デヴィッド・ボウイのデビューアルバム『David Bowie』

Published on

20歳のデヴィッド・ボウイが1967年6月1日にセルフ・タイトルのデビュー・アルバムをデラム・レコードからリリースする前からすでに彼は、ロンドン拠点のブルース/ロックンロール・バンド、ザ・キング・ビーズやザ・コンラッズのメンバーとして活動し、ザ・ロウアー・サードのヴォーカリストとしてモッド界をたしなみ、ザ・ライオット・スクワッドのフロントマンを務め(同時にザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに夢中になった)、そしてリンゼイ・ケンプのダンス学校に没頭していた。

ひょっとしたら驚くことではないのかも知れない。キャリアの早い段階からボウイは様々な影響をひとつにまとめ、独自のユニークなヴィジョンを後に『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars(邦題:ジギー・スターダスト)』や『Low』、そして数え切れない程の既成概念の枠を超えるLPとして解き放した。しかしデヴィッド・ボウイのすごいところは、キッチュなヴォードヴィルとミュージックホールでの華麗なステージや衣装の底には、キャリア全体に渡って常に新しく生まれるアイディアの源が存在するということ。

まずは否定することのできないポップ感覚がそこにあり、ボウイがどんな装いをしていようが、それは彼の音楽に充満している:「Love You Till Tuesday(邦題:愛は火曜日まで)」(そしてアルバムに収録されていない「Can’t Help Thinking About Me」と「I Dig Everything」)は、紛れもなく頭から離れない曲であり、チャートで記録は残さなかったものの、大衆に受け入れてもらうことをボウイが意識していたことを証明している。(そしてこちらもアルバムに収録されなかったA面トラック「The Laughing Gnome」は、若い頃に影響を受けたアンソニー・ニューリーへの親しみを表す曲で、永続的にファンの人気を保っている)。

「We Are Hungry Men」でボウイは救世主の役割を引き継ぎ(聞き覚えがあるのでは?)、世界人口が危険な位置にまで達して人々が共食いをする危険があると歌っている。それはディストピアをテーマとし、特に『The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars』のオープニング・トラック「Five Years」や、『1984』(*訳注:ジョージ・オーウェルの作品。ボウイはこの作品のミュージカル化をめざした)の影響を受けた『Diamond Dogs(邦題:ダイアモンドの犬)』のB面トラックの殆どもそうである。その一方で屈しないベースと異性の服を着る主人公が特徴の「She’s Got Medals(邦題:勲章をもらった女)」は、正に『Hunky Dory』の「Queen Bitch」の先駆けであり、性別を超えたボウイの作品到来を告げている。

デラックス・リイシュー版では、ボウイの凄まじかった70年代と同様に、キャリア初期からすでに多作だったことを証明している。多数のボーナス・トラックを通じて60年代後半に作られた曲が紹介され、その中には次のLPでボウイが探索するフォーク・ロックの最初の冒険を象徴する「Let Me Sleep Beside You」が含まれている。

チャートでの成績(UKで125位にランクイン)は、恐らくファンの心を奪ったザ・ビートルズの作品『Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band』と同じ日にリリースされたことが影響を受けたのだろう。しかしその頃にはボウイはすでに、そしていつものように、次の段階へと進んでいた。1967年12月から1968年5月までのBBCセッションにて、ボウイは新しいLP用の作品を完成させていた。1969年の夏にリリースされた『Space Oddity』によって彼のキャリアは正に打ち上げられた。

Written By Jason Draper



 デヴィッド・ボウイ『David Bowie』

     

Share this story

Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了