マーヴィン・ゲイの名曲「Let’s Get It On」:「マーヴィンは神への祈りにすらセクシャルな響きを持たせてしまえるんだ」
名曲「Let’s Get It On」の共作者であり、共同プロデューサーでもあるエド・タウンゼントによれば、この曲は、プライベートな問題の解消、麻薬中毒の克服、そして人生の背負い方、そうした意味のあった作品だという。とはいえ彼には、「Let’s Get It On」が彼の友人でありコラボレーターであるマーヴィン・ゲイによってどう仕上げられるかの予想は十分できていた。「マーヴィンは神への祈りにすらセクシャルな響きを持たせてしまえるんだ」。
今から42年前の1973年7月14日、史上最強に艶っぽいレコードの一枚でありベッドルーム・ソウルの定番である作品が、ビルボードのポップス・ヒット・チャートとR&Bヒット・チャートの両方に初めて登場した。当時既に11年目に入ろうかというキャリアを持っていた彼にとっては45作目のポップ・チャート入りとなり、やがては天下無敵のキャリアを誇る彼の作品群の中でも最も愛されることになった曲だ。「Let’s Get It On」は、モータウンが1970年代に入って最初の4年間に手に入れた15のポップ・チャート入りを果たした曲のうちの1曲である。
アルバム『Let’s Get It On』のオリジナル盤のスリーヴ・ノートから、マーヴィン自身がこの曲の内容について全く心配していなかったことがわかる。「お互い求め合うセックスのどこに問題があるのかわからない。大げさに騒ぎ過ぎだと思う」。
シングルは全米シングルチャートで74位、そしてホット・ソウル・シングルズでは79位で初登場した。フィリー・ソウルが幅を利かせていた当時だが、「Plastic Man」をR&Bトップ・テン入りさせたテンプテーションズや「Touch Me In The Morning」で猛烈な急上昇を見せるダイアナ・ロスなどのタムラ・レーベルのマーヴィン・ゲイの盟友達の活躍によって、モータウンは依然として強烈なパンチを繰り出していた。
しかしながらマーヴィン・ゲイのサウンドは彼にしか出せないものだった。ポップスとR&Bの両方のヒット・チャートで1位を獲得した「Let’s Get It On」は、ポップ・チャートには2週間、そしてR&Bチャートにはなんと6週間もその座に居座り続けた。彼個人としてはわずかに2作目のポップ・チャートで1位を記録した曲(1曲目は「I Heard It Through The Grapevine(悲しいうわさ)」)であったが、このおかげでベストセラーとなった彼のソウル・ナンバーの合計は堂々10作品になった。
「Let’s Get It On」のグルーヴはまさに病みつきになるもので、同アルバムには続編もしくは再登場といった形の曲「Keep Getting On」も収められている。レコーディングは、1973年5月にモータウンのヒッツヴィル・ウェスト・スタジオで、ホーン奏者のプラス・ジョンソン&アーニー・ワッツ、クルセイダーズからジョー・サンプルとウィルトン・フェルダーの2名、といった著名なミュージシャン達も参加して行われた。マーヴィン自身もピアノを弾いている。
共同プロデューサーでもあるエド・タウンゼントはこう記している。「これまで多くの素晴らしいヴォーカリスト達と仕事をすることができた幸運な私だが、マーヴィン・ゲイだけは別格だ。曲の本質を掴んで解釈する歌い手の能力に圧倒されるという経験は、あの“Let’s Get It On”のセッションが初めてだった」。
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