スラッシュの最高のギター・ソロ20選：ガンズ・アンド・ローゼズのギタリストによる名演

Published on

7月 24, 2022

管理人

Photo: Robert Knight Archive/Redferns

1987年7月、ガンズ・アンド・ローゼズが革命的な傑作『Appetite For Destruction』をリリースし、「Welcome To The Jungle」のオープニング・コードが世界中で衝撃的に鳴り響いた。

それ以来、スラッシュ（Slash）という名で知られるロックンロールの伝説的ミュージシャンは、「ギターの神」の称号を持つようになった。漆黒のカーリーヘアに山高帽を被り、ギブソン・サンバーストを低く構えた彼の印象的なイメージは、世界中のファンと評論家のあいだで熱狂的な人気を呼んだ。そしてスラッシュは、この世代最後の偉大なロックンロールの無法者のひとりとして賞賛された。

1965年7月23日、リンゴ・スター、ジョン・レノン、デヴィッド・ボウイなどの衣装を手がけてきたアフリカ系アメリカ人の女性デザイナーであるオラ・ハドソンと、ニール・ヤングやジョニ・ミッチェルといった偉大なミュージシャンたちのアルバム・カヴァー・デザインを担当したアーティストのアンソニー・ハドソンのあいだにのちにスラッシュとなるソール・ハドソンは生まれた。

彼は5歳のときにUKのストーク・オン・トレントからロサンゼルスに引っ越してくる。ひとつの趣味だけに集中することができなかった彼は、BMXレースを含む多くの活動に手を出していたが、やがてギターの演奏に熱中するようになった。

これはおそらく必然的なことだったのだろうが、彼は非常に幼いころから嵐のようなロックンロールの世界に自分の将来があると考えていた。彼の両親は職業柄、多種多様な音楽を好んでいた。そんな環境で育ったソール少年は、家の中でさまざまな音楽に触れ、14歳になるとレコードに合わせてギターを弾いていた。一説によれば、練習時間は1日12時間にも及んでいたという。

ソールは1981年に最初のバンド、タイダス・スローン（Tidus Sloan）に参加。しかしこのバンドにはヴォーカリストがおらず、ほとんどインパクトを残せなかった。その後、ロード・クルーというバンドに短期間在籍したあと、彼はハリウッド・ローズに加入。このバンドは、ヴォーカリストのウィリアム・ブルース・ローズ、別名アクセル・ローズと手を組んだあとの最初のバンドとなった。

やがて自らの象徴的なペルソナを確立したソールは、1980年代後半のLAグラム・ロック・シーンのきらびやかさと有刺鉄線の中から飛び出てきた謎のギタリスト、“スラッシュ”として世界に知れ渡ることになる。

その1年後、アクセル、ギタリストのイジー・ストラドリン、ベーシストのダフ・マッケイガン、ドラマーのスティーヴン・アドラーと共に、彼はサンセット・ストリップの排水溝から、ガンズ・アンド・ローゼズという名の地元バンドのメンバーとして浮上する。

1980年代後半のLAのアンダーグラウンド・ロック・シーンにアピールしたガンズの“自主”制作EP『Live ?*@Like A Suicide』は1986年に1万枚を超えるセールスを記録して大きな反響を呼んだ。そしてガンズがゲフィン・レコードと全世界でのレコード発売契約を結ぶと、このバンドの運命は確固たるものになった。ゲフィンは、ガンズの伝説的なデビュー・アルバムの下準備として、先のEPをひっそりと再発した。

アメリカのハードロック、アンダーグラウンド、オルタナティブ・ミュージック・シーンの中で傑出したギタリストのひとりとなったスラッシュの演奏スタイルは、当時の状況に新鮮な息吹を吹き込んだ。

この時期は、スラッシュ・メタル・ブームやハリウッド/サンセット・ストリップ界隈の自称「超絶技巧」プレイヤーたちのおかげで、コンプレッサーのかかった硬質なギター・トーンが世間に横行していたのである。しかし、スラッシュは本物であり、それを十分に証明できる力の持ち主だった。

『Appetite For Destruction』

『Appetite For Destruction』のレコーディング中、スラッシュは究極のロックンロール・ギター・トーンを容赦なく追求し続け、その結果プロデューサーのミック・クリンクとの関係は緊迫したものになった。噂によれば、当時の彼は59年製のレスポールのレプリカとレンタルしたマーシャルJMCギターヘッドの改造版を使用していた。このアルバムでのスラッシュのパフォーマンスはほかの誰の追随をも許さないものであり、どの曲でも新たなロックンロールの歴史を切り開いていた。

「Welcome To The Jungle」(1)のイントロでも、「Sweet Child O’ Mine」(2)のオープニング・リフでも、パンクに影響されたガンズの強烈なハード・ロック・サウンドが割れた瓶と極悪な態度を併せ持った暴走族のようにリスナーに襲いかかってくる。

スラッシュのスタイルとギタープレイは、チャック・ベリー、ジミ・ヘンドリックス、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、さらにはジミー・ペイジ、ジョー・ペリーと言ったさまざまなサウンドを想起させる。とはいえ、彼ならではのギターのサウンドは実に象徴的なものだった。「楽器そのものに語らせる」という彼の能力は、「Nighttrain」(3)や熱狂的な「Mr. Brownstone」(4)などの名曲で迸っていた。それはまるで、ロックンロールの蜂の巣から滴り落ちる純粋な蜂蜜のようだった。

『Appetite For Destruction』は、当時既に確立されていた西海岸のハード・ロックに代わる別の道を示していた。アクセルたちは「It’s So Easy」(5)や「Rocket Queen」(6)といった名曲をがなり立てているが、堂々たるアンセムのような「Paradise City」(7)ではスラッシュが歌心あふれるメロディと壮大なソロの両方を実にたやすくこなしている。バンドはこの1枚だけで世界の頂点に立ち、スラッシュは1980年代から1990年代にかけて変化していったハード・ロックを自ら体現する存在だった。

『Use Your Illusion』

それから月日が経ち、次のアルバムへの期待はどんどん高まっていった。やがて1991年に『Use Your Illusion I』と『Use Your Illusion II』がリリースされると、アクセルも同世代の偉大なシンガー・ソングライターのひとりとして更なる一歩を踏み出した。「November Rain」(8)はガンズが打ち出した新しい方向性の完璧な例であり、このバンドの楽曲の頂点に君臨している。壮大なアレンジで仕上げられたこの曲には、スラッシュの最も象徴的なギター・ソロも含まれている。

『Use Your Illusion』では、2枚のアルバムにわたって膨大な数の楽曲が披露された。その中には「Estranged」(9)と第1弾シングル「You Could Be Mine」(10)も含まれている。ここでは音作りと楽器編成が極めて複雑な物になっていた。これは部分的には、世界中のメディアから大きな期待を受けていた反動でもあった。

しかし当時のバンドはすぐに崩壊し、スラッシュは初めてソロ活動であるスラッシュズ・スネイクピットを開始。1995年のソロ・デビュー作『It’s Five O’Clock Somewhere』では、アルバムを締めくくる「Back And Forth Again」(11)がひときわ特徴的だった。さらに2000年には、次のアルバム『Ain’t Life Grand』が発表されている。

スラッシュは新たな活動の自由を手に入れ、それによってクリエイティブなエネルギーを解き放つことができた。そうして印象的なリズム構造の曲を作り、キャッチーでありながら複雑なギター・ソロを情感豊かに奏でていた。

ソロ・アーティストとしての活動が多かったこの時期のスラッシュは、これら2枚のアルバムのレコーディングにさまざまなゲスト・ミュージシャンを招いている。その中には、当時のガンズメンバーであるギルビー・クラークとマット・ソーラム、マイク・イネス（アリス・イン・チェインズ）、エリック・ドーヴァー（ジェリーフィッシュ）などが含まれていた。

ヴェルヴェット・リヴォルヴァー

絶え間なく音楽作りを続けてきたスラッシュは、スタジオでの冒険をさらに続けた。彼が集めたメンバーは、マット・ソーラムとダフ・マッケイガン、ストーン・テンプル・パイロッツのヴォーカリストであるスコット・ウェイランド、ウェイステッド・ユースのギタリストであるデイヴ・クシュナーという予期せぬ顔ぶれだった。

ヴェルヴェット・リヴォルヴァーとして知られることになるこのロック・スーパー・グループは、2004年のデビュー・アルバム『Contraband』と2007年にリリースされた『Libertad』で音楽メディアの話題を独占した。

パワフルなケミストリーと腹の底まで響いてくる攻撃的なサウンドで形作られたこれらのアルバムは瞬く間に成功を収め、スラッシュは彼のトレードマークであるギター・トーンと比類のないソロのおかげで、広く尊敬を集めるギター・ヒーローの階段をさらに高いところまで登っていった。

このグループの代表曲としては、デビュー作に収録されていた「Slither」(12)や「Sucker Train Blues」(13)、『Libertad』収録の「She Builds Quick Machines」(14)などが挙げられる。しかしヴェルヴェット・リヴォルヴァーは短命に終わり、活動は2008年3月に突然停止した。そんな中、スラッシュがシーンに復帰するまでにはそれほど時間はかからなかった。

ソロとして

2010年にリリースされたアルバム『Slash』には、イギー・ポップが参加した「We’re All Gonna Die」(15) 、モーターヘッドのレミー、ザ・カルトのイアン・アストベリー、サウンドガーデンのクリス・コーネル、ウルフマザーのアンドリュー・ストックデイル、アルターブリッジのマイルス・ケネディなど、ロック界の王侯貴族たちが顔を見せている。

その後スラッシュとマイルス・ケネディは協力関係を深め、2012年の『Apocalyptic Love』と2014年の『World On Fire』という2枚のアルバムを制作。どちらのアルバムも、アーティスト名のクレジットは「スラッシュ feat.マイルス・ケネディ・アンド・ザ・コンスピレターズ」となっている。

この両作品ではスラッシュの猛烈な音楽性が際立っており、前者では「Anastasia」(16)や「Hard And Fast」(17)、後者では「Wicked Stone」(18)や「Bent To Fly」(19)、そしてタイトル曲などが卓越した内容になっている。彼は音楽的な面で数々の変身を遂げてきたが、そのパフォーマンスとレコーディング・アーティストとしての一貫性には誰にも異議が唱えられないはずだ。