ジャネール・モネイによるジャネット・ジャクソンの“ロックの殿堂入り”祝福スピーチ全文
2022年8月24日にジャネット・ジャクソンの日本盤シングルとMVを収録したベスト盤『ジャパニーズ・シングル・コレクション-グレイテスト・ヒッツ-』が発売となる。
このアルバム発売を記念して、2019年に行われたロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)受賞時に歌手、作曲家、音楽プロデューサー、俳優として活躍するジャネール・モネイ(Janelle Monáe)による祝福スピーチを全文掲載。
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こんばんは。今夜、わたしがここに立っているのは、”Black Girl Magic”の精神を象徴する伝説的な歌姫によるロックの殿堂入りを祝福するためです。その方とは、ミス・ジャネット・ダミタ・ジョー・ジャクソンです。
彼女は我々の勇敢なリーダーであり、音楽史上屈指の売上を誇る人気アーティストでもあります。グラミー賞に5度輝き、アカデミー賞へのノミネート経験もある彼女のアルバムの世界売上は、1億8千万枚を数えます。40年以上に亘る驚異的なキャリアを通じて9作ものアルバムでナンバー・ワンを獲得し、才能あるシンガー、ソングライター、プロデューサー、ダンサー、そして俳優として活躍してきた彼女は、アイコンと呼ぶべき象徴的な人物です。
大胆な発想力を持ち、既成概念を打破し、リスクを恐れず、ヴィジュアル面でもあらゆる壁を打ち壊してきました。端的に言えば、ジャネットは唯一無二の存在なのです。
初めて見たジャネット
初めて母がジャネット・ジャクソンのビデオを見せてくれたときのことを、わたしは今でも覚えています。わたしが目にしたのは、頭の上にアフロ・パフを作った才能溢れる少女で、彼女は煌びやかで自信に満ちていました。わたしや、世界中にたくさんいる黒人の少女たちと似た見た目の人がそんな風に活躍する姿は、とても新鮮に思えました。
キャリアを歩み始めたばかりのころから、彼女が他のスターたちと違っていることは明らかでした。そして彼女は、ジミー・ジャムやテリー・ルイスをはじめとする信頼できるコラボレーターと手を組んで、聴く人の心に残るサウンドを生み出してきたのです。
『Control』の衝撃
ジャネットが思い切って曲作りに挑戦した『Control』は、まるでビッグ・バンのような衝撃でした。その表題曲のイントロには、自分の声、自分の人生、自分の作品には自分で責任を持つという決意が表れていました。主体性を持ったパワフルな女性としてのジャネット誕生の瞬間だったのです。
また、「Nasty」「What Have You Done for Me Lately」「When I Think of You」といった楽曲には、レコード史を振り返っても特に女性らしくすばらしいメッセージが込められています。「The Pleasure Principle」のビデオでは、美しい彼女の表情とエネルギーだけで空の倉庫をいっぱいに満たしました。こんなことが出来るのはジャネットしかいませんよね。『Control』は音楽史においてもっとも重要な作品のひとつであり、そこで彼女は誰の言いなりにもならない姿勢を世界中に示したのです。
『Rhythm Nation 1814』が示したヴィジョン
『Control』が新世界を作り出したビッグ・バンだとすれば、『Rhythm Nation 1814』は、彼女の新世界における大胆なヴィジョンを提示したような作品でした。このアルバムは今年で30周年を迎えますが、今でも聴く人に影響を与え続けています。漆黒の衣装に身を包んだ彼女は、ここでマニフェストを表明しました。ここではそれを”ウーマニフェスト / womanifesto”と呼びましょう。それは、社会問題に高い関心を持つ若者たちが力を合わせれば、確かな変革をもたらせるという考え方です。
彼女は社会問題を扱った楽曲を書くアーティストのお手本になっただけでなく、「Alright」や「Miss You Much」「Escapade」といった楽曲は、細部まで振付を覚えたいと思わせてくれました。
ジャネットが他の誰とも異なる独自のカテゴリーを生み出したという点も忘れてはいけません。可愛くて、美しくて、質が高い。そのすべてが揃ってようやくジャネット・ジャクソンのレベルに達するのです。そうですよね?
ビーチでの気ままな様子が美しい「Love Will Never Do (Without You)」や壮大な名曲「Come Back to Me」、力強いロック・ナンバー「Black Cat」を聴けば、彼女の音楽性がいかなるジャンルにも縛られないことがわかります。自身の名前を冠したアルバム『janet.』では、さらに彼女自身の内面を掘り下げていきました。
そうしたアルバムに映し出されているのは、性の自由を謳歌し、誰にでもある美しい欠点を持った、ひとりの人間としての彼女の姿です。例えば「Together Again」は、HIVおよびエイズによりこの世を去った友人たちに捧げたものでした。ミス・ジャクソンは、ロックンロールやリズムを武器に、音楽を通して結束をもたらしてきました。どのアルバムでもリスクを恐れず、どの楽曲も新たな驚きに満ちていました。我々の文化に与えた影響は計り知れません。
肯定する自信を与えてくれた
わたしがここに立っているのは、あなたを7年も携帯の待ち受けにしていると世界中に発表するためではありませんが、それもまた事実です。その画面を見るたびにわたしは、やるべきことに集中して、恐れず芸術を探求することの大切さを思い出します。実は、わたしが最新アルバム『Dirty Computer』の曲作りをしていたとき、自分のすべてを肯定する自信をくれたのは、あなただったのです。
世界中の人びとが誰かと過ごすとき、そこにはサウンドトラックとしてあなたの音楽があります。女性たちの権利のために立ち上がったあなたをここに称えます。苦しむ人びとに元気をくれるあなたをここに称えます。LGBTQIA+のコミュニティをはじめ世界中の社会的少数者たちの心強い味方であるあなたをここに称えます。優れた作品のために妥協を許さないその姿勢に拍手を送ります。カプセルに入れて来世まで取っておきたいと願うほどの思い出をくれたあなたをここに称えます。ジャネット、あなたは歴史の一部なのです。
だから今夜、わたしたちはこうしてあなたへの敬意を示すため集まったのです。あなたは神様の創造物です。神様があなたに与えた才能をわたしたちに分け与えられるのは、あなただけです。みんなを代表して感謝します。それでは、ここからはあなたの時間です。会場のみなさん、立ち上がってください。席から立ち上がって、ミス・ジャネット・ジャクソンをロックの殿堂にお迎えしましょう!
ジャネット・ジャクソン『JANET JACKSON Japanese Singles Collection』
2022年8月24日発売
CD購入
2SHM-CD+1DVD(CD全38曲/DVD全44曲収録)
- ジャネット・ジャクソン アーティストページ
- ジャネット・ジャクソンの“ロックの殿堂”受賞スピーチ全文
- 【前半レビュー】ドキュメンタリー『ジャネット・ジャクソン 私の全て』
- ジャネットの日本盤シングルとMVを収録したベスト盤、8月に発売決定
- 『Rhythm Nation 1814』:制作中に90年代の‘国歌’になるかもと言った傑作
- 自身のジャンルや作詞、そして私生活を語ったジャネット2006年のインタビュー