reDiscover:スモール・フェイセスの宝の山が詰まった作品『From The Beginning』

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最初に結成された時、スモール・フェイセスは数年しか一緒に活動しなかった。しかし、それでもその時間の中で1960年代の最も影響力のあるバンドのひとつとしての地位を確立した。ベースと時々ヴォーカルを担当したロニー・レイン、メイン・ヴォーカリストとリード・ギターのスティーヴ・マリオット、ドラムのケニー・ジョーンズ、キーボードのイアン・マクレガンで結成された東ロンドン出身のバンドは、興味深いオルガンを多く使ったポップ、ソウル、そして“フリークビート”(モッド・ミュージック・ファンたちが好んだハードなロックを当時そう呼んでいた)を融合したサウンドで、様々なミュージシャンたちに影響を与えた。デッカから1967年6月2日にリリースされたセカンド・アルバム『From The Beginning』は、スモール・フェイセスのファースト・アルバム『Small Faces』から1年ちょっと過ぎてからリリースされた。それは新しいレーベル、イミディエイトからの1作目が発売される直前のことで、バンドの元マネージャーであるドン・アーデンが物議を醸した“スポイラー”アルバムとして発売した。

14曲を収めたアルバム『From The Beginning』には未発表9トラックが含まれており、スモール・フェイセスの売り上げが期待される良い時期に発売された。シングル「Whatcha Gonna Do About It」は1966年にチャートに14週間ランクインされた。アルバムは当時急いで曲を集めて作られたものだったが、オープニング・トラックのデル・シャノンの「Runaway」のカヴァーから、エンターテイナーのケニー・リンチ作曲の軽いポップ・ソング「Sha-La-La-La-Lee」まで、21世紀のファンたちを楽しませる興味深い曲やヒット曲の違うヴァージョンが含まれている。

ロンドンのポートランド・プレイスにあるIBCスタジオにてレコーディングされたアルバムは、メンバーたちがアメリカのソウルを良くカヴァーしていた頃を象徴しており、ライヴで良く演奏された「Baby Don’t You Do It」(モータウンの大物トリオのラモント・ドジャー、ブライアンとエディー・ホーランドがマーヴィン・ゲイの為に作曲した曲)が含まれている。

スモール・フェイセスのヴァージョンにはオリジナル・キーボーディストのジミー・ウィンストンが参加している。彼は後の1966年にイアン・マクレガンと入れ替わった。イアン・マクレガンがメンバーとなってからバンドは時々ブッカー・T・ジョーンズのスタイルの楽器を使用してレコーディングし、この作品に収められている「Plum Nellie」のカヴァーは彼らのソウル・リズムを真似ることのできる才能を証明している。その他にも「Take This Hurt Off Me」(ドン・コヴェイ)と「You Really Got A Hold On Me」(ザ・ミラクルズ)もカヴァーしている。これらの曲はメンバーたちがアメリカのソウルに対する愛情があることを示しており、「You Really Got A Hold On Me」では今は亡きスティーヴ・マリオットのヴァーカリストとしての才能が発揮されている。

1966年のスモール・フェイセス:(左から)スティーヴ・マリオット、ケニー・ジョーンズ、ロニー・レイン、そしてイアン・マクレガン

『From The Beginning』はその他にもスティーヴ・マリオットとロニー・レインの間に芽生えつつある作曲者同士としてのパートナーシップも聴き所だ。二人はロンドンのマナー・パークにあるJ60ミュージック・バーという楽器屋で偶然出会いバンドを結成することになった。二人とも身長が168センチで(そこからバンド名がつけられた)、音楽に対する想いや考えが共通しており、それは素晴らしい共作曲「Hey Girl」や「Yesterday, Today and Tomorrow」から伝わってくる。その他にも「That Man」では作詞の才能を披露しており、スモール・フェイセスの1968年のコンセプト・アルバム『Ogdens’ Nut Gone Flake』で贅沢に取り入れられているサイケデリックな要素を暗示している。

当時メンバーたちは、イミディエイトが発売したアルバムに収録されている曲の未完成ヴァージョンが『From The Beginning』にも含まれていたことに怒りを感じていたが、それでもスティーヴ・マリオットとロニー・レイン共作の「My Way Of Giving」や「(Tell Me) Have You Ever Seen Me」などのラフなテイクを聴けることはとても魅力的だ。後に発売されたアルバムのデラックス版では、少し変わった「Just Passing」を含む5曲のボーナス・トラックと、12曲近くの違うヴァージョンが収められている。

更に『From The Beginning』は当時のロンドンにいた才能あるスタジオ・スタッフの腕を実証している。後にクリスチャン・シンガーとなり1993年に聖公会の牧師に任命されたジョン・パントリーと、ザ・ローリング・ストーンズライアン・アダムスポール・マッカートニー、そしてエリック・クラプトンなど数多くの一流ミュージシャンたちの制作に関わったグリン・ジョンズの二人がエンジニアリングを手掛けた。

ドン・アーデンと不仲になったことで議論を醸したアルバムとなったが、それでもスモール・フェイセスのキャリアの中で最もクリエイティブな時期の始まりに作られた宝の山が詰まった作品であることは間違いない。そしてそのキャリアの中で後に「Lazy Sunday」や「Afterglow」などの名作が生まれることになる。

Written By Martin Chilton


スモール・フェイセス『From The Beginning』

  

 

 

スモール・フェイセスの「Itchycoo Park」や、同じくモッド・アイコンであるザ・フーやザ・キンクスの傑作を含むプレイリスト『60年代Classic Hits』をフォローしよう。

 

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