メタリカ『Ride The Lightning』解説:ヘヴィ・メタルを永遠に変えたセカンド・アルバム

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伝説的なデビュー・アルバム『Kill ’Em All』が発売されてから12ヶ月後の1984年の7月、スラッシュ・メタルの先駆者メタリカは世界中のメタル・ファンたちの注目を集めていた。彼らの速くアグレッシヴなヘヴィ・メタルのアプローチが、若干活気を失っていた80年代初期のUSシーンに新たな興奮を吹き込んでいたのだ。

アイアン・メイデンやモーターヘッドが中断したところからバトンを引き受けたメンバーたちは、7月27日に発売したのセカンド・アルバム『Ride The Lightning』と共にヘヴィ・メタルというジャンルを永遠に変えようとした。

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前作からステップ・アップしたサウンド

1984年6月から始まるUKのブラック・メタルの先駆者ヴェノムとのツアーに参加する直前、メタリカはコペンハーゲンでレコーディング前のリハーサルを行い、スウィート・サイレンス・スタジオにて『Ride The Lightning』の曲作りをプロデューサーのフレミング・ラスムッセンの指揮下で行った。

結果として完成したアルバムは、メタリカをデニムとレザーをまとった他のバンドたちから区別させるものとなった。プロダクションの観点から見ても、『Ride The Lightning』は明らかに前作からステップ・アップしており、より進化したパワフルな作品で、現在のスラッシュ・メタルやスピード・メタルというメタルのサブ・ジャンルのサウンドを定義する土台となった。

 

その内容

アルバムのオープニング・トラック「Fight Fire With Fire」は全体の雰囲気を定め、その洗練されているにも関わらず残忍なサウンドは、完璧なバランスを保っったことで傑作となっている。

当時多かった悪魔や魔術師、ファンタジーなどのヘヴィ・メタルの主要テーマを捨て去り、『Ride The Lightning』で歌われている歌詞は政治、歴史、戦争、そして極刑からインスピレーションを得ている。

それらはタイトル・トラック「Ride The Lightning」に充満しており、キャッチーなグルーヴに感染したリフと今でも大きく響き渡る賛歌のようなコーラスが爆発し、成熟過程のバンドがヘヴィ・メタルの枠を超えて、自らが作り上げる手助けをしたスラッシュというジャンルの中で未知の領域を探索している。他のトラックでは、絶対零度によって死を生きること(「Trapped Under Ice」)、自らに力を与えること(「Escape」)、聖書の予言(「Creeping Death」)について歌っている。

オープニングの反復進行から雷のようにスタジアムを揺るがす3曲目「For Whom The Bell Tolls」まで、警告もなく『Ride The Lightning』は伝説的なアルバムとしての存在を固め、ベーシストのクリフ・バートンの思いもよらないクラシック・ロックとジャズの影響が他のメンバーのメタルの初期衝動と結合している。

そしてアルバムの中間へと続き、メタリカのキャリアで最も感動的な瞬間であるスラッシュ・メタル・バラード「Fade To Black」にて昇華される。

「Fade To Black」ではさらにもうひとつ新しいスラッシュ・メタルへのアプローチが見られ、スラッシュ・メタルというジャンルにそれまでなかったゆっくりとしたメロディー・アレンジの曲は、オープニングのコードから始まり、気持ちが高まる壮大なフィナーレへと続いていく。メンバーたちは世界中の批評家たちから新たなレベルのリスペクトを得ることになった。

アルバムに収録されている他のトラックも革新と勢いに溢れ、ソウルフルな美しさと深みが大量に詰め込められている。特に「Fight Fire With Fire」のイントロではクラシック・ギターが使用され、その後にはジェイムズ・ヘットフィールドとカーク・ハメットの電動ノコギリのようなギターが容赦なく攻撃し、ラーズ・ウルリッヒのマシンガンのようなドラムが伴奏を務める。

その一方で「The Call Of Ktulu」(元々のタイトルは「When Hell Freezes Over」)は、ホラー作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトからインスピレーションを受けた9分間にも及ぶ雷のようなインストゥルメンタルが披露され、死がアルバムの主要テーマであることを明白にしている。それでもメタリカと同時期に活躍していた他のバンドの大げさなイメージやグラフィックスに比べると地味ではあったが。

1983年のデビュー作によって、メタル・シーンがよりヘヴィでアグレッシヴなサウンドを欲していたことが明らかとなり、『Ride The Lightning』の革新さはロック・メディアとファンたちの両方から熱烈に歓迎された。クレジットを見れば、クリフ・バートンがバンドの進化したサウンドに貢献していることがわかる。

彼はジェイムズ・へットフィールドとラーズ・ウルリッヒと共にアルバムに収録されている曲の3/4を共作しており、クリフ・バートンはメンバーたちを未知の領域へと押しやり、1曲ずつがヘヴィ・メタルの境界を撤廃する触媒となった。

結果として生まれた8曲のすべてがそれぞれスラッシュ・メタルだけではなく、ヘヴィ・メタルのジャンル全体の土台となり、ただビールを飲んで頭を振るだけではなく、ジャンルとバンド自身にとって大きな可能性があることを証明した。メタリカは、その繊細で魂のこもった心動かすアレンジを基に、溢れる速く激しく、そしてヘヴィで複雑な音楽を作り出す才能のお陰で、他のライバルたちと比べて劇的に違う地位を確保することができたのだ。

Written By Oran O’Beirne




メタリカ『Ride The Lightning』
1984年7月27日発売
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