ロブ・ゾンビ史上最も単刀直入なパーティー・メタル・レコード『The Sinister Urge』
ソロとなり地獄の創作の苦しみの中、周囲の疑念や非難を浴びながら模索した結果、「Living Dead Girl」「Superbeast」「Dragula」といった名曲を収録したデビュー・アルバム『Hellbilly Deluxe』を生み落としたロブ・ゾンビ。名作となったデビュー作の後、同じぐらい高い基準の作品を創るのは至難の技と思えるかもしれない。しかし、2001年11月13日にリリースされたロブ・ゾンビの2枚目のソロ作『The Sinister Urge』は、さらにクリエイティヴな作品となって世に出た。当時、どんな作品になるか分かるなぁと思っていたが、しかしその予想は違っていた。
例えば、幽霊電車のようなストリングスのオープニングは今までロブ・ゾンビ名義でやってきたものとは全く異なるカラーとテイストになっている。そしてアルバムは速く、ハードで、楽しかった。本当に楽しかった。そして最高の「Hey-Hey-HEY-HEY」のイントロでついにモンスター・マンであるロブが登場して、我々はそこからこの作品をよだれが出るほど堪能できる。イントロ的な1曲目に続く「Demon Speeding」は悪魔のバット・モービルのように登場し、火花と緊迫したアドレナリンが放出する。そう、まさにロブ・ゾンビそのものだ。
常にネオン・カラーの血しぶきを放ってきた男の作品についてこう言うのは奇妙な気もするが、このアルバム『The Sinister Urge』はロブ・ゾンビの作品の中で最も単刀直入なパーティー・メタル・レコードと言えるかもしれない。まあ、それも2016年に『The Electric Warlock Acid Witch Satanic Orgy Celebration』が出るまでだが、それについては今後いつか触れることにしよう。
派手でキャッチーな「Dead Girl Superstar」と、パンチを繰り出したくなるような「Feel So Numb」はより派手に解き放たれており、過去のホワイト・ゾンビ時代のような機械的でインダストリアルな雰囲気は少ない。ロブ・ゾンビの音楽はいつでもぞっとするようなスリリングでエレクトロニックな演出があるが、『The Sinister Urge』はロブ・ゾンビがライヴをする時に現れるロックン・ロールの獣に向かうような楽曲を重視したアルバムのように感じる。
クラブにうってつけのバンプとグラインドする曲ばかりではない。「(Go To) California」は恐怖と嫌悪と死神が一緒になったような艶かしい動きを連想させ、誘惑や罪を探求する神秘的な砂漠の旅でモンスターのトランクにクランクを入れ込んでいるようだ。静まり返ったヴォーカルと度を過ぎないように決めこんでいるかのようなこの楽曲は、2枚目のアルバムとしては成熟したアプローチだ。この曲もいいが、上半身裸でなぐり合うことを好むの男達の話に戻ろうか?
プロレスのファンならばわかると思うが、アダム・“エッジ”・コープランドは、ロブ・ゾンビがカルトスターから、一流のトップ・スターへと爆発する上で一見大きな役割を務めた。「Never Gonna Stop (The Red Red Kroovy)」はロブ・ゾンビのキャリアの中でも最もヒットした曲のひとつであり、同じくプロレスラーのアンダーテイカーの仲間として、“ダサい”とされる時期から再びかっこいい立場へと変貌を遂げた偉大なレスラーことアダム・“エッジ”・コープランドの代表曲だった。ロブ・ゾンビの曲はエッジにぴったりで、その物語も出来上がっていた。サンタ・クララから逃げ出した2人の男が、与えられたものを受け入れるのではなく、自身の内にある悪魔の部分を受け入れたのだ。
「Never Gonna Stop」楽曲自体は驚愕の瞬間のサウンドトラックとなった。ビデオにはロブ・ゾンビのスクリーム・クイーンであるシェリ・ムーンをフィーチャーし、ヒプノティックなヴァース、そしてあのコーラスに合わせて身をよじる。ロックン・ロールで玉がある威力をこれほど誇示した例はない。「Scream if you want it, ’cause I want it more / 欲しければ叫べ、俺はもっと欲しいから」と楽曲で歌われる通りだ。
最後から2番目の「Scum Of The Earth」はファンのお気に入りの曲である。パワー全開の最高な出来で、コーラスには見事なコール&レスポンスが溢れている。しかし『The Sinister Urge』は最後の曲である「House Of 1000 Corpses」が全てだ。この曲は、このアルバムの発売から2年後にロブ・ゾンビの監督デビュー映画となる『マーダー・ライド・ショー(原題:House Of 1000 Corpses)』へのラヴ・レターとなっている。
「House Of 1000 Corpses」はすごく変わっている、本当に。非常に奇妙でクリエイティヴに感じられるのは、およそ10分間に及び女性的なスイングがあることだ。ロブ・ゾンビがライヴでこの曲を演奏する時には、ホラー映画『ジーパーズ・クリーパーズ』であまりにリアン・ライムスのカントリー楽曲が続いた後に悪役がするようなエグゾチックなラインダンスをロブは披露するのだ。それは、お尻がポップするようなスイングで、カウボーイ・ブーツを履いて酒場にいるかのようなだ。ただこの男は単純な露悪さを求めているわけではない。過去に誰もやったことがない、魅惑的で、セクシーでストリップしそうな連続殺人鬼のアンセムを奏でようと目論んでいるのだ。『The Sinister Urge』に手綱を握られると、そういうことになるのだ。
ロブ・ゾンビ『The Sinister Urge』