スターが数多く参加したポール・マッカートニーの82年の作品『Tug Of War』

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1982年の春、ポール・マッカートニーがニュー・アルバムを出したのは、ある意味ではいつも通りのことだった。しかし同時に、これは新しい時代の幕開けでもあった。1980年に『McCartney II』が出た段階では、ウイングスはまだ名目上は存在していたが、1982年になると、ウイングスがまた動き出しそうだという幻想を抱く人はひとりもいなかった。そしてこの『Tug Of War』で、ポールのソロ活動は新たなスタートを切ることになった。

このアルバムでは、長年のファンにとってエキサイティングな顔合わせが実現している。ここでポールが組んだプロデューサーは、かつて一緒に最高の偉業を成し遂げた人物、ジョージ・マーティンだった。このアルバムはジョン・レノン射殺という悲劇のあとで制作が始まった。その収録曲の中には、亡き友人に捧げた痛切な作品「Here Today」も含まれていた。

このアルバムから最初にシングル・カットされたのは、スティーヴィー・ワンダーとデュエットした実に魅力的な曲「Ebony and Ivory」だった。この先行シングルが大ヒットしたことで、『Tug Of War』は考えられる限り最高のスタートを切った。「Ebony and Ivory」は全英シングル・チャートで3週間連続1位。その最後の週となった1982年5月8日のチャートではアルバムそのものも初登場1位を記録し、ポールはふたつのチャートの首位を制した。またこのアルバムは、発売1週目でシルバー・ディスクとゴールド・ディスクの両方を獲得している。

前作『McCartney II』ではポールがすべての楽器をひとりで演奏していたが、この『Tug Of War』はそうした手法からはるかに遠ざかっていた。ここにはゲスト・ミュージシャンが大勢参加している。たとえば前述のスティーヴィーもそのひとり。さらに「Ebony and Ivory」に続いてヒットした「Take It Away」では、リンゴ・スターがドラムスを叩いている。この曲は、ザ・ビートルズの「Got To Get You Into Life」を思わせる楽しいホーン・サウンドで仕上げられていた。

一方「Get It」には、ポールの憧れの的だったロックン・ロールの創始者のひとり、カール・パーキンスが参加。ロックン・ロール全盛期を彷彿とさせるサウンドをさらに盛り立てている。またウイングス時代の仲間デニー・レインも健在だったし、バック・コーラスにはリンダ・マッカートニーも顔を見せた。さらには、10ccのエリック・スチュワート、ロキシー・ミュージックのアンディ・マッケイ、フェアポート・コンヴェンションのデイヴ・マタックス、トップ・ジャズ・ミュージシャンであるスタンリー・クラークやスティーヴ・ガッドらも脇を固めている。

このアルバムは全英チャートで2週間連続1位を記録。このヒットのおかげもあり、ポールは翌年のブリット・アワードで2冠を達成している。『Tug Of War』はヨーロッパ各国でもチャートの1位に達したほか、5月末からは全米チャートでも3週間首位の座を守った。

Written By Paul Sexton



ポール・マッカートニー『Tug Of War』

   



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