ナイン・インチ・ネイルズ『With Teeth』: 薬物依存症とそこからの回復が歌われた作品
ナイン・インチ・ネイルズ(以下NIN)のファンは、ずいぶんと待ちぼうけを食らったのかもしれない。3枚目のスタジオ・アルバム『Fragile』(1999年)から4枚目のアルバム『With Teeth』(2005年)まで5年半も待たされたのだから。しかしそれだけ長い期間が空いても、『With Teeth』は前作に続いてチャートの首位を獲得している。トレント・レズナーとアラン・ムルダーがプロデュースしたこのアルバムは、2005年5月21日に全米アルバム・チャート初登場1位を記録した。
『With Teeth』は発売第1週にアメリカで27万枚以上を売り上げた。前作の発売第1週の売り上げ枚数は22万8,000枚というかなりの数字だったが、それをさらに大きく上回る結果になった。このアルバムは、リーダー/ソングライターであるトレント・レズナーの制作中のプライベートな状況を映し出したものになっていた。テーマとして採り上げられたのは、薬物依存症とそこからの回復。その世界観でまたもや、NINの熱烈なファンの心を捕らえることになった。
「The Hand That Feeds」は、アルバムの冒頭を飾る強力な1曲目。この曲は全英チャートのトップ10、全米チャートのトップ40にいきなり初登場した。ビルボード誌のモダン・ロック・トラックス・チャートでは1位に到達。このチャートでは第2弾シングル「Only」と第3弾シングル「Every Day Is Exactly The Same」も1位になっている。
『With Teeth』はレコード評でもおおむね好評だった。たとえばオンライン・マガジンのスタイラスは、「最新のサウンドでありながら、既にクラシックになりそうな雰囲気を漂わせたアルバム」と形容。またE! Onlineは「ダークで恐ろしい偏執的なパンチが聴く者の腹を直撃する」と評し、ニューヨーク・タイムズは「ほぼすべての曲が苛立ちで爆発している」と書いていた。
一方、エンターテインメント・ウィークリー誌は、次のような皮肉っぽい評を載せている。「レズナーはNINのアルバム制作中にアーティストとして何らかの苦悩を抱えていたのかもしれない。それがたとえ拷問のような苦悩だったとしても、完成したアルバムは聴き手にとって拷問のような作品になるべきではない。そこのところを、彼はようやく理解したようだ」。
Written By Paul Sexton
ナイン・インチ・ネイルズ『With Teeth』
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