1988年「ロックの殿堂」授賞式におけるザ・ビートルズの紹介役、ミック・ジャガーのスピーチ

Published on

YouTube: Rock & Roll Hall of Fame / Mick Jagger Inducts The Beatles into the Rock & Roll Hall of Fame | 1988 Induction

ザ・ビートルズ(The Beatles)が、“最後のビートルズ・ソング”「Now And Then」、そして1973年に発売された2つのベストアルバム『The Beatles 1962-1966』(通称:赤盤)と『The Beatles 1967-1970』(通称:青盤)の2023年ヴァージョンをリリースすることが発表となった。

この発売を記念して、ザ・ビートルズやザ・ビートルズのメンバーが“ロックの殿堂入り”を果たした際の授賞式でのスピーチの翻訳を連続してご紹介。

本記事では、ザ・ビートルズがロックの殿堂入りを果たした1988年の授賞式におけるザ・ビートルズの紹介役、当時45歳のミック・ジャガーによるユーモアとリスペクトに溢れた友人たちへのスピーチをお届けする。

<関連記事>
最後のビートルズ・ソングと“赤盤/青盤”の2023年版が発売決定
ストーンズが語った新作の制作、チャーリーとビル、そして次なる新作


 

今夜、この会場に着いてジョージと会いました。彼は「僕の悪口を言うつもりじゃないだろうな?」って言うんです(会場笑い)。今、悪口を言おうと思っても、何も思いつきません。というのも、ザ・ビートルズが楽曲をレコーディングし始めたばかりのころ、イングランドは不毛の地だったからです。誇張ではありません。ポップ・ミュージックに関する限り、当時のイングランドからはまだ何一つ生まれていなかったのです。

あのころのイングランドで生まれた大ヒット曲と言えば、アッカー・ビルクの「Stranger On The Shore (白い渚のブルース)」とかその類のものでした。あの曲は当時のイングランド国民の気持ちをよく反映しています。それから、ケニー・ボールの「Midnight In Moscow (モスクワの夜はふけて)」なんて曲も私たちの記憶に残っています。

そのころ、ストーンズはロンドンの小さなクラブで、チャック・ベリーの曲やブルース・ナンバーなどを演奏していました。私たちはそれを心から楽しんでいたんです。私たちの身なりはみすぼらしいものでしたが、それでも自分たちのことを個性的な獣だと思っていました。私たちのような輩はほかにいませんでしたから。

そしてそんなとき、リヴァプール出身のグループの噂を耳にしたんです。他のみんなはサイオセットやレヴィットタウンの話をしていますが、今度はリヴァプールの話です。とにかく……そのグループはみんな髪が長くて、服装はみすぼらしくて、それでもレコーディング契約を交わしているってことでした(会場笑い)。しかも、ブルージーなハーモニカを取り入れた「Love Me Do」という曲をヒット・チャートに送り込んでいると。そんな話を聞いて、私は気分が悪くなりました(会場笑い)。

それから少し経ったあるとき、私たちはリッチモンドの小さなクラブのステージに立ちました。そして演奏している最中に、突然彼らが私の目の前に現れたんです ―― そう、”ファブ・フォー”の面々です(会場笑い)。

ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ。彼らは四つの頭を持ったモンスターのような存在です。四人でバンドを組んでいなかったらこれほど成功することはなかったでしょう。そのとき彼らは、丈が長く美しい、黒い革製のトレンチ・コートを着ていました。それをどうしても手に入れたくなった私は、そのために作曲を勉強しなくてはならないとしても、あんなコートを買えるようになろうと決意しました。

その後、彼らが提供してくれた曲は、私たちにとってイングランドで初めてのヒット曲になりました。それが、彼らが書いた「I Want To Be Your Man (彼氏になりたい)」という曲でした。

そのことに関して、彼らには本当に感謝しています。あの曲のおかげで、私たちはイングランドでブレイクを果たすことができたのですから。また同時に、私たちは、彼らの作曲方法や、その独創的な曲作りから多くを学びました。そうこうするうちに、彼らはアメリカで成功を収めました。そのときも彼らは、イングランドのほかのグループがそれに続くための道を切り拓いてくれました。それらはすべて、彼らのおかげなのです。

初期のころに一つだけ、どうしても有り難いとは思えないことがありました。ニューヨークを訪れるたびに、街ゆく人に「なあ、お前はビートルズのメンバーか? さもなければ女だろう」なんて調子で絡まれるのです。まあそのうちに、私もうまく受け流せるようになりましたが(会場笑い)。

初めのころには、お互いにライバル関係というか、ちょっとした緊張関係というか、おかしな関係だったこともありました。けれどもそうした時期を乗り越えて、私たちは友人同士になれましたし、今でもそうだと思いたいです。一緒に切磋琢磨した時代は、私たちの人生におけるハイライトの一つです。彼らを「ロックの殿堂」に迎え入れるこの役目を担えることを、私は心から誇りに思います。


『ザ・ビートルズ 1962年~1966年』(赤盤) 2023エディション

予約はこちら
全曲ミックス音源。追加トラック12曲


『ザ・ビートルズ 1967年~1970年』(青盤) 2023エディション

予約はこちら
全曲ミックス音源。追加トラック「ナウ・アンド・ゼン」を含む9曲



ザ・ローリング・ストーンズ『Hackney Diamonds』

2023年10月20日発売
 デジパック仕様CD
 ジュエルケース仕様CD
 CD+Blu-ray Audio ボックス・セット
 直輸入仕様LP
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music



Share this story

Don't Miss

{"vars":{"account":"UA-90870517-1"},"triggers":{"trackPageview":{"on":"visible","request":"pageview"}}}
モバイルバージョンを終了