全米1位、アルバム・ツアーの宣伝費だけで100万ドルかけたスティクスの『Paradise Theatre』
1980年代初期は、スティクスの全盛期だった。彼らはファースト・アルバム『Styx』で全米チャート・デビューを飾ってから9年目を迎えていた。1970年代後半には、ゴールド・ディスク・クラスからマルチ・プラチナ・ディスクのレベルのバンドへと成長した。そして1981年1月31日、地元シカゴの有名なライヴ会場から題名を採ったコンセプト・アルバムを発表。この作品はどんどんチャートを登り詰め、1981年4月4日に1位に到達した。そのアルバムこそが『Paradise Theatre』である。
前のアルバム『Cornerstone』はバラード曲「Babe」という大ヒット・シングルを生み、その結果チャートで最高2位を記録。Billboard誌の全米アルバム・チャート圏内に60週間も留まった。『Paradise Theatre』はさらにその上を行き、チャート入りの記録を61週間に伸ばしている。いつも通りスティクスがセルフ・プロデュースで制作したこのアルバムからは、「Babe」ほどの大ヒット曲は出ていないが、ふたつの曲がシングル・チャートのトップ10入りを果たしている。そのひとつはノリのいい「Too Much Time On My Hands(邦題: 時は流れて)」、もうひとつはスローな「The Best Of Times」だった。
『Paradise Theatre』がヒットした大きな要因としては、スティクスが大規模な国内・国外ツアーを行ったことが挙げられる。ツアーは1月16日にマイアミから始まり、全てのコンサートの数は140公演以上にのぼった。マネージャーのデレク・サットンはツアーのプロモーションに投じた額は最低でも推定100万ドルだとBillboard誌のインタビューで語っている。そうした宣伝は十分に功を奏した。このツアーは当時のロック・ツアーの中でも最大級の成功を収めている。
アルバム『Paradise Theatre』は、1月下旬にBillboard誌のアルバム・チャートに入ったあと、着実に順位を上げていった。そして春には、REOスピードワゴンの『Hi Infidelity(邦題: 禁じられた夜)』から首位を奪った。一時は他のアルバムにその座を譲ったものの、3週1位を獲得した。
1996年には『Paradise Theatre』発表当時のメンバーが再結集して『Return To Paradise』ツアーを敢行している。その模様は同名のライヴ・アルバムとビデオに記録され、ライヴ・アルバムはゴールド・ディスクに認定された。スティクスは現在も活発にライヴ活動を続けており、2018年には最新アルバム『The Mission』をひっさげて北米ツアーを行っている。彼らの「シアター」は今も健在だ。
Written by Paul Sexton
スティクス『Paradise Theatre』