ジョン・コルトレーン『Blue Train』:「この作品は好きなんだ。良いレコーディングだった」
「『Blue Train』のバンド・メンバーはすごく良かったから、この作品は好きなんだ。良いレコーディングだった」
(ジョン・コルトレーン 1960年3月ストックホルムにて)
この作品は多くの人に畏敬され、慈しまれ、そして愛されている。しかし、なぜそこまで皆が騒ぐのかを理解できない者も存在する。私は確実に前者の一人だ。確かに、多少の物議を醸した作品で、評論家たちはリー・モーガンとカーティス・フラーの二人は他の作品での方がその腕を発揮していると言う。しかし、それらの意見は厳しすぎるのではないだろうか。何しろ、これはジョン・コルトレーンの作品なのだから。ケニー・ドリュー、ポール・チェンバース、そしてフィリー・ジョー・ジョーンズはすでにリバーサイド・レコードから発売された作品でジョン・コルトレーンとのレコーディング経験があったので、互いの音楽スタイルを把握していた。
実際、タイトル・トラック「Blue Train」だけでも(その価値は「Moment’s Notice」が追加されたことによって実質何倍も上がったと言える)、この作品を傑作にしている。「Blue Train」はあまりにも聴き慣れた曲で、まるでずっと昔によく観ていたテレビドラマの主題曲や雰囲気のある映画のサントラのような気がする。この曲には心を打つジャズの要素がすべて詰まっている。
アルバムに関しての議論は殆ど楽曲「Blue Train」についてである。オリジナルのリリースでは、8回目のテイクからのピアノ・ソロが同じ1957年9月に行われたセッションに挿入され、ジョン・コルトレーンの最高傑作として知られる作品が出来上がった。後に発売されたリイシュー盤では8回目のテイクと合成バージョンの両方が収められており、そのように別の録音をアルバムに収録することを「冒涜」だと言ったルディ・ヴァン・ゲルダーを苛立たせた。
オリジナル↓
オルタナティブ・テイク↓
ジョン・コルトレーンが作曲したオリジナル曲4曲と並び、ジェローム・カーンとジョニー・マーサーのスタンダード曲「I’m Old Fashioned」も美しく解釈されており、悪びれることなく感傷的であり、ジョン・コルトレーンの最も素晴らしいバラードのひとつとなっている。
「頑固でモダンな表現法の中には挑発的な部分もあり、興味深く継続されるソロ・キャリアを持つテナー奏者コルトレーンを代表する作品である。ポール・チェンバース、(フィリー・)ジョー・ジョーンズ、ケニー・ドリュー、そしてトランペット奏者のリー・モーガンとトロンボーン奏者のカーティス・フラーの素晴らしいパフォーマンスという活気に満ちたクリエイティブなリズム演奏にコルトレーンが刺激されているのは明らかである」―Billboard誌(1958年3月3日)
Written By Richard Havers
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<パーソネル>ジョン・コルトレーン(ts, ss)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)
★1963年3月6日、ニュージャージー、ヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音
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