デイヴ・ムステイン本人がメガデスの『Peace Sells…But Who’s Buying?』を振り返る
1986年9月19日にリリースされたメガデスのセカンド・アルバム『Peace Sells…But Who’s Buying?』は、現在幾つかの理由でヘヴィ・メタル界の節目を象徴する作品として扱われている。間違いなくそれはグラミー賞にノミネートされた最新アルバム『Dystopia』へと続く制止不可能な道へバンドを導いた。その他にも毒のようなリリックと巧妙な音楽で新たな基準を定めたが、最も重要な成果は、メンバーたちがいがみ合っていた中で作曲とレコーディング、そしてリリースが行われたことかも知れない。
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メガデスの結成メンバー、フロントマン、そして作曲家のデイヴ・ムステインはこう語る。
「当時はその日暮らしで、苦境に立たされていた。あのアルバムのリリース・パーティーを覚えているよ。お金が少しずつ入り始めた頃だったから、みんな興奮していた。パーティーの後にクリス(・ポーランド:ギタリスト)と大喧嘩をしたんだ。彼が生意気なことを言ってきたから、顔を蹴ってやった。当時は結構野蛮だったね…」
当時のメンバーであるデイヴ・ムステイン、クリス・ポーランド、ベーシストのデイヴィッド・エレフソン、そしてドラマーのガル・サミュエルソンから成るメガデスは既にデビュー・アルバム『Killing Is My Business… And Business Is Good!』を前年にコンバット・レーベルからリリースしており、幾らかのメディアの注目は浴びたものの、メンバーはまだ無一文で惨めな暮らしをしていた。結果としてデイヴ・ムステインの新曲は恨みに満ちていた。
「俺たちはホームレスで、空腹で、批判されることに嫌気を指していた。人にペテン師呼ばわりされ、絶対に成功しないと言われた。人のことをクソ呼ばわりしておきながら、幸せな称賛を言う。あのアルバムのリリックは正に心からのものだよ」
“心から”は間違いない。ソロと高速のリフで成る猛烈な嵐と、殺人を犯す狂人のリリックが特徴の「Black Friday」を聴けばわかるだろう。もしくは黒魔術の騒乱の「The Conjuring(殺しの呪文)」と「Bad Omen」はデイヴ・ムステインの当時のオカルトへの興味を反映している。
バンドの惨めさの要因のひとつとしてクリス・ポーランドとガル・サミュエルソンのドラッグ使用があり、『Peace Sells…But Who’s Buying?』があまりにも辛辣だったのは驚きではない。デイヴ・ムステインはため息をつきながらこう語る。
「ガルとクリスと出会った時、俺はただのマリファナ使用者だったけど、彼らはもっと深みにハマっていた。人からいつも何でマイク・アルバートがバンドに加わったのかと訊かれる。マイクはキャプテン・ビーフハートの元メンバーで、すごく良い奴でギターも上手かった。俺らは助けられたんだ。ツアーに出る前だったんだけど、クリスが捕まってツアーに行けなくなった。そこでマイクに一緒に来てもらうことになったんだ。俺たちはそうやって生きていた」
『Peace Sells…But Who’s Buying?』は変わった経歴を持っており、元々はプロデューサーのランディ・バーンズによりコンバート・レーベルでレコーディングされ、その後にキャピトル・レコードがメガデスと契約を結びアルバムのリミックスを手掛けた。デイヴ・ムステインは作曲セッションについてこう話す。
「ザ・ロフトと呼ばれていたリハーサル室で生活していたんだけど、『Peace Sells…But Who’s Buying?』の殆どをそこで、もしくはツアー中に作った。実際に『Peace Sells~』のリリックはそこの壁に書かれたものなんだ。メタルの歴史上、あれは最も有名な建造物かもしれない」
『Peace Sells…But Who’s Buying?』はすぐにスラッシュ・メタル界では賛歌的な存在になり、今もそれは変わらない、その激怒したリリック(“どういう意味だ? なんで俺がアメリカの大統領になれないんだ? じゃあ教えろよ、今でも「我ら人民」には変わりないんだろ?”)と、印象深いベース・ギターのイントロのお陰である。
「あのリリックは世界で最も人気の高いベースラインのひとつなんだ。ブラック・サバスの“NIB”、アイアン・メイデンの“Wrathchild”、そしてモーターヘッドの“Ace Of Spades”に続いてね。あのように重みのあるベースラインから曲が始まる曲は少ないんだ」
80年代にはMTVニュースのオープニング・テーマ曲として使用された「Peace Sells」のイントロは、ポール・レイニがリミックスを手掛けキャピトルからリリースされた画期的アルバムを象徴する多くの要因のひとつである。新しいミックスについて尋ねられるとデイヴ・ムステインは答える。
「完成度や熟成度から言うと、良くなったと思う。オートメーションや良いコンソール付きの正しい音楽機材があれば、違う結果を得られる。コンバットと『Peace Sells…But Who’s Buying?』のリミックスを手掛けた時はベストを尽くしたんだ。当時の俺たちにとっては良いレーベルだったけど、俺たちの標準には達していない。前兆はあったんだ。良いバンドを見つけて、契約を結んで、彼らを売り込む。それが商業というものだ」
30年と13枚のアルバムの後、デイヴ・ムステインは『Peace Sells…But Who’s Buying?』の時代を振り返ってカオスの時代だと言う。デイヴ・ムステインはこう笑う。
「みんなが“バッド・ボーイズ”たちと呼ぶハリウッドのバンドを目にするけど、俺からすると有り得ないね。奴らは体にタトゥーがあって体臭がひどいだけ。俺たちこそがバッド・ボーイズだよ!」
Written By Joel McIver
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