ザ・ローリング・ストーンズが退廃的素晴らしさに満ちた『Exile On Main St』の想い出を語る
多くのザ・ローリング・ストーンズ信奉者たちにとって、このアルバムは決定的に特別な存在であり続けている。UKチャートで2回1位を飾り、47年経った今でも「Rocks Off」「Sweet Virginia」「Shine A Light(邦題:ライトを照らせ)」「Happy」「Tumbling Dice(邦題:ダイスをころがせ)」などが変わらず演奏され続けるなど不朽の魅力があるからだ。そのアルバムとは、『Exile On Main St(邦題:メイン・ストリートのならず者)』である。
この伝説的で名高い2枚組アルバムの制作においてよく知られている状況は非常に困難であり、その制作期間は非常に長期にわたったため、彼らの歴史において『Exile On Main St.』がこのように称賛されるようになると想像した当時のストーンズのファンはそう多くはないだろう。このアルバムは、1971年3月のロンドン、ラウンドハウスでのUKツアー最終日の後、税金対策のため祖国から‘Exile’(亡命する*訳注:ここでは移住)せざるをえなかったことから、皮肉を込めて名前が付けられた。
「自分の国を離れるように強制されたら腹も立つだろ」とキース・リチャーズは、2010年の『Exile On Main St.』のデラックス・リイシューの際にサンデー・タイムズ紙で行われたインタビューで語った。「(国に)居続けることもできただろうね、1ポンドごとのもうけに対して、2ペンスだけを稼ぐためにね」とストーンズを移住に追いやった出版税について冗談めかして言った。「どうもありがとうございます、って感じさ」。
「それが行うべき唯一のことだったんだ」とチャーリー・ワッツは付け加える。「なんて言ってたっけ?ブレイク・イン・アーニングス(所得の窃盗)? うまくいったよ。神に感謝だね」。彼とビル・ワイマンはフランスに落ち着いた。「僕の家族はそれで幸せだった、僕もね」。
アルバムに収録された楽曲のセッションは早くても1969年からミック・ジャガーのスターグローヴの家で始まり、ロンドンのオリンピック・スタジオで続けられた。しかし、『Exile On Main St.』が主として録音されたのはフランス南部にあるキース・リチャーズのネルコート・ヴィラだ。純粋に音的な制限から、当時のストーンズのライフ・スタイルが起こす終わりのない遅延まで、課題は無数に存在した。
若干の修正後、このセッションは、ザ・ローリング・ストーンズのかの有名でよく使用された移動式スタジオ・トラックで録音された。ビル・ワイマンは、サンデー・タイムズ紙にこのヴィラについて語った「まさに地中海、とても美しく、そのうえボートまであるんだ。キースがここを借りた時、庭は伸び放題だった、そしてとても魅惑的だったよ」。
「ヤシの木があって幻想的で異国情緒が漂っていた。俺たちは、それらを見ながらトラック(ザ・ローリング・ストーンズ・モバイル、移動式スタジオ・トラック)に乗り込んでレコーディングをするんだ。ケーブルをいろんな部屋に走らせて、音入れしようとしたんだ」。
「地下室は最高におかしな場所だった」とキース・リチャーズは同じ記事内で語った。「すごくデカい、だけど小個室に分けられていて、まるでヒットラーの塹壕のようだった。例えば、ドラムの演奏は聞こえるけど、チャーリーの小部屋を探すのにはしばらく時間がかかるみたいにな」。
ミック・ジャガーは当時ストーンズの周りにいた仲間を思い出しながら付け加えて語った。「全員の生活が取り巻き達に満ちていた。そのうちの数名は本当に素晴らしく楽しくて、少しは信頼できる奴らだった。でも結局は、取り巻きには周りにいて欲しくなくなるんだ、そいつらはすべてを遅らせるからね」。
「でも、それはライフスタイルなんだ。ただ他の生き方というだけ。今では、これまで以上に多くの取り巻きたちがいるよ。当時は、ドラッグや、酒、騒ぎに満ちていた。だけど、君も知っている通り、そこは英国北部の(鉱物や織物などの加工)工場ではない。そこは、ロックン・ロールの生活環境だったんだ」。
しかし、このような見込みのない状況から、その時代を形どるストーンズを絶え間なくまばゆいばかりに走り続けさせる作品が生まれたのだ。1972年5月12日にリリースされ、一時的に疎遠になっている彼らの祖国、そしてスペインからカナダまでの他の多くの国々など、大西洋の両サイドで1位を獲得した 彼らにとっては6枚目の1位獲得であった。2000年までにアメリカでプラチナに認定され、チャート1位を獲得したデラックス盤のリイシューはイギリスでプラチナとなった。
レニー・ケイは、『Exile On Main St.』の最初のリリースに際して次のようにレヴューしている。「我々が従来よりよく知っている、ストーンズ・サウンドの構成要素に明確に焦点が定まっている。ブルースから発生したノックダウンさせるようなロックン・ロールは、ストーンズがめったに取扱いを誤ることのない充満する黒い感情に裏打ちされている」。
アルバムがリイシューされたとき、メディアは列をなして大絶賛した。「彼らがタイム・トラベルを発明するまで、我々には、70年代初期の退廃的な空気を吸い込む方法はなかった」とQ誌は述べ、「絶好調だ、これは世界一素晴らしいロックン・ロール・バンドの最高の偉業だ」とクラッシュ誌は述べた。
「いつも誇りに思ってるよ」とキース・リチャーズは、サンデー・タイムズ紙のインタビューのまとめに語った。「自分達のベストを証明したんだ、もちろん一番重要な音楽だけでなく、バンドそれ自体が本腰を入れ、ワゴンの周りを回ることもね」。
Written by Paul Sexton
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