ジョナス・ブルー「ベストヒットUSA」インタビュー:一番影響を受けたのは「Billie Jean」の冒頭のドラム・ビート
小林克也氏がMCを務め1981年テレビ朝日で始まり今も最新のヒットや名曲などを紹介し続ける音楽番組「ベストヒットUSA」。現在は毎週金曜日24時からBS朝日で放送されているこの番組に登場するアーティストたちのインタビュー「STAR OF THE WEEK」を放送前に少しご紹介。
2019年9月20日(金)深夜24時〜放送「ベストヒットUSA」の「STAR OF THE WEEK」には、UKの人気DJ/プロデューサー、ジョナス・ブルーが登場!清涼感溢れる美しいメロディとトロピカルなサウンドで、新世代のリゾート・ミュージックとも称されるトロピカルハウスシーンをリードする彼が、独自の音楽制作理論を語ります。そんなインタビューの模様を番組オンエアに先駆けて、その一部をご紹介。
大ヒット曲「RISE feat. Jack & Jack」は、思いがけない出来事から生まれた。
―「Rise」はどのような曲ですか?
「Rise」は去年L.A.にいた時にできた曲だよ。当時、僕はニュー・シングルの準備でロサンゼルスにいて、いつもどおりUberに乗っていたんだ。多分ビーチかスタジオセッションの帰りに、車内のラジオで2人の青年のインタビューを聞いたんだ。どんな音楽をやってるのかもシンガーなのかも知らなかったけど、とても面白い話をしていた。2人はVineというプラットフォームを通じて大成功を収めたんだけど、そんなVineはすでに終了していた。でも自分たちは若いファンにとってアイドルであり、力を与える存在なんだと話していた。同時に今の若者たちが夢を砕かれ将来に希望など持っていないことも話していて、いいことを言っていると思ったんだ。
そして、ふと自分がこれまでに作った曲を振り返してみると、ポジティブでハッピーな曲ばかりだったんだよね。それで突然彼らのストーリーを曲に取り入れ、若者を力づけるアンセムを作りたいと思ったんだ。そのあと、ラジオで話していた2人、ジャック&ジャック(Jack & Jack)をネットで調べたら、彼らが素晴らしいアーティストであることに驚いたよ。
それからコーチェラ・フェスティバルが終わった週末に、ロンドンに戻って「Rise」のトラックを作り始めた。携帯電話のメモに残していた“若者のためのアンセム”という言葉を見ながらね。
やっぱり歌ってもらうのはジャック&ジャックにしようと思って、彼らに曲を送り、こう言ったんだ。「いきなりで申し訳ないんだけど、先週、君たちのインタビューをL.A.で聞いたんだ。その話にインスパイされて書いた曲をぜひ歌ってくれないか」って。1週間後、僕たちはポルトガルにいて、ミュージックビデオを撮影してた。面白いよね。いい曲に仕上がったよ。
―番組でミュージック・ビデオを流すので、見所があったら教えてください。
ミュージック・ビデオには友達のグループが出てくるよ。言い方は悪いけれど、はみ出し者の集まりだ。社会から除け者にされている、親などから見放されている子たちなんだけど彼らは活躍したいと思ってる。ビデオの中では僕もそのグループの1人で、僕が夢を達成したところでミュージック・ビデオは終わる。大きなフェスでDJをするんだ。実際、毎週そのような場所でDJが出来て僕は恵まれているよ。ストーリー上では、まだ僕らは街を練り歩き、夢をかなえようと頑張っている。そして最後には夢を叶えて大きなフェスに出演を果たすんだ。
―ビデオは歌詞の内容をなぞっているわけですね?
そうなんだ。若者を元気づけることがテーマだから。僕は若者をインスパイアすることができる。ビデオもそういう内容だよ。最後のパートは、友達みんなで思い切り楽しんでいるんだ。
―どのような音楽を聴いて育ちましたか?
いろいろなソウルを聴いて育った。ポップスや中東の音楽もたくさん聴いた。生まれ育った家ではそういう音楽が流れていたんだ。それが今の自分に大きな影響を与えていると思う。トラックや演奏の細かいところ、たとえばキーボードのどの音色を選ぶか?みたいなところに、中東の弦楽器の影響が出たりして、曲作りには幼い時に両親が聴いていた音楽の影響が出てるよ。バリー・ホワイト、アル・グリーン、ルーサー・ヴァンドロス、ABBA、マイケル・ジャクソン、そういう音楽がいつも家で流れていたからね。彼らの曲が僕の今のソングライティングに多大な影響を与えているんだ。今でも聴いているけどね。
― 一番影響を受けたのは誰ですか?
いちばん最初の記憶は、マイケル・ジャクソンの「Billie Jean」を聴いたことなんだ。父が『Thriller』のアルバムを持っていたんだけど、特に覚えているのは「Billie Jean」の冒頭のドラム・ビートだ。それが将来の自分にインパクトを与えるなんて思いもしていなかった。当時はただ曲を聴くのを楽しんでいただけだ。でも、あのレコードは、エレクトロ・ダンス・ミュージックの先駆けとなったよね。まさに史上最強のアイコニックなドラムビートで始まる曲だよ。頭のドラムビートのところからかければ、みんながすぐになんの曲かわかる。それってすごいことだ。僕はそのことを自分の曲作りにも活かしているんだ。
SpotifyであろうとApple Musicであろうと、プレイボタンを押したらすぐに何の曲だかわかる。10秒、15秒、30秒待つ必要はない。すぐさま何の曲だかわかる。「Billie Jean」からはそれを学んだね。「Rise」のインスピレーションにもなっているんだよ。「Billie Jean」のドラムビートや最初のベースラインを聴くと、「Rise」にコンセプトが似ていることがわかるはずだ。キックドラムとベースラインが似ていてインスパイアされている。最初の記憶はそれだ。僕の音感を変えた曲だった。それが最初の記憶だし影響を受けた理由でもあるよ。
コラボレーションしたいアーティストのリスト、トップはショーン・メンデス
―時代の流行に合わせてサウンドを変えていますか?
もちろん!名曲は名曲、時がたっても色褪せないし、名曲はしかるべくして生まれる。だけどプロダクションは日々変化していて、新しいスタイルがどんどん出てくる。僕の曲の多く、特に「Rise」はクラブでかけるような曲で、ピークタイムにかけたい曲なんだ。曲そのものは、僕が小さな頃から聴いていたマイケル・ジャクソンやバリー・ホワイト、アル・グリーンを彷彿とさせる。
―今はDJ/プロデューサーが主流の時代ですが、今後プロデュースしてみたいアーティストは?
そうだね、もう数年同じことを言いつづけているけど、ショーン・メンデスはリストの筆頭にくるね。1曲やってほしくて、一生懸命働きかけているんだ。彼は真のアーティストだよ。多くの場合、僕は人に曲を書いて送り、彼らが歌う。しかしショーンのような人とは、一緒にスタジオに入ってジャム・セッションをして、いい曲を生み出したいんだ。他に誰がいるかな…DJだったら、カルヴィン・ハリスとコラボしたい。それができたら楽しいな。その2人かな。
―実現するとしたらDJのあなたは、ショーン・メンデスとどんな風にジャム・セッションするのですか?
曲作りをコンピュータで始めることはないよ。僕の曲作りはいつもピアノから始まるから。「Rise」も「Mama」も「Perfect Strangers」もメロディーは僕がピアノで作った。それが曲作りの始まりなんだ。だから、ショーン・メンデスみたいな人とやるなら、彼にギターを弾いてもらうところから始めるかな。メロディーをハミングしてもらい、すてきなコード進行を作ってもらう。
僕はまるでディレクターのようにそれを聴いて、特によい部分を抽出し、コンピュータに取り込む。そして曲の骨格を作って肉付けをしていく。それができたら最高。
なぜなら、僕の曲は、いつも僕のピアノから始まる。でもショーンとやれば、彼のギターから始まることになる。僕じゃなくて、彼の視点がトラックに生かされることになるから、楽しいコラボになるだろうね。エド・シーランとやってもそうなるかな。彼も本物のミュージシャンだからね。
―曲作りに関して、スタジオに入った時にはどのような環境が必要ですか?
最近はあまり曲を書いてないけど、前は毎日スタジオで曲作りをしていたんだ。でも、僕にとっては、とても疲れるし退屈な作業だった。だから最近はシングルが必要になった時にマネジャーやレーベルの人から言ってもらってからスタジオに入ることにしている。それだとアイデアもたまっているから僕も楽しいよ。ツアーをしている間に浮かんだインスピレーションを携帯電話にためてあるんだ。それを全て曲作りにぶつければいい。
イギリスではよく“台所のシンクに投げ込む”という言い方をするんだけど、まさにすべてをシンクに投げ込むんだよ。(ツアーのあとだと)アイデアもどんどんわくよ。でも、曲作り自体はスタジオでないとできない。最近はずっとツアーをしているけど、僕が作るような音楽は旅の道中では作れないんだ。そういう風には出来ていないんだよ。
僕が共同で作業をするのは2人のソングライターだけだ。サムとエドと言うんだけど、僕たちはいつも一緒に曲を書いて、スタジオに入ってとにかく楽しむんだ。するとそのうちアイデアが出てくる。プレッシャーがかかるとどんどん曲が生まれてくる! 先週もスタジオに入っていたんだけど、最高の曲ができたから来年に発表するよ。とにかくスタジオにいないとダメなんだ。お互いのヴァイブを感じることも重要だ。そしてさっきも言ったように、ピアノの前に座らないとだめなんだ。曲の仕上げなどはツアー中でもできる。でも書き始めはクラシックなフォーマットでないと!
僕がピアノの前に座り、数人の友達がそこにいてセッションでアイデアを出す。そこから始まるんだ。僕の曲はすべてそうやって作ってきた。外部の曲を使ったことはない。誰かに送ってもらった曲を使ったことがないという意味だよ。全ての曲は僕が書いた。僕にとってはそれが重要なんだよ。
―フジロックのパフォーマンスでは、ビリー・アイリッシュやパニック・アット・ザ・ディスコなどのヒット曲をセットリストに取り入れていましたね。選曲のこだわりはどこにあるのですか?
まず、その国の人の心に響きやすい曲を探すんだ。それを自分のセットリストに取り入れる。そうすれば観客も楽しんで一緒に歌えるだろ?
―なぜ日本だとこの2曲だったですか?
その2組のアーティストがすごく成功していると友達に聞いたんだ。特にビリー・アイリッシュが。別の友達がビリー・アイリッシュとザ・ホワイト・ストライプスの「Seven Nation Army」のすごくクールなマッシュアップを送ってくれた。それが絶対にうけると思ったからセットリストに取り入れたよ。
―最後に、ジョナス・ブルーの音楽を短い言葉で言い表すと?
「メロディック」、「タイムレス」、それと「ダンス・ミュージック」だね。
―それをふまえて、DJとして“一番大切な要素やフレーバー”はあなたにとって何ですか?
ズバリ「メロディ」だよ。それと「オーディエンスの心を読む力」。それがあるから、会場のムードを変えることができる。僕の音楽はとてもポジティブだ。みんなを笑顔にして一緒に歌ってもらえることが僕にとって重要なんだ!
ジョナス・ブルーのインタビューが登場するのは2019年9月20日(金)24時からBS朝日で放送の「ベストヒットUSA」
番組公式サイトはこちら
ジョナス・ブルー, HRVY – Younger
2019年9月6日配信
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