ソニー・クラーク『Cool Struttin’』:最先端のハード・バップへ向かって大きく飛躍した代表作

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典型的なハード・バップであるソニー・クラークの1958年のアルバム『Cool Struttin’』は、ブルーノートから発売された数多くのクラシック・ジャズ・アルバムの一枚である。

ブルーノートは1955年から12インチLPの制作を開始し、1958年まで続いたあの有名なブルーノート1500番台シリーズを発売した。ニューヨークに設立されたブルーノート・レーベルは当時のジャズ・レーベルの中でトップに君臨していただけでなく、ブルースとゴスペルの要素を取り入れたビーバップの分派であるハードバップを世界に知らしめたレーベルでもある。そして、当時27歳だったペンシルベニア州出身のピアニスト、コンラッド・“ソニー”・クラークは、彼の弟子たちがハードバップの典型と呼ぶアルバム『Cool Struttin’』を1958年1月5日にレコーディングした。

 

デビュー直後のソニー・クラーク

その時点でソニー・クラークのキャリアはすでに上向きで、抑えきれない躍進を遂げていた。彼はそのたった半年前の1957年6月に、サックス奏者のハンク・モブレーのサイドマンとしてブルーノートからデビューを果たしたばかりだったが、ブルーノートの創設者でプロデューサーのアルフレッド・ライオンが彼の演奏に感動し、ルディ・ヴァン・ゲルダーのハッケンサック・スタジオにて『Cool Struttin’』のレコーディングを行う頃にはすでに3枚のアルバムを発売できるほどの楽曲が出来上がっていた。

『Cool Struttin’』では、その4ヶ月前にレコーディングを行った前作『Sonny Clark Trio』でもフィーチャリングしていたマイルス・デイヴィスのバンド・メンバーであるベーシストのポール・チェンバーズとドラマーのフィリー・ジョー・ジョーンズと再び組むことになり、その他にも、ソニー・クラークがニューヨークへ越してくる前に、カリフォルニアで仕事を共にしていたトランペット奏者のアート・ファーマーをゲストに迎えた。忘れがたいブルーノートから彼のデビュー作で、1957年7月にレコーディングされた『Dial “S” For Sonny』でのアート・ファーマーの演奏は素晴らしいものだった。その他にもう一人、フロントライン・ホルンとしてアルトサックス奏者のジャッキー・マクリーンが参加した。ニューヨーク出身のジャッキー・マクリーンはソニー・クラークと同い年で、少しだけ荒々しいその音調で知られていた。

高揚するメロディーと楽曲

慎重に、存在感を誇示しながら、ゆっくりと進行するベースとブルース調のホルンが特徴的なアルバムのオープニング・タイトルトラックは、ソニー・クラークの代表曲と言えるだろう。この曲の最初のソロはソニー・クラークがとり、ブルース調の簡潔なソロに続いては、トランペット奏者のアート・ファーマーがクールかつ明快で、高揚するようなメロディーを演奏する。ジャッキー・マクリーンのソロはより激しく堅実で、その後に2つ目のピアノ・ソロが続き、その滑らかな不調和音はホルンのような響きを持つ。ベーシストのポール・チェンバーズもソロをとり、弓を使いながら、ゆっくりとした進行でベースを弾き、反復するホルンのメイン・テーマへと繋がっていく。

この次には、再びソニー・クラークが作曲を手掛けたトラック「Blue Minor」が収められている。冒頭で、ゴスペル・コードの抑揚で盛り上がりをみせるホルンが演奏され、それに続くポール・チェンバーズとフィリー・ジョー・ジョーンズの完璧な演奏が引き起こす推進力のあるグルーヴに合わせてソロ奏者たちの演奏が輝きを放つ。

アップテンポの「Sippin’ At Bells」は、初期のマイルス・デイヴィスのトラックで、ソニー・クラークが大ファンで1954年に初めて会ったビーバップの神として知られるチャーリー・パーカーがゲストで参加するするお馴染みの楽曲。衝撃的なフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムで始まるこの曲では、アート・ファーマーとジャッキー・マクリーンのホルンが融合し、ボップスタイルのメロディーを演奏する。ソニー・クラークが最初のソロを弾き、そこにはバド・パウエル(チャーリー・パーカーのビーバップ・スタイルをピアノで解釈した最初のジャズ・ピアニスト)からの影響が聴き取れるが、同時に彼のユニークなメロディー構想が披露されている。

 

推進力のあるスウイングのような感じ

バド・パウエルの影響はアルバムの最終トラック「Deep Night」からも聴き取ることができる。この曲は初期のジャズ・アイドルであるルディ・ヴァリーが共作し、1929年に大きなポップ・ヒットとなったことから彼と関連付けられることが多い。バド・パウエルはこの曲を1954年にノーグランから発売されたアルバム『Jazz Original』でカヴァーした。ソニー・クラークは、バド・パウエルがこの曲をバードランドで生演奏するのを観た時から、この曲の虜になった。

「バドが弾いているのを聴いて、これは自分流でも弾かないといけないと思いました」と彼は『Cool Struttin’』のオリジナル・ライナーノーツのためのインタビュー中で、ナット・ヘントフに語っている。ソニー・クラークのヴァージョンは、推進力のあるスウィングのようなリズムに駆り立てられ、それはポール・チェンバーズとフィリー・ジョー・ジョーンズから成るリズム・セクション(フィリー・ジョー・ジョーンズも短いが迫力のあるドラム・ソロでその優れた腕前を披露)のパワフルかつ繊細な演奏の熟練さによるところも大きい。

1958年10月に品番「BNLP1588」として発売された、リード・マイルズのデザインによる女性の脚とスティレット・ヒールの足元を描いた『Cool Struttin’』のジャケットは、アルバムのタイトル・トラックの都会的な雰囲気を象徴している。ブルーノートの1500番台シリーズによって完成させたハード・バップ・スタイルの典型となったこの作品からは、発売から60年経った今尚、最先端な雰囲気が滲み出ている。

Written By Charles Waring


ソニー・クラーク『Cool Struttin’』

   



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