ローリング・ストーンズ『It’s Only Rock ‘n’ Roll』:ミックとキースによる初プロデュース・アルバム
ザ・ローリング・ストーンズは1973年の9月から10月にかけて6週間に及ぶヨーロッパ・ツアーを敢行した(全32公演、その多くは1日2回公演だった)。そしてツアーがドイツで千秋楽を迎えてから1カ月も経たないうちに、彼らは再びドイツに赴き、ミュンヘンにあるミュージックランド・スタジオで新作のレコーディングを始めた。それはやがてアルバム『It’s Only Rock ‘n’ Roll』として発表されることになるものだった。
<関連記事>
・ローリング・ストーンズ『Tattoo You (刺青の男)』40周年記念盤発売
・チャーリー・ワッツが80歳で逝去。その功績を辿る
アルバム『It’s Only Rock ‘n’ Roll』は、1974年10月16日にリリースされ、11月23日に、全米チャートの首位を獲得した。当時、全米アルバム・チャートの1位はイギリス勢が続けざまに獲得しており、このアルバムの前はジョン・レノンの『Walls and Bridges(心の壁、愛の橋)』が1週間を1位を記録。『It’s Only Rock ‘n’ Roll』のあとは、エルトン・ジョンの初のベスト・アルバム『Greatest Hits』が年末まで首位の座を維持していた。
この『It’s Only Rock ‘n’ Roll』はザ・ローリング・ストーンズがイギリスで出した12枚目のアルバムにあたる。この作品には先立っておこなわれたヨーロッパ・ツアーの勢いがそのまま封じ込められていた。アルバム・タイトル曲「It’s Only Rock ‘n’ Roll」は第1弾シングルとなり、8月には全英チャートで最高10位を記録。ただしアメリカでは最高16位と、このバンドにしては地味な順位に留まった。
また、このアルバムでザ・ローリング・ストーンズはちょっとした転機を迎えていた。それはギターのミック・テイラーが参加した最後の作品になったのだ。さらにこのアルバムで、ミック・ジャガーとキース・リチャーズの二人が自ら初めてプロデュースを担当することになった(名義はグリマー・ツインズだった)。2人のセルフ・プロデュースはこのあと7年に亘って続いていく。
アルバムからのシングル「It’s Only Rock ‘n’ Roll」のプロモーション・ビデオでは、制御不能になったシャボン玉発生装置のおかげでチャーリー・ワッツの姿が見えなくなっていくという面白さもあるもので話題となった。
別のプロモ・ビデオも紹介しよう。テンプテーションズの「Ain’t Too Proud To Beg」のカヴァーである。これはアメリカでシングル化された。ここでザ・ローリング・ストーンズのメンバーが選んだ服のチョイスは必見だ。
アルバム『It’s Only Rock ‘n’ Roll』には、「Time Waits For No One」や「Fingerprint File」といった強力な新曲が収められていた。それもあって、このアルバムはチャートで好成績を収めた。特にアメリカでは4枚連続で首位を獲得し、プラチナ・アルバムに認定されている(この連続首位獲得の記録はその後8枚連続まで伸びることになる)。ただしイギリスでは最高2位に留まっている。
Written by Paul Sexton
ザ・ローリング・ストーンズ『It’s Only Rock ‘n’ Roll』
1974年10月16日発売
CD / Apple Music / Spotify / Amazon Music /YouTube Music
- ザ・ローリング・ストーンズ アーティスト・ページ
- 全世界動員480万人を記録した「ブリッジズ・トゥ・バビロン・ツアー」
- 聖地チェス・スタジオで録音されたストーンズ2枚目のEP『Five By Five』
- サイケに挑んだストーンズの『Their Satanic Majesties Request』
- ローリング・ストーンズ『Tattoo You (刺青の男)』40周年記念盤発売
- ストーンズの「ベロ・マーク」の誕生と歴史
- ストーンズが60年代から2020年代まで7つの年代で全米チャート入り
- “絶頂期の1枚”ザ・ローリング・ストーンズの『Let It Bleed』