ドレイク『Take Care』解説:2010年代ヒップホップの青写真となった“非マッチョ”な名盤
2010年にリリースされたドレイク(Drake)のデビューアルバム『Thank Me Later』は、全米アルバムチャートで初登場1位を獲得、ブラチナ・ディスクに認定されるなど商業的には大成功を収めたが、その生みの親であるドレイクは完成した作品に満足していなかった。
その年の終わりにスタジオに戻り、次の作品を録音する準備をしていた彼は、前作の急ぎすぎた性質を払拭することを決意。その結果アルバムのタイトルは『Take Care』となった。これは、作品のあらゆる面に細心の注意を払ったことを意味している。
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ドレイクは、前作であるデビュー・アルバム『Thank Me Later』のように複数のプロデューサーを起用するスタイルをやめ、長年のコラボレーターであり親友でもあるNoah “40” Shebibを『Take Care』のチーフ・サウンド・アーキテクトとして起用し、よりまとまりのある作品に仕上げた。40の指揮のもと、ドレイクのトレードマークであるR&B、ヒップホップ、エレクトロニカ、ポップのダウンテンポな融合は、新たな高みに到達した。
この驚くほど一貫性のある作品には、聴き所がたくさんある。幽玄な雰囲気の「Over My Dead Body」はインディー的な質感を醸し出して、ザ・ウィークエンドが参加した「Crew Love」と「The Ride」では、物憂げなソウルが夢のように表現される。
他にも、「Under Ground Kings」や「We’ll Be Fine」では、ストリートでよく見かけるヒップホップ系の楽曲に仕上げ、「Lord Knows」ではリック・ロスを起用してゴスペル・ラップを盛り上げ、ニッキー・ミナージュは「Make Me Proud」で印象的なラップで登場する。
リアーナが参加したタイトル・トラック「Take Care」は国際的に大ヒットを記録し、アメリカ、UK、オーストラリア、ニュージーランド、デンマークでトップ10入りを果たした。また、ボーナストラックとして収録されたクラブバンガー「Motto」は、シングルとしてリリースされ、“YOLO (You Only Live Once)”という流行語を生み出したが、これは当時のドレイクの調子の良さを示す好例だろう。
しかし、アルバム『Take Care』の最も永続的なインパクトは、その歌詞のオープンさにあったと言える。酔っぱらって電話をかけた後に録音された「Marvin’s Room」(マーヴィン・ゲイのスタジオで録音されたことからこの名がついた)や、美しくソウルフルでスペクタクルなピアノを使った「Look What You’ve Done」(ドレイクの家族への感動的なトリビュート曲)などに代表されるように、『Take Care』は世界的なスーパースターであるドレイク自身の時には壊れやすい心が魅力的に表現されている。
このような内省的な歌詞というアプローチは、それまでのヒップホップでメインストリームだったマッチョな雰囲気とは相反するものであったが、その後の10年間で、よりエモーショナルなヒップホップの形を形成するのに役立つのと同時に、大きな影響力を持つことになった。
『Take Care』は2011年11月15日に発売され、初週だけで63万1,000枚を売り上げ、全米アルバム・チャートで初登場1位を獲得して、最終的にはダブル・プラチナを獲得している。批評家からも絶大な支持を得て、数々の年間ベストのリストに選ばれ、第55回グラミー賞では最優秀ラップアルバムを受賞している。
Written By Paul Bowler
ドレイク『Take Care』
2011年11月15日配信
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