マーヴィン・ゲイ生前最後のヒット・シングル「Sexual Healing」
1982年10月30日、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の「Sexual Healing」が全米シングル・チャート入りした時、彼はこの曲が将来的にミリオンセラーになることを知る由もなかった。それから1年半も経たないうちにマーヴィン・ゲイはこの世を去り、その後30年近く彼の名前が全米シングル・チャートに登場することはなかったのだ。しかし、1982年当時、全米のポップ・リスナーが「Sexual Healing」で熱烈な情事を始めていたのだ。
<関連記事>
・『What’s Going On』解説:表舞台から遠ざかり母国を憂いたソウルフルな世界
・マーヴィン・ゲイの生涯:彼はいかにして真のソウルアーティストになったのか
マーヴィン・ゲイが20年以上にわたるモータウンとの契約を終えてコロムビアに移籍した最初のヒット曲である「Sexual Healing」は、その2週間前にR&Bチャートにランクインし、10週連続1位という大記録を打ち立てた。ポップ系ラジオ番組制作者は、当初マーヴィン・ゲイとジャズ・オルガン奏者のオデル・ブラウンが共作したこの曲のきわどい内容にためらいを持っていたかもしれないが、それはすぐに払拭された。
「Sexual Healing」は全米シングル・チャートで78位に初登場し、時を同じくしてモータウンからリリースされたシャーリーンとスティーヴィー・ワンダーのコラボ曲「Used To Be」の2つ下にいたが、「Used To Be」は最高46位留まりとなり、当初の期待には応えられなかった。同週リリースされた新曲の最高位は、スーパートランプの「It’s Raining Again」で31位だった。
「Sexual Healing」はその後じわじわとチャートを上昇し、1983年の1月下旬から2月上旬にかけて3週連続で全米3位を記録。カナダとニュージーランドでは首位を獲得した他、UK、オランダ、そして意外にも彼が1980年代前半にしばらく拠点を置いていたベルギーでもトップ5入りを果たした。
「Sexual Healing」はグラミー賞の最優秀R&B男性ヴォーカル賞に輝き、その中毒性の高いグルーヴから、B面の「Sexual Healing」のインストヴァージョンも最優秀R&Bインストゥルメンタル賞を受賞するほどだった。
以降もこの曲は世界中に広まり、ベン・ハーパー、マックス・ア・ミリオン、そして最も意外だったのはケイト・ブッシュといったアーティストによるカヴァー・ヴァージョンを生み出した。デイヴィ・スピラーンがイリアン・パイプスで参加したケイトのカヴァーは、1994年のシングル「King Of The Mountain」のB面に収録されている。
Written By Paul Sexton
- マーヴィン・ゲイ アーティスト・ページ
- マーヴィン・ゲイ 関連記事
- マーヴィン・ゲイ『What’s Going On』に詩人がおくるエッセイ
- モータウン・レコードがキング牧師の名演説「I Have A Dream」をレコード化した経緯
- マーヴィン・ゲイ1972年の未発表アルバム『You’re The Man』が発売
- マーヴィン・ゲイの生涯を辿る:彼はいかにして真のソウルアーティストになったのか
- モータウンと社会問題:政治やプロテスト・ソングと人々が自由になるための手助け
- マーヴィン・ゲイとタミー・テレルの見事なデュエット「Your Precious Love」
- マーヴィン・ゲイの20曲:史上最もソウルフルなアーティスト