ガンズ・アンド・ローゼズ「November Rain」はいかにして最も偉大なロック・バラードになったか?

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Photo: Michael Putland/Getty Images

白い小さなチャペル、大掛かりなプロモーション・ビデオ、曲の終わりのむせぶようなギター・ソロ。 「November Rain」と聞けば、そんなものを思い出されるだろう。情熱的なヴォーカルが印象的な同曲は、ヒット・シングルとして屈指の長い演奏時間を誇り、ガンズ・アンド・ローゼズの最も野心的な試みでもあった。今や同曲はロック史に残る最高のバラードに数えられる。

この曲が発表されたのは1991年9月の『Use Your Illusion I』に収録されてのことだったが、アクセル・ローズが「November Rain」を書いたのはその10年ほど前のことだった。アクセルの元バンドメイトでLAガンズのギタリストだったトレイシー・ガンズは、アクセルが1983年に同曲の作曲に着手したと回想している。『Appetite For Destruction』スーパー・デラックス・エディションの発売で、同曲がガンズ・アンド・ローゼズの扇動的な同デビュー・アルバムに収録される可能性があったことも明らかになった。

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「November Rain」 ピアノ・デモ

1986年にサウンド・シティ・スタジオで行われた『Appetite For Destruction』収録曲のレコーディングで、「November Rain」のピアノ・デモが作られている。10分に及ぶデモで、アクセルは楽曲の枠組みとなるパートを演奏している。ピアノとヴォーカルだけの同デモは、荘厳なピアノのイントロから曲調の変わるアウトロまで、すでに後の完成版「November Rain」としての形を成している。

ただ、ストリングスやスラッシュの腕が光るギター・ソロがないだけだ。バック・コーラスはすでに入っており、アクセルの気迫がこもったリード・ヴォーカルを彩っている。最終ヴァージョンのヴォーカルは、アクセルのキャリアでも最も感情的な名演のひとつである。

 

「November Rain」 アコースティック・デモ

同曲には、ずっと短い約5分のアコースティック・ギターによるデモも存在している。どうやら、アコースティックでの仮ヴァージョンは初期のギグでも披露されていたようだ。1986年のサウンド・シティでの同デモは、指弾きのギターと柔らかいパーカッションを中心に進んでいく。そこへアクセルのヴォーカルが入り、彼はときおり”I just keep on walking”というパートを繰り返し歌う。

このヴァージョンは静かな終わり方になっているが、ふたつを比較すると、明らかに「November Rain」はピアノ向きの曲といえるだろう。

 

『Use Your Illusion I』収録ヴァージョン

5年のときを経て、骨の折れるレコーディングの末、「November Rain」はようやく日の目を見ることとなる。1991年9月17日に発売された『Use Your Illusion I』の中核を担う楽曲として収録されたのだ。1992年2月18日には、同アルバムから3枚目にして最後のシングルとしてもリリースされている。

シングルとしては米チャート3位、イギリスのチャートでも4位を獲得。バンドにとっては「Sweet Child O’ Mine」以来のヒット曲となった。米チャートの歴史で最も長尺の楽曲となった同曲は、オーストラリアのチャートでも22週間に亘りトップ10入りを果たしている。

8分58秒の演奏時間を誇る「November Rain」の最終ヴァージョンは、1986年のピアノ・デモとほとんど同じ構成になっている。しかしバンド全体の演奏になったことで楽曲が完成し、アクセル自身が手がけたストリングス・アレンジも楽曲に華をそえている。こうして「November Rain」はようやく出来上がった。アクセルの情熱的なヴォーカルは彼のキャリアでもベストのひとつといえるだろう。一方で6分48秒からの曲調転換部分も、7分9秒から入るスラッシュの名ギター・ソロを含め、同曲を実に壮大なものに仕上げている。

 

プロモーション・ビデオ

壮大な「November Rain」だが、ビデオがその壮大さをさらに高めている。

プロモーション・ビデオというよりショート・ムービーに近い同ビデオは、「Don’t Cry」「Estranged」、そして「November Rain」のビデオから成る3部作の中編に位置付けられる。スーパーモデルでアクセルの当時の恋人だったステファニー・シーモアが出演したビデオは、「Don’t Cry」のビデオの続きになっている。「Don’t Cry」ではシーモアがアクセルの自殺を止め、今度はふたりが結婚するのだ。

悲運な結婚式のシーンから始まり(スラッシュのギター・ソロはニュー・メキシコの砂漠地帯にある教会で撮影された)、バンドが集まるのはロサンゼルスのサンセット・ストリップにあるレインボー・バー・アンド・グリル、ライヴのシーンにはニューヨークのザ・リッツが使われた。このビデオは短編集『The Language Of Fear』を著した記者で作家のデル・ジェイムスの短編小説「Without You」を基にしている。

総予算100万ドル(約1億円)が投じられた「November Rain」のビデオは、数多いプロモーション・ビデオの中でも屈指に大掛かりなものだったといえる。ブレイクのきっかけとなった「Welcome To The Jungle」ほどの影響力はなかったものの、「November Rain」はリリース時、すぐにMTVで最もリクエストされたビデオとなった。2019年7月14日には、YouTubeの再生回数が10億回を突破。楽曲を語る上でなくてはならないひとつの要素として、このプロモーション・ビデオは、「November Rain」がガンズ・アンド・ローゼズの代表曲となり、またロック史上最高のバラードとなる上で重要な役割を果たしたのだった。

Written By Jason Draper


ガンズ・アンド・ローゼズ『Use Your Illusion I And II』(Super Deluxe Edition)
2022年11月11日発売
日本盤:7CD + Blu-ray / I – 2CD / II – 2CD / I- CD / II – CD
輸入盤:12LP + Blu-ray / 4LPI- 2LP / II – 2LP /
iTunes Store / Apple Music / Amazon Music



 

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