クリーム時代をほうふつさせるジャック・ブルースの隠れた名盤『How’s Tricks』
ジャック・ブルースのソロ・キャリアには隠れた宝石がたくさんあり、1977年5月の全米アルバム・チャート登場したアルバム『How’s Tricks』にはそれがかなり含まれている。アルバムはソングライティングにおいてもプロダクションにおいても、彼のクリーム時代をほうふつとさせる作品だ。
ジャック・ブルース・バンドとクレジットされたこの作品は、ロック、ジャズ、ブルースの要素がフィーチャーされており、悲しげなオープニング・トラック「Without A Word」や、感動的な「Johnny B ’77」やスロウでグルーヴィーなタイトルトラックなど、本当に過小評価されがちな楽曲やヴォーカル・パフォーマンスがふんだんに含まれている。
10曲中1曲を除いたすべてが、ジャック・ブルースと長年の共作者ピート・ブラウンとのコラボレーションであり、アルバムは、10年以上前にリリースされたクリームの『Wheels Of Fire(邦題:クリームの素晴らしき世界)』のエンジニアであったビル・ハルヴァーソンによってプロデュースされている。他にも多くの功績があるが、ビル・ハルヴァーソン は1970年にリリースされたデラニー& ボニーの『On Tour With Eric Clapton』のミックスをしたり、同じく1970年にリリースされたエリック・クラプトンの名祖のソロ・デビュー・アルバムのエンジニアも務めている。
ジャックの新譜は当時の彼のバンド・メンバーにとっても、寛大な紹介となった。ギタリストのヒュー・バーンズは「Baby Jane」を書いただけでなく、その曲ではリード・ヴォーカルを務めている。また、彼はジャック・ブルース、ピート・ブラウンと共に、「Times」と「Lost Inside A Song」にもクレジットされている。
キーボード・プレイヤーのトニー・ハイマスは全体を通してフィーチャーされ(最後におかれた曲の魅力的なピアノのように)、「Something To Live For」をピート・ブラウンと共作している。ドラマーのサイモン・フィリップスは、アルバム発売時は20歳で、その後、ザ・フーや、TOTOそして、ジョン・アンダーソンからフィル・マンザネラまで様々なアーティストと共演する旅路の始まりの段階にあった。
「ブルースのヴォーカルは強力なブルース・ロック曲では、力強く、率直に、そしてより静かなロック曲では、甲高くすすり泣くように変化した」とBillboard誌はレヴューした。「ブルースのベースが楽器の焦点ではある一方で、相対的に知られていないバンドによるキックするようなギター・リフ、力強いキーボードとドラムはパンチとドライヴを加えていた」。
『How’s Tricks』はUKアルバム・チャート入りを逃すが、1977年5月7日に171位で全米アルバム・チャート入り、その後153位まであがり、5週チャート・インした。
アルバム『How’s Tricks』
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