ビリー・ホリデイ、ブライアン・フェリーそしてチャック・ベリーを結ぶロマンティックな名曲
様々なジャンルで演奏されることが名曲の証であるならば「You Go To My Head(邦題:忘れられぬ君)」がまさにそれである。J・フレッド・クーツが作曲し、ヘヴン・ギレスピーが作詞を手がけたこの豊潤でロマンティックなナンバーは、ビリー・ホリデイからブライアン・フェリー、ダイナ・ワシントン、ディジー・ガレスピーやビング・クロスビー、そして2017年にはボブ・ディラン、そしてチャック・ベリーが遺作でこの曲を演奏するなど、80年間に渡りカヴァーされ続けている。
この曲が最初に全米チャートに登場したのは1938年、トラッペッターでありバンドリーダーであるラリー・クリントンによるもので、全米3位を獲得し夏のヒットとなった。同年にビリー・ホリデイは彼女のバージョンを録音し、ヴォーカリオン・レコーズからリリースする。その一年だけでも数多くのアーティストがこの曲をカヴァーしており、翌年の1939年にはマレーネ・ディートリヒもこの曲を歌った。
第2次世界大戦後中から戦後にかけても「You Go To My Head」はその人気が衰えず、ビング・クロスビー、ペギー・リー、ドリス・デイやトニー・ベネットといった数えきれないほどのアーティスト達に歌われた。フランク・シナトラに至っては、2度もレコーディングをし、1946年にコロンビア・レコードからリリース、1960年にはキャピトル・レコードからリリースされたアルバム『Nice ’n’ Easy』に収録している。ルイ・アームストロングも1957年に演奏し、1960年にはエラ・フィッツジェラルド、その他にもダイナ・ショア、オスカ・ピーターソンやビル・エヴァンスも素晴らしいテイクを残している。
ブライアン・フェリーはアルバム『Let’s Stick Together』にこのバラードを収録し、1975年7月5日にUKシングルチャートに登場。リンダ・ロンシュタッドやスモーキー・ロビンソン、ロッド・スチュワート等多くのポップ、ソウル系のアーティストがそのチャーミングな楽曲に惚れ込んだ。さらに「You Go To My Head」は2017年現在においても新たな命が吹き込まれ、チャーミングなヴァージョンとしてボブ・ディランのアルバム『Triplicate』、そして悲しくも遺作となってしまったチェック・ベリーのラスト・アルバム『Chuck』にも収録されている。
Written by Paul Sexton