ジョン・コルトレーン『Crescent』:『A Love Supreme』と共にコルトレーン自身が最も聴いた作品
1964年は、ジョン・コルトレーンのキャリアの中でスタジオで過ごした時間が最も少ない年だった。4月27日になると、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、そしてエルヴィン・ジョーンズと共にイングルウッド・ クリフにあるルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオにて後に『Crescent』と名付けられるアルバムの制作にコルトレーンは取り掛かった。
そこで『Crescent』に収録されている全ての曲がレコーディングされ、その中には「Songs Of Praise」が含まれていたが、5曲だけ最終バージョンは別のところでレコーディングされた。初日にレコーディングした曲の中で「Lonnie’s Lament」「The Drum Thing」、そして「Wise One」がアルバムに最終的に収録された。「Lonnie’s Lament」と「The Drum Thing」はアルバムのB面を占め、「Lonnie’s Lament」にはコルトレーンのソロはないが、代わりにギャリソンの長いベース・ソロが含まれている。
ジョーンズの即興ドラム・トラックである最終トラック「The Drum Thing」にもコルトレーンのソロはないが、コルトレーンのサックスとギャリソンのベースの伴奏が最初と最後にわずかに含まれている。ドラムとサックスのデュエット演奏はその後もコルトレーンがライヴ、そして死後に発売されたアルバム『Interstellar Space』でも試している。
1964年6月1日に4人組はイングルウッド・クリフに戻り、アルバムのタイトル・トラックと「Bessie’s Blues」をレコーディングし直した。「Lonnie’s Lament」は1963年以来バンドのレパートリー曲の一つとなり、ベルリンでのライヴ・バージョンは後にパブロから発売された『Afro/Blue Impressions』に収録された。
「Crescent」はアリス・コルトレーンが2004年のアルバム『Translinear Light』で、そして1991年にはマッコイ・タイナーがアルバム『Soliloquy』でカバーをしている。未亡人であるギャリソンの妻によるとこの作品は『A Love Supreme』と共に彼自身が最も聴いたアルバムであり、彼の最高傑作をレコーディングしたたった6ヶ月後に制作されたと思うと驚くことではない。
ボブ・シールがプロデュースを手掛けた『Crescent』はインパルス!から1964年の夏にリリースされ、今でもコルトレーンが残したアルバム集の中の輝かしい作品として存在し続ける。
Written By Richard Havers
『Blue World』
2019年9月27日発売
CD / iTunes
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