スティング、4作目のソロ・アルバム『Ten Summoner’s Tales』解説
一般に、スティング(Sting)の長いキャリアにあってもとりわけ完成度の高い1枚と見做されているその4作目のソロ・アルバム『Ten Summoner’s Tales』(1993年)には、バラエティに富んだ楽曲が並んでおり、実際、欠点はほとんど見当たらない。約20年前にリリースされたこのアルバムには、かつて在籍したザ・ポリスという偉大なグループの呪縛から逃れ、親しみやすいサウンドを我がものにしたスティングがいる。スティングことゴードン・マシュー・トーマス・サムナーは、それまでの大半のソロ作の基調になっていた”ラウンジ・バー・ジャズ”を土台にしつつ、優れて知的なポップ・アルバムを完成させたのである。『Ten Summoner’s Tale』は、スティングとザ・ポリスのファンとの繋がりをより一層強める役割を果たした1枚であり、また歳月を経るほどに魅力を増してきた作品でもある。
アルバムの中核を成しているのが故エヴァ・キャシディもカヴァーした美しいバラード「Fields Of Gold」であることに異論はないだろう。スティングの作品の中でもとりわけ人気の高いこの曲は、イギリスのシングル・チャートでは最高位16位を記録するに留まったが、このシングルを収録したアルバム『Ten Summoner’s Tales』は英米それぞれで2位まで上昇。スティングはこのアルバムで、グラミー賞を獲得し、マーキュリー賞にもノミネートされた。
彼が『Ten Summoner’s Tales』を生み出すきっかけになったのは、家族と共に移り住んだイングランド南部のウィルトシャーである。今ではすっかり有名になったあの草原を含む、自然溢れる場所が彼の詩作のインスピレーションの源となったのだった。レコーディングが行われたのも、同地にスティングが所有するレイク・ハウスと呼ばれるエリザベス朝のカントリー・ハウスだった。過去公開されているインタビュー映像で、彼はツアーで家を空けることの多いミュージシャンにとっての”家”の重要性、レイク・ハウスが自身の最高傑作とも言われる『Ten Summoner’s Tales』に与えた影響などを、きわめて率直に語っている。
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