B.B.キング『Live In Cook County Jail』刑務所でのレコーディングした史上最高のライヴ盤

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このアルバム『Live In Cook County Jail』は、史上最高のライヴ・アルバムとして支持されている『Live at the Regal』との比較から避けられない。しかし『Live in Cook County Jail』は、刑務所でのレコーディングというジョニー・キャッシュが開拓した実例に続いた少数のアーティスト達と同じく、珍しいコンセプトに基づく作品だ。1968年にジョニー・キャッシュはフォルサム刑務所でアルバムをライヴ録音し、翌年にはサン・クエンティン刑務所での生演奏も録音している。

この世でB.B.キングに勝るブルースの親善大使はいなかった。恥じることなく過去の楽曲を取り上げることで、B.B.は観客が親しみやすさを感じられる数々の名曲を演奏していた。他の数えきれないほどのライヴ・レコーディングでも証明されたように、B.B.は気さくに観客に上手く話しかけている。クック郡刑務所で演奏する時も、タイムレスな人気曲へと導くように自分が選曲した曲を演奏しても良いかとオーディエンスから許しを得た。まるで詫びているかのように、通常ほとんど演奏しない過去の楽曲へと立ち返ることは自分とバンドにとって楽しみだと彼は説明している。いや、言い訳なんて不要だろう。彼の演奏を聴くのはいつでも楽しみだし、ここで演奏されたヴァージョンは史上最高なのだ。通常より若干ヘヴィかつファンキーで、近代的な疾走感あるベース・ラインやルシール(注:B.B.キングは自らのギターをルシールと名付けていた)のより豊かで成熟した音色をこのライヴ盤では堪能できる。

同アルバムには「Every Day I Have the Blues」や「How Blue Can You Get?」での極上の演奏や、見事に熱い解釈がされた「Worry, Worry」等が収録されている。「How Blue Can You Get?」は大げさに面白おかしく不公平な恋愛関係を語るたまらない嘆きのナンバーで、B.B.キングは素晴らしく力強いクレッシェンドへと高めていき「7人も子供作ったのに、今になって俺に引き取れと言うのか!」と決してすべらずに観客を盛り上げていく。

「How Blue Can You Get?」はもともとB.B.の1963年発表のアルバム『Blues In My Heart』に「Downhearted」というタイトルで録音されたが、古いものではチャビー・ケンプ&エリントニアンズによる1950年録音バ―ジョンに遡る。だが、その少し後にルイ・ジョーダンと彼の楽団が録音したヴァージョンの方が早い段階からジョーダンの大ファンだったB.B.キングに影響を与えていた可能性が高い。

クック郡刑務所で披露したB.B.キングの歌声はとてつもなく素晴らしく、可能な限り高いピッチで、ルシールで奏でる信じられないほど美しいメロディ・ラインに沿って歌っている。「How Blue Can You Get?」での彼は、苦々しくてゾクゾクするような音を見事に維持しており、きっとこの夜の観客を完全に打ちのめしたことだろう。

この他、古い馴染みのナンバーが沢山収録されており「3 O’Clock Blues」の冒頭では彼が「B.B.キングの認知度を上げた最初の曲」と紹介しているが、文字通りこの曲は彼のデビュー・アルバム『Singing the Blues』の1曲目に収録された楽曲である。若干早口で唱え、桁外れであり、生気に満ちた、メタリックな音色もある。この上なく素晴らしい不協和音を鳴らしながらB.B.キングは自身2度目にチャート入りした1952年のヒット曲「Darling You Know I Love You」へと滑らかに移る。実際、同曲は1位を獲得し、チャートに合計18週間もランクインした。だが、彼が奏でた現実離れしたあのコードは一体何だったのだろう?

1960年に全米シングル・チャート2位を獲得し、観客を喜ばせるようなミッドテンポの「Sweet Sixteen」で、この感傷的なセクションを締めくくる。ジョー・“ホセア”(注:ジョー・ビハールの別名)と共作したこの曲は、実は50年代初頭にビハール兄弟がB.B.キングと初めてレコーディングした際に含まれていた1曲だった。

『Live at the Regal』の発表からこのアルバム『Live in Cook County Jail』までの期間には、他の出来事があった。1969年6月にB.B.キングはアルバム『Completely Well』のラスト・ナンバーとして「Thrill Is Gone」を初録音したのだ。このアルバム・ヴァージョンは瑞々しく盛り上げるストリングスに裏打ちされた、ゆったりとロックする12小節のブルースだ。大受けしたこの曲はR&Bチャート3位、全米シングル・チャート15位にランクインした。

一方『Live in Cook County Jail』に収録されたライヴ・ヴァージョンはより活気がある仕上がりで、ストリングスに代わってホーン・セクションが入り、終盤はチョッピーなギター・プレイで幕を閉じる。B.B.キングの実に斬新な演奏が始まる前にはファンキーなソウルを披露し、その後には彼が刑務所のオーディエンスに話しかけ、彼らを喜ばせ、スロウ・バラード「Please Accept My Love」で並外れたアクロバティックなヴォーカルを披露してショウを締めくくるという、見事に音楽的方向性を変化させたライヴ・セットである。

最後にB.B.キングがステージを去る間、バンドはアップビートなアンセム的インストを演奏し、観客が熱烈な拍手を贈る。ドラマーのサニー・フリーマンは1960年発表の『B.B. King Wails』以来、B.B.とは一番付き合いの長いメンバーだった。よって、『Live at the Regal』に参加したのは、サニーと彼のボス(B.B.)のみ。一方、比較的ニュー・カマーであるメンバーは、ジョン・ブラウニング(トランペット)、ルイス・ヒューバート(サックス)、ブッカー・ウォーカー(サックス)、そして1968年までアルバート・キングと演奏してきたロン・リヴィ(ピアノ)である。

その年(1971年)の4月に『Live in Cook County Jail』は全米R&Bアルバム・チャートに3週間連続で首位に輝き、全米アルバム・チャートでは25位を獲得。『Live at the Regal』はパワフルかつロックの到来を予言する、60年代中盤における偉大なライヴ盤だ。一方、『Live in Cook County Jail』も先見の明があり、70年代中盤に最高潮の盛り上がりを見せたファンクを彷彿させるような非常にヘヴィなサウンドをここで既に使用している。しかし、両アルバムは過去に遡り、B.B.キングの初期の音源にも立ち返ってもいるのだ。この観点から、両アルバムはこの上なく素晴らしいライヴ・アルバムの1組(ペア)となっている。つまり、本質的に切り離すことができない、無敵に必須な作品なのである。


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