ポリスの名曲「Demolition Man」が出来るまで:「どうやらこの曲は、みんなが録音したくなるような曲みたいですね」
「”Demolition Man”は獣だ。自分自身を抑えられないのです」。グレイス・ジョーンズからポリスに至る、多くの人にレコーディングされたこの曲について、スティングはこのように述べている。
ザ・ポリスが初めてこの激しい、エッジの利いた「Demolition Man」をレコーディングしたのは、1981年にリリースされた彼らの4枚目のアルバム『Ghost in the Machine』のレコーディング・セッションだった。しかしながら、実際にスティングがこの曲を書いたのは、その前年にリリースされたサード・アルバム『Zenyatta Mondatta』のリリース以前のことである。
「Demolition Man」の構想が最初にまとまったのは、スティングがコネマラ地方にあるピーター・オトゥールの家で生活していた年の夏のことだった。著名なその俳優は、この曲の歌詞が気に入ったようだった。特に彼が好んだのは、差し迫った投票命令という意味のイギリス議会の用語を使った”僕は最も重大な命令を下す、僕はやつらが禁じた存在だ(I’m a three-line whip/I’m the sort of thing they ban)”という部分だったという。彼の好意的な反応は、同曲が可能性を秘めていると感じていたスティングの背中を押した。
グレイス・ジョーンズ・ヴァージョン:印象的なマシーン・ファンク
しかし、初めスティングは「Demolition Man」をポリスにではなく、彼に作曲を依頼していたグレイス・ジョーンズに提供した。彼女はこの曲を印象的なマシーン・ファンクに仕立て上げ、彼女の著名な5thアルバム『Nightclubbing』 (1984年5月にリリース) に収録した。
この時、ポリスはモントセラトにあるジョージ・マーティンのAIRスタジオで、すでにプロデューサーであるヒュー・パジャムと共に『Ghost in the Machine』の制作に取り組んでいた。だがジョーンズ版「Demolition Man」を聴くと、彼らはこの曲をレコーディングしてみたくなったのだ。
ポリス・ヴァージョン:「もっと大胆に」
ポリスは『Ghost in the Machine』において著しく音色の幅を広げており、同作にはキーボードやホルンを取り入れた曲もある。「Demolition Man」ではスティングがテナー・サックスでリフを演奏していることが特徴的だ。強烈に繰り返されるスティングのベース・ラインに合わせて、サマーズとドラマーのスチュワート・コープランドも素晴らしい働きをした。それによって、『Reggatta de Blanc (白いレガッタ)』所収の「Deathwish (死の誘惑)」にも通じる、強烈で切迫した6分間の傑作が生み出された。
「ポリスの“Demolition Man”はもっと大胆で、ワン・テイクで録音されたんです」サマーズはこう説明する。「こんな風にして『Ghost in the Machine』の制作は始まりました。良いスタートを切れたと思う、みんなそこからどんどん良くなったから。これこそが僕たちが求めていたことでした」
この曲の鮮烈なアレンジもそうだが、印象的な歌詞も特徴だ。例えば”俺は歩く悪夢だ/破滅の兵器工場だ/俺が部屋に入ると/みんな話すのを止める(I’m a walking nightmare/An arsenal of doom/I kill conversation/As I walk into the room)”といった箇所は、この曲の物々しいイメージにぴったり合っている。スティングにヒントを与えたのはアーサー・ケストラーの著書『機械の中の幽霊』で、他にもいくつかの曲がこの本の影響を受けて書かれている。それでポリスは、この1967年のケストラーの本のタイトルを、そのまま彼らのアルバムの名前にした。この本では、人間の精神と人間社会が持つ明白な自己破壊性について書かれている。
「”Demolition Man”は獣。自分自身を抑えられないのです」
「このアイデアを何百ページも筋道立てて書く代わりに、僕はそれをアルバムでもっと簡単に伝えようと思ったんです」1981年、NMEのインタビューでスティングはこう明かした。「”Demolition Man”は獣。彼は何もかも破壊せずにはいられない。自分で自分を抑えられないんです。僕にもそういう部分があって、実のところとても破壊的なんです。もちろん創造的でもあるけれど、それは僕のある一面に過ぎません」
「Demolition Man」は1981年から82年の間、ライヴの定番曲となり、後にスティングがソロ・デビュー・アルバム『The Dream Of The Blue Turtles』のリリースに際して行ったコンサート・ツアーでも披露された。そのツアー中にパリで演奏された「Demolition Man」の情熱的なライヴ音源は、ライヴ・アルバム『Bring On the Night』に収録されている。
スティングのソロ・ヴァージョン:「みんながレコーディングしたくなるような曲」
スティングは1993年、シルヴェスター・スタローンとウェズリー・スナイプスが出演した映画『デモリションマン』のために、「Demolition Man」をインダストリアルなサウンドに作り変えた。
一方でソロ・アルバム『My Songs』に収録されたヴァージョンは力強いアレンジが施されたものになっており、直感とエネルギーを原動力にしていた頃のポリスのファンを喜ばせた。
「ポリスも、グレイス・ジョーンズも、マンフレッド・マンもレコーディングしました」スティングは、インデペンデント紙のインタビューで、「Demolition Man」が辿ってきた歴史を振り返って語っている。「どうやらこの曲は、みんながレコーディングしたくなるような曲のひとつみたいですね」
Written By Tim Peacock
スティング来日公演日程
来日公演公式サイト
2019年10月7日(月) 福岡:福岡国際センター
18:00 open / 19:00 start
S ¥18,000【アリーナ席・スタンド席】
A ¥17,000【スタンド席後方数列】(座席指定/税込)
【問い合わせ先】TSUKUSU 092-771-9009
2019年10月9日(水)・10日(木) 千葉:幕張メッセ 7・8ホール
18:00 open / 19:30 start
S ¥18,000 A ¥17,000(座席指定/税込)
【問い合わせ先】ウドー音楽事務所 03-3402-5999
2019年10月12日(土) 仙台:ゼビオアリーナ仙台
17:00 open / 18:00 start
S ¥18,000 A ¥17,000(座席指定/税込)
【問い合わせ先】ニュース・プロモーション 022−266−7555(平日11:00〜18:00)
2019年10月15日(火) 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
18:00 open / 19:00 start
S ¥18,000【アリーナ席・スタンド席】
A ¥17,000【スタンド席後方数列】(座席指定/税込)
【問い合わせ先】大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506
スティング『マイ・ソングス – スペシャル・エディション』
2019年10月4日発売
日本盤ボーナス・トラック1曲収録(全20曲) + 2019マイ・ソングス・ツアー
スティングによる全曲解説掲載(日本語訳付)
- スティング アーティスト・ページ
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