名盤再訪:スコット・ウォーカー『Scott 2』
スコット・ウォーカーが自身のバンド、ウォーカー・ブラザースと共に居を構えていたポップ界から離脱をしたことは、彼の作品がより“アート・シアター系”なアプローチへと移行していく前兆だったのかも知れない。しかし少なくとも数年間は、チャートからの離脱の前兆ではなかったことだけは確かだ。
彼のデビュー・ソロ・アルバム『Scott』は、1967年にイギリスで第3位を記録し、トップ10内に計7週間居続けた。後に続く作品はこれよりは緩やかなスタートを切ったが、1968年5月18日にナンバー・ワンへの旅を終えた。と言うことで今回みなさんにぜひ『Scott 2』を再発見していただきたい。
プロデューサーのジョン・フランツと再び組んだこのアメリカ人ヴォーカリストには、これまでのアルバムの必勝法を変更する気など更々なかった。第一に『Scott 2』からは、アルバム最初のヒット・シングルのロマンティックな「Jackie」及び「Next」を共作したジャック・ブレルのソングライティングに対する、変わらぬ熱意が見て取れる。
本名ノエル・スコット・エンゲルとして曲作りを行なっていたスコット・ウォーカーは、愉快なタイトルの「The Amorous Humphrey Plugg」を含む自作曲を4曲収録。更に大西洋の両側〔=アメリカとヨーロッパ双方の〕現代作家の作品も取り上げている。
この中には、イギリス出身のドン・ブラックの「Best Of The Worlds」(マーク・ロンドンとの共作)や、バート・バカラックとハル・デイヴィッドの作品などが度々カヴァーされている「Windows Of The World」のヴァージョン等が含まれていた。またスコット・ウォーカーは、注目の新生シンガー・ソングライター、ティム・ハーディンが手掛けたナンバー「Black Sheep Boy」も歌った。
『Scott 2』は結局、初登場第23位を記録した後に、5位降下し、商業的には期待外れの結果となった。その後トップ10圏内に10週連続滞在するも、ナンバー・ワンを目指す勢いで7位まで上昇した後、順位を2つ下げてしまった。にも拘らず、リリース直後にメロディ・メーカー誌でアルバムについて語ったスコット・ウォーカーからは、この作品に関する熱意は感じられなかった。
「それほど気に入ってはいなかった。上手く出来たとは思えなくてさ。長期間に渡って断続的なセッションを通して制作した為に、一貫性が伝わってこなかったんだ。非常にじっくり聴かなければならない作品だ。俺には分かるのさ。こういうタイプは理解されるまで時間がかかるものだ。雰囲気がいささかヘヴィ過ぎた」とクリス・ウェルチに語った。
これはスコット・ウォーカーがBBCテレビの連続番組をもつ少し前の時期だった。それでも彼には放送局からの出演依頼がたびたび入っていた。1968年3月、ちょうどアルバムがリリースされた頃、彼はシラ・ブラック・ショウで歌い、その後5月にはバンド・リーダーのビリー・コットンの『Music-Hall』、そしてエステル・アンド・アビ・オファリムのショウにゲスト出演している。
Written By Paul Sexton
スコット・ウォーカー『Scott 2』