ティアーズ・フォー・フィアーズ大成功後、4年かかった3rdアルバム『The Seeds Of Love』
ティアーズ・フォー・フィアーズの大成功となった2枚目のアルバム『Songs From The Big Chair(邦題:シャウト)』の発売から、時間が経てば経つほど、ファンも業界の傍観者も、次のリリースまでに時間を置きすぎではないのかと思っていた。
新しいアルバム制作のための経費は100万ポンド(約1.5億円)近いと噂され、さらに途中でセッションを中止したり、クリエティヴ面での不安定さ、大きな遅れなどの悪い噂がたちまち増えていった。リリースがないまま80年代最後の年に入ってしまい、世界的にブレイクしてから既に4年以上もの月日が経っていた。ローランド・オーザバルとカート・スミスは本当に良いものを届けられるのだろうか?と誰もが心配をしていた。
引っ張りだこのプロデューサーだったクライヴ・ランガー&アラン・ウィンスタンリー(マッドネス、デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ、エルヴィス・コステロなど)との初期のセッションは放棄された。前作のプロデューサーであるクリス・ヒューとのレコーディングもそうだったが、新たなプロデューサーのデイヴ・バスコムとの活動はティアーズ・フォー・フィアーズにポジティヴな結果を生み出した。彼らの3枚目のアルバム『The Seeds Of Love』は1989年9月25日にようやくリリースされ、10月7日にそのまま1位を獲得した。
『Songs From The Big Chair』は何百万枚も売り上げたが、チャートとしては2位を3週間維持したが、結局全英チャート1位を獲得できなかったため、3枚目のアルバムでは喜ばしい結果となった。『The Seeds Of Love』は前作のように長期に渡ってのチャート入りを果たせなかったものの、アメリカでもヨーロッパでもトップ10圏内を記録していた。
アルバムからの先行シングル「Sowing The Seeds Of Love」はアルバム発売の1か月前となる8月21日に発売された。オーザバル=スミスの作曲によるこの楽曲はサイケデリックでザ・ビートルズに影響を受けたポップの傾向が強い楽曲だった。他にもアルバムには様々なスタイルが収録されており、繊細なオープニング曲「Woman In Chains」はドラムにフィル・コリンズを招き、オレタ・アダムスの素晴らしいヴォーカルを聴くことができる。また「Advice For The Young At Heart」や「Famous Last Words」などのシングル曲も続いた。
アルバムがリリースされた当時に、カート・スミスが制作の遅れや苦難についてQ誌にこう語っている「自分たちが求めているものはわかってたんだけど、残念ながら俺たちも天才じゃないからね。でも結果に向けてやりたいことを実現させたいという揺るぎない情熱があることは確かだよ」。
Written by Paul Sexton
ティアーズ・フォー・フィアーズ『Seeds Of Love』