デイヴ・グロールの音楽人生:かつてないほど分裂したロックの創造と維持に努める頼もしき兄貴
デイヴ・グロール(Dave Grohl)は駆け出しの若者のような無類のエネルギーと野心的なハングリー精神を持ち続け、大成功を収めたキャリアが信じられないような雰囲気をいつでも漂わせている。ロックの歴史の中で、バンドや担当楽器を変えながら、これほどまでに驚異的な成功を収めたミュージシャンが他にいただろうか。
ニルヴァーナでドラムを叩いていた頃、デイヴ・グロールがこれほどのソングライターになるとは誰も予想できなかっただろう。それにしてもデイヴ・グロールは驚きの連続だ。彼が単なるドラマーだと思っていた人にとっては驚くことに、彼はロックンロールのマントを引き受けたのだ。数十年前にフー・ファイターズを結成して以来、デイヴは今でも誰にも止められないパワーを維持し続けている。
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ハードコア・キッズだった頃
1969年1月14日生まれのデイヴ・グロールは、ニルヴァーナのドラマーとしてシアトルのグランジ界に身を置く以前は、80年代のD.C.パンク・シーンにいたティーンエイジャーの一人だった。音楽の好みは14歳から24歳の間に固まると言われているが、デイヴの音楽的DNAの多くはワシントンD.C.のハードコア・ミュージックだった。
独学でドラムとギターを学んだデイヴは、まずハードコアバンドのフリーク・ベイビー(Freak Baby)にセカンド・ギタリストとして参加。フリーク・ベイビーが解散した後、残ったメンバーでメンバーチェンジを行った際に、デイヴはドラムに転向して、バンドはミッション・インポッシブル(Mission Impossible)に変更となった。
そして1985年にはデイン・ブラマージュ(Dain Bramage)を結成。ハードコア・コミュニティで名を馳せていたデイヴは、当時憧れだったバンドであるスクリーム(Scream)がドラマーを募集しているという情報を目にし、オーディションを受けるチャンスに飛びつき、デイヴはわずか17歳で最も重要なハードコアバンドの1つに加入することになった(デイヴは後に、スクリームのバンドメイトであるフランツ・スタールをフー・ファイターズに一時的に勧誘し、もう一人の元スクリームのメンバーであったピーター・スタールはフー・ファイターズやクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのロードマネージャーとして活動している)。
ニルヴァーナからフォー・ファイターズへ
80年代後半にスクリームが解散した後、デイヴ・グロールはシアトルに拠点を移し、ドラムに空きがあったあまり知られていないバンド、ニルヴァーナに加入した。
ニルヴァーナ時代には自分を「静かな人(quiet one)」と表現していたデイヴだが、バンドが爆発的に売れている間も、時間を見つけては『Pocketwatch』というタイトルのデモを何曲か書き、楽器とヴォーカルはすべて自分で録音していた。このデモは後にフー・ファイターズのファーストアルバム『Foo Fighters』の基となったものだ。
カートの死によってニルヴァーナが解散した後、デイヴは元ザ・ジャームズ/ニルヴァーナのギタリストだったパット・スメア、元サニー・デイ・リアル・エステイトのウィリアム・ゴールドスミス(ドラム)とネイト・メンデル(ベース)からなるバンドを結成。フー・ファイターズを名付けられたこのバンドにおいてデイヴはドラムを叩くことをやめ、フロントマンとしての役割を担うようになった。そんな中、デビュー・アルバムの『Foo Fighters』は1995年にリリースされたが、前のバンドの影がすべての評価に影響を与えていることに、グロールは対処しなければならなかった。
しかしながらデイヴ・グロールは、硬派なパンク・ロッカーであることをやめるつもりはなかった。フー・ファイターズでは、オリジナルのサウンドを維持しつつ、メロディックなミドルテンポのラジオ・ロックで鍛え上げ、2021年までに10枚のスタジオ・アルバムを発表。ドラマーのテイラー・ホーキンス(2022年逝去)と、リード・ギタリストとなるクリス・シフレット、キーボードのラミ・ジャフィーを迎えてラインナップを固めたフー・ファイターズは、リリースを重ねるごとにファン層を広げている。
幅広いサイド・プロジェクト
多くのミュージシャンは、音楽史上最も成功したバンドのドラマーやフロントマンであることに満足するだろうが、デイヴ・グロールは全く違った。彼は、フー・ファイターズのフロントマンとして活動しながらも他のバンドやプロジェクトに参加し、ツアーも行い、様々な音楽を楽しみにしながら作りあげた。彼が参加するプロジェクトの趣味は様々で、トム・ペティからノラ・ジョーンズ、さらにはディディ(パフ・ダディ)までと幅広い。
2000年、ブラック・サバスのトミー・アイオミによるソロ・アルバム『Iommi』のために、デイヴはヴォーカルとドラム・トラックを提供。2002年、フー・ファイターズの4枚目のスタジオ・アルバム『One by One』のレコーディングで波乱があった後、バンドは活動を一時休止し、デイヴはアンダーグラウンドのハードロックバンド、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジにドラマーとして加入。夏の間、彼らと一緒にライヴを重ねた後、デイヴは2002年の彼らのアルバム『Songs for the Deaf』のレコーディングに協力した。
デイヴ・グロールの惜しみない貢献は、必ずしも一方通行ではない。例えば、フー・ファイターの5枚目のアルバム『In Your Honor』(2005)には、レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オム、そしてノラ・ジョーンズまでもが参加している。また、デイヴは優れたコラボレーターを集めることにも長けており、ジョシュ・オムとジョン・ポール・ジョーンズはデイヴと一緒にスーパーグループであるゼム・クルックド・ヴァルチャーズ(Them Crooked Vultures)を結成したことも大きな話題となった。
デイヴは、俳優のジャック・ブラックとカイル・ガスによるロック・フォーク・ユニットのテネイシャスDのデビュー・アルバムに参加し、彼らのミュージック・ビデオや映画『テネイシャスD 運命のピックをさがせ!』にサタン役で出演。
翌年にはキャット・パワーのアルバム『You Are Free』(2003)に参加し、2005年のナイン・インチ・ネイルズのアルバム『With Teeth』では数曲でドラムを叩いている。これはデイヴが90年代からトレント・レズナーと知り合いでおり、お互いに尊敬し合っていたことで実現した。トレント・レズナーがデイヴ・グロールのドキュメンタリー映画『サウンド・シティ – リアル・トゥ・リール』のためにトラックを提供したり、ナイン・インチ・ネイルズのEP『Not the Actual Events』ではデイヴがドラムを演奏したりと、様々な活動を共にしている。
デイヴのミュージシャンとしての魅力はそのドラム・スキルだけでない。デビッド・ボウイの2002年のアルバム『Heathen』に収録されているニール・ヤングの「I’ve Been Waiting For You」のカバーではデイヴはギターで参加している。コラボレーションを好む彼にとって、デイヴが自分の趣味のスーパーグループを結成するのは時間の問題だった。デイヴは、モーターヘッドのレミー、ヴェノムのクロノス、セパルトゥラのマックス・カヴァレラなど、80年代に活躍したお気に入りのメタル・ボーカリストたちを数年にわたって口説き落とし、2004年にプロボット(Probot)名義で発表したメタル・プロジェクトでヴォーカルを担当した。
その10年後の2014年には、今度はパンクの仲間たちと一緒にスーパーグループ、ティーンエイジ・タイム・キラーズ(Teenage Time Killers)を結成。このプロジェクトのデビュー・アルバムには、フィアー、ザ・ジャームズ、スリップノット、デッド・ケネディーズ、マイナー・スレット、バッド・レリジョン、アルカリ・トリオなど、パンクやメタルの現役や元メンバーが参加していた。
ロックの守護者
輝かしいサイドプロジェクトの中でも、おそらくグロールの最も重要な役割は、ロックの守護者としての役割だろう。まず、2013年公開のドキュメンタリー映画『サウンド・シティ – リアル・トゥ・リール』では、Neve 8028アナログ・レコーディング・コンソールが生み出す本物のロック・サウンドと、『Nevermind』や数え切れないほどの象徴的なレコードを生み出したことで名高いサウンド・シティ・スタジオに賛辞を贈った。
さらにデイヴ・グロールは、アメリカ音楽の歴史を探る旅を続け、『Sonic Highways』を監督した。この作品は、アメリカ国内の各地域の音楽シーンを紹介するとともに、バンドが同名である8枚目のアルバム『Sonic Highways』をアメリカ国内の8つのスタジオでレコーディングする様子を描いたドキュメンタリーだ。
デイヴ・グロールのキャリアを振り返ると、彼が根っからの音楽ファンであることがよくわかる。薬物中毒や精神的な故障など、ロックンロールにありがちなありきたりな要素を一切排除して、彼は現代のロックの非公式な顔となり、かつてないほど分裂したジャンルの創造と維持に努めているのだ。
Written By uDiscover Team
ニルヴァーナ『Nevermind』
2021年11月12日発売
(*国内盤Super Deluxeのみ12月1日発売)
国内盤:Super Deluxe Edition (5CD + Blu-Ray)
国内盤:2CD
輸入盤
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