繋ぐリングとなったと言えるだろう。
アイアン・メイデン『The Number Of The Beast(邦題:魔力の刻印)』 (1982)
アイアン・メイデンにとって 最高傑作の楽曲「Rum To The Hills(邦題:誇り高き戦い)」と「The Number Of The Beast(邦題:魔力の刻印)」)を収録し、商業的成功を収めたアルバム『The Number Of The Beast 』は、メタル・シーンに強烈な嵐を巻き起こし、同バンドとニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルを決定づける1枚となった。
スコーピオンズ『Blackout(邦題:蠍魔宮〜ブラックアウト)』(1982)
70年代初期のプログレ的なサウンドから変貌を遂げた後、スコーピオンズは80年代にドイツから輸出される最も素晴らしいバンドの1つとなった。シンガーのクラウス・マイネはこの『Blackout』のアルバム・レコーディング中に声帯の手術を受けたが、それを感じさせないかつてないほど見事なヴォーカルを披露している。
ヴェノム『Black Metal』(1982)
漆黒の衣装と妥協なきサウンドで知られるヴェノムのセカンド・アルバムは、全く新しいサブ・ジャンルの誕生を手助けし、そしてこのタイトルはそのジャンル名そのものとなった。当時メタルは急進的なサウンドへと変貌していたこともあり、多くの人々がこのアルバムの深くてダークな影響力の素晴らしさに気づいたのは、何年も経過した後のことであった。
ディオ『Holy Diver』(1983)
ロニー・ジェイムス・ディオがブラック・サバスのヴォーカリストを担当したのは、1979年~1982年、1991年~1992年、そして2006年以降の3回に渡り、これはオリジナル・メンバーのオジー・オズボーンに次ぐものであった。自身のバンド「ディオ」のフロントマンとして発表したファースト・アルバム『Holy Diver』は、ディオをメタル界で最も魅力的なシンガーの1人として決定づけ、現在でも80年代の絶対不可欠な名盤として聴き継がれている。
メタリカ 『Master Of Puppets(邦題:メタル・マスター)』 (1986)
独自のジャンルを確立させた2枚のアルバムを経て、メタリカは『Master Of Puppets』を引っ提げスラッシュ・メタルをメインストリームへと引っ張り上げた。同アルバムは当時の10年間における最高傑作の1枚であるだけでなく、現在でも史上最重要アルバムの1枚として知られている。
スレイヤー 『Reign In Blood』(1986)
メタリカに続き、スレイヤーの3枚目のアルバムは80年代中盤に台頭したスラッシュ・メタルの流れを大きくし、ヒップホップを新たなレヴェルのヘヴィネスへと極限まで昇華させた経験をした後のプロデューサーのリック・ルービンが、そこ学んだことを活かした作品だ。
アンスラックス 『Among The Living』 (1987)
「3作目」というのはメタリカやスレイヤーだけでなく、アンスラックスにとっても重要作となった。彼らの3作目の『Among The Living』 は、スラッシュが生み出すモッシュ・ピットにニューヨークのアティテュードを取り入れた作品となった。
ホワイトスネイク 『Whitesnake(邦題:白蛇の紋章~サーペンス・アルバス)』 (1987)
よりダークなメタルがシーンの片隅で勃興していた一方で、80年代後半はメインストリームのメタルも健在だった。 10年間の活動を経て、ホワイトスネイクは7枚目のアルバムでラジオ・フレンドリーなサウンドを披露し、1982年に発売していた「Here I Go Again」を再録して全米チャート上位に送りこんだ他、「Is This Love」のような ロック系ラジオの主要オンエア楽曲となる曲をこの世界に残した。
ガンズ・アンド・ローゼズ『Appetite For Destruction』 (1987)
ガンズ・アンド・ローゼズの驚異的な台頭は、ロック界最大の物語として今日も語り継がれている。デビュー直ぐに「惑星上で最も危険なバンド」として評判を得た彼らのアルバム『Appetite For Destruction』は、パンク的な攻撃性、先天的なソングライティングの才能、そしてあらゆる人達を魅了するメタル的アティテュードなどが混ざり合っており、ガンズは地球上最高のバンドのひとつとなった。
デフ・レパード『Hysteria』 (1987)
ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルの生存者であるシェフィールド出身のデフ・レパードは 、ロサンゼルスのグラム・メタル・シーンに進出を果たした。収録曲「Pour Some Sugar On Me」や「Love Bites」の大ヒットにより、アルバム『Hysteria』は大西洋を挟んだ英米両国にてアルバム・チャート1位に輝いた。
メガデス『So Far, So Good… So What!』(1988)
このアルバムは80年代スラッシュ・メタルを代表するデイヴ・ムステインの早くて攻撃的な演奏をフィーチャーしており、バンドの象徴的な作品Peace Sells… But Who’s Buying?』と『Rust In Peace』に挟まれつつも、今日までにおいてバンド史上最も売れたアルバムの1枚である。非常に騒然としていた時代から生まれた不吉なスラッシュ・サウンドは、この作品をこのジャンルにおける定番作としている。
クイーンズライチ『Operation: Mindcrime』(1988)
このブログレッシヴ・メタル・バンドは、多くの80年代ポップ・メタル・バンドと比べて突出していた。コンセプトアルバム『Operation: Mindcrime』で、彼らはメタルヴァージョンの『The Wall』を作り上げたのだ(*訳注:『The Wall』はピンク・フロイドのアルバム)。怒り狂う一連のロックンロールや記憶に長く残るインスト、アルバムの初めから最後まで人々を酔いしれさせるジェフ・テイトの素晴らしいヴォーカルを通じて、政府の腐敗や大企業の欲求に反発した倒錯的なヘヴィ・メタル・オペラである。
メタリカ『… And Justice For All(邦題:メタル・ジャスティス)』(1988)
ガンズ・アンド・ローゼズの『Appetite For Destruction』を手掛けたスーパースター・プロデューサーによると、『… And Justice For All』はバンドのもっとも複雑かつ革新的なアルバムであり、ベーシストクリフ・バートンの死後も、バンドは存続することができることを証明した作品である。ジェイムス・ヘットフィールドの歌詞は絶好調で、終わりのない力強いグルーヴに満ちており、メタルの水準を引き上げ続け、感情的で素晴らしいメタリカのファースト・シングル「One」を生みだした。
ダンジグ『Danzig』(1988)
リック・ルービンの影響を受けた元ミスフィッツのグレン・ダンジグが結成したバンドのセルフ・タイトルとなる『Danzig』は、ミスフィッツ脱退後に結成したサムへインのデス・ロックサウンドからはなれ、グレン・ダンジングの吠えるような歌い方が推し進める不吉なブルース・サウンドへと変化した。この作品はいまだ力強いメタルの定番作であり、メインストリームへとアプローチしたメタル最大のヒット「Mother」が収録されている。
アンスラックス『Persistence Of Time』(1990)
スラッシュ・メタルのルーツからは脱線してしまったと申し立てる人もいるこの作品は、スラッシュ・メタル四天王のひとつが妥協無しにどのように近代化したかを表している。結果としてより濃厚で、ダークで、パーソナルな作品となり、そしてアンスラックスのもっとも知的な作品となった。今までより長くなった楽曲時間は、曲によりプログレッシヴなスタイルを与えたが、ジョー・ジャクソンのカヴァー「Got The Time」で示されているように、彼らのユーモアを置き去りにしてはいない。
メガデス『Rust In Peace』(1990)
メガデスは、デイヴ・ムステインが追い出されたメタリカよりも、早く、へヴィであろうとし続け、そしてメガデスは最高の創造物を生み出して成功を掴みとった。この作品はメタル・アルバムに欠かせないものがすべて含まれている。早く、ドラマティックで、デイヴ・ムステインによって書かれた素晴らしいギター・リフがある。『Rust In Peace』は、このアルバムよって定められた不可能なほどに高い基準に届こうと、テクニックに自身のある若い世代のミュージシャンたちに刺激を与えてきた。
パンテラ『Vulgar Display Of Power(邦題:俗悪)』 (1992)
ダイムバッグ・バレルの素早いリフ、グルーヴがあって素晴らしいリズムセクション、そしてフィル・アンセルモの唸るようなヴォ―カルで構成された作品『Vulgar Display Of Power』はパンテラを、90年代のメタル・ヒエラルキーのトップへと急激に押し上げた。そして、メタル・シーンの顔が次々と変わり続けるその時代にも関わらず、彼らはそこに10年近くとどまり続けた。
ホワイト・ゾンビ『La Sexorcisto: Devil Music Volume One』 (1992)
初期のノイジーなロックからフュージーなグランジ、ヘヴィ・メタル、ハイなロックのハイブリットな音へと切り替えた後、ホワイト・ゾンビは自身のグルーヴを獲得した。フロントマンのロブ・ゾンビのヴォーカル、リズミックな激しさと、そしてホラーのイメージという彼らの方程式は、通常のメタルの垣根を越えて成功への扉を開いた。
ロブ・ゾンビ『Hellbilly Deluxe』 (1998)
ロブ・ゾンビは13年間在籍していたバンド、ホワイト・ゾンビを脱退し完全に自由になった。ハード・ロックのグルーヴとホラー映画の美学的思想のうえに、ギターとシンセサイザーのアレンジメント等も手掛け、メタルとインダストリアル・ロックの双方のファンにアピールした。
ア・パーフェクト・サークル 『Mer De Noms』(2000)
このアルバムはそれまでに多くの傑作を生みだしたビリー・ハワーデルとトゥールのフロントマン、メイナード・ジェームス・キーナンの創作的パートナーシップの危機的状況時に制作された。メイナード・キーナンは、心が痛む感覚の率直さやメロディックな感覚をこのジャンルに持ち込み、その過程でモダン・メタルの傑作を作り上げた。
ヴォルビート『Outlaw Gentlemen & Shady Ladies』(2013)
2010年リリースの『Beyond Hell/Above Heaven』 がアメリカでヒットした後、デンマークのメロディック・マスター、ヴォルビーとはウェスタンやロカビリーとメタルを合わせたユニークなサウンドを届け続けている。彼らはまた、ラジオフレンドリーなロックと非常にヘヴィなメタルの二つにまたがり、どちらにも属するような顔をして、その領域を広げつづけている。
イーグルス・オブ・デス・メタル『Zipper Down』(2015)
ロックの原点回帰の先発者として認められているイーグルス・オブ・デス・メタルはスキャンダラスで素晴らしいブルース・ロック作『Zipper Down』を作るまで、7年間活動をストップしていた。バンド名にかかわらず、かれらはいわゆる伝統的な“メタル”カテゴリーに分類させるアーティストではない。しかし、彼らはそのアティチュードを持ち合わせており、メタル・ヘッズが好む享楽的で素晴らしいガレージ・ロック・リフを具現化している。
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