ひときわ官能的なレコードのひとつ、マーヴィン・ゲイの「Let’s Get It On」
1973年9月8日、長いチャートの歴史の中でもひときわ官能的なレコードのひとつ、マーヴィン・ゲイの「Let’s Get It On」が全米チャートの首位を獲得した。マーヴィン・ゲイはシングルを3枚連続で全米ポップ・チャートの首位に送り込むという快挙を成し遂げたが、これはそのうち2枚目にあたる。しかしこの曲は、そのテーマ(*セックスがテーマ)ゆえに当時のリスナーを大変当惑させた。
1973年9月8日付けのBillboard誌で、「Let’s Get It On」はストーリーズの「Brother Louie」から首位を奪った。この翌週、マーヴィン・ゲイはヘレン・レディの「Delta Dawn」にその座を譲ったが、さらに次の週には再びトップに返り咲いている。
この曲はマーヴィン・ゲイとエド・タウンゼントが共作・プロデュースした作品だった。のちにエド・タウンゼントは、この歌詞のテーマはもともとセックスではなく、依存症を克服することや人生を前向きに生きていくことにあったと主張している。しかしマーヴィン・ゲイは、アルバム『Let’s Get It On』のジャケット解説で曲のテーマを明快に述べていた。「お互いの同意があるセックスなら、問題があるようには思えない」(このアルバムも全米チャートの2位に到達している)。
「Let’s Get It On」のグルーヴは実に魅惑的だったため、同名のアルバム『Let’s Get It On』の収録曲「Keep Gettin’ It On」でもそのグルーヴが再登場している。レコーディングは、1973年3月にモータウンのヒッツヴィル・ウェスト・スタジオで行われ、バックにはプラス・ジョンソンやアーニー・ワッツ、さらにはクルセイダーズのジョー・サンプルやウィルトン・フェルダーといった豪華な顔ぶれが参加している。またマーヴィン・ゲイ自身もピアノの演奏をこなしていた。
1960年代からマーヴィン・ゲイの知り合いだったエド・タウンゼントは、2001年の『Let’s Get It On』デラックス・エディションの解説で次のように書いている。「これまで私は、幸運なことに偉大な歌手とたくさん仕事をすることができた。しかしマーヴィン・ゲイを超える歌手には出会ったことがない。『Let’s Get It On』のレコーディングのとき、私は初めて、歌手が曲の真の意味を理解し解釈するときの力というものに圧倒されることになった」。
Written by Paul Sexton
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マーヴィン・ゲイ『Let’s Get It On』