ロバート・パーマー過渡期のアルバム『Secrets』
1979年7月2日、バハマをこよなく愛したヨークシャー出身のこのロバート・パーマーが自身5枚目となるスタジオ・アルバムをリリースし、さらにその名声を上げた。ここでは、最もスタイリッシュで誰からも愛されたロバート・パーマーのアルバム『Secrets』について語ろう。
1970年代後半になると、本国の英国ではなかなかヒットに恵まれないものの、ロバート・パーマーは優雅で洗練、巧みにプロデュースされたブルーアイド・ソウルロックという地位を確立していく。エルキー・ブルックスと共に活動したジャズロック・バンドのダダと、リズム&ブルースに影響を受けたヴィネガー・ジョーを経て、1974年にリリースした『Sneakin’ Sally Through The Alley』でソロとして活動を開始する。4枚目のソロ・アルバム『Double Fun』から、彼の実質的な最初のヒットとなったシングル「Every Kinda People」がUSトップ20に入ると、彼の次回作への道が拓けた。
セルフ・プロデュースしたアルバム『Secrets』は、ロバート・パーマーがスムーズなソウルだけでなく、ロックや他の作曲家の曲を巧みに自分のものにしてしまうということを、1曲のシングル「Bad Case of Loving You (Doctor, Doctor)(邦題:想い出のサマー・ナイト)」によってファン達に知らしめた。アメリカのアーティスト、ムーン・マーティンがキャピトルからのこの曲のオリジナルをリリースしたのは、ロバートがリリースしたたった1年前だったにも関わらず、ロバート・パーマーによるカヴァーがヒットを勝ち取り、これをきっかけにアルバム『Secrets』はUSトップ20にチャートイン。この曲のようなロックな楽曲が後のロバート・パーマーのヒットとなる「Addicted To Love」や「Simply Irresistible」への布石となった。
『Secrets』には他にも、全米シングル・チャート入りすることになるトッド・ラングレンの「Can We Still Be Friends」のカヴァーや、4枚目のアルバム収録曲「Every Kinda People」にも参加した元フリーのベーシストのアンディー・フレイザーが書いた「Mean Old World」も収録。ロバート自身が書いた4曲のオリジナルと共作楽曲がもう1曲、そしてジョー・アレンとジョン・デイヴィッドといった作家による楽曲も収められている。収録曲の中には、レコーディングの行われたバハマのニュー・プロヴィデンスを反映させた、レゲエ調の「Too Good To Be True」もあった。
もしかすると『Secrets』はロバート・パーマーの作品の中で最も有名なアルバムではないのかもしれないが、1970年代のソウル・ボーイが80年代のMTV向けサウンドへと変化していく過渡期を繋ぐ、チャーミングな作品である。
Written By Paul Sexton
- 『Secrets』を聴く ⇒ Spotify