メガデスの前作アルバム『Dystopia』発売直後のデイヴのインタビューを掲載
メガデス(Megadeth)が2022年9月2日にリリースするニュー・アルバム『The Sick, The Dying…And The Dead!』。この発売を記念して、2016年の前作アルバム『Dystopia』発売直後に行われたデイヴ・ムステインのインタビューを掲載します。
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80年代半ばのスラッシュ・メタルの爆発的なヒットで頭角を現して以来、メガデス(Megadeth)は侮れない存在であり続けている。5,000万枚以上のレコードを売り上げたメガデスの頭脳、デイヴ・ムステインは、これまで以上に集中し、どんな若手も凌駕する決意と飢えと情熱を持って前進しているように見える。
バンドの15枚目のスタジオ・アルバム『Dystopia』は、スラッシュ・メタルにおける傑作となった。uDiscoverはデイブ・ムステインに、アルバム制作のプロセス、バンドの現在のラインナップ、そして世界がバンドの中心である彼をどう見ているかについて話を聞いた。
新メンバーの加入
「メンバーの交代、義母の死、“Rust In Peace”ラインナップの再結成計画など、ここ2、3年の間、俺たちの中では多くの激動があったんだ」
と、ムステインは当時のラインナップを再結成する計画が頓挫したことに言及している。また今回からメガデスに、ブラジルを代表するメタル・バンド、アングラで名を馳せたブラジルの天才シュレッダー、キコ・ルーレイロと、プラチナ・セールスを記録した米バンド、ラム・オヴ・ゴッドのドラマー、クリス・アドラーが新たに加わった。
「キコとクリスが参加してくれて、新鮮な空気を届けてくれた。彼らは間違いなく、俺がこれまで一緒に演奏した中で最も才能あるミュージシャンのうちの2人だよ。あのレベルのミュージシャンが同時に演奏することは、恐ろしいほどの力を持っている。これまでのラインナップは、ギタリストが素晴らしくてもドラマーがOKとか、ドラマーが素晴らしくてもギタリストがOKとか、少なくとも一人は標準に達していないメンバーが必ずいた。しかし、今回、メンバーを一新し、両ポジションを優秀なミュージシャンで固めたことで、バンドの士気はもちろんのこと、ミュージシャンとしてのプロ意識、実力も向上したんだ。正直なところ、僕のギタープレイはキコが後押ししてくれたおかげで上達したと思っているよ」
スラッシュ・メタルによるギター・プレイの全アプローチを開拓したといっても過言ではないデイヴは、今も完璧を求め続けているようだ。アルバム『Dystopia』の曲の構成とエネルギーについて語るとき、彼の目は輝き、温かな微笑みが顔を覗かせる。
「このツアーのリハーサルを始めるまで、僕ら4人は同じ部屋で一緒に演奏したことがなかったんだ。今回の曲は、何人かが別の時間に別の場所で作曲し、レコーディングしたものだ。クリスがドラム・トラックを完成させると、次にキコが自分のパートを録音したが、実はデイヴ(・エレフソン)が最初に録音したんだ」
「俺はこの間、ライブをすることにどれだけ興奮しているかを誰かに話していたんだよ。カナダで1回、オーストラリアとインドで4回、ロシアで2回、そして最後のヨーロッパでの短い公演をやっただけだからね…そうそう俺ら全員が揃った最初のショウは、ケベックの8万人の前だったんだ!火の洗礼ってやつだな!」
メガデスが30年近く世界中でライヴをやっていることを考えると、ムステインにとってライヴ前の緊張は過去のものだと思うかもしれない。
「最初は新メンバーのことは心配だった。でも、俺は楽しい時間を過ごすつもりだったし、必要なら重い荷物を運ぶ準備もできていた、それがフロントマンとしての仕事だからな。でも、バンドメンバーはとてもプロフェッショナルで、仕事も素晴らしいし、何よりカリスマ性があった。この特殊な音楽ジャンルにいること、ましてやこのバンドにいることは、それを担わなければならないんだけど二人はやってのけたよ」
バンドの演奏とメロディー
メガデスの全アルバムで際立った特徴のひとつは、記憶に残りやすく心を揺さぶるコーラスと、スラッシュ・メタルというジャンルの中で最も技術的に驚異的なギター・アレンジを組み合わせるバンドの能力だ。その複雑さは多くの同業者を凌駕しており、ムステインはメガデスのレガシーである高い演奏水準を維持しながら、その境界線を押し広げ続けている。
「俺がそれに対処する方法は、マイケル・ジャクソンが“Thriller”を完成させた後、1000万枚売り上げたアルバムをもう1枚作ろうと苦労していたのと非常によく似ているかもね。彼は“Bad”をリリースしたが、そのアルバムは800万枚しか売れなかったから、みんな彼を笑っていたのを覚えているよ。でも、800万枚はすごいよ。凄い数字だろ!」
「メロディーは俺にとってとても重要なものなんだ。アストンマーティンでドライブしているときは、たいていジャズチャンネルを流しているか、自分たちの曲を聴いているんだ。いい車でクルージングして、ボンネットの下でちょっと馬力を出して、メガデスを聴く。保険にはよくないけど、物事を前向きにとらえるにはいい方法なんだ。俺は普段から『この曲は誰かの人生にどう響くのだろうか?どうしたら、選択肢がないように思える若者にどうやったら届くのか?』と考えている。壊れた家庭からやってきてホームレスになり、デイヴ・エレフソンと一緒に物乞いをしていたことは今の俺の一部になっているからね。こういうことは、他の人にとってははあまり覚えていないことだがね」
楽曲を書くことは、デイヴにとって明らかにカタルシスであり、厳しい時代に対処する方法であったと同時に、それらの経験を永遠に続くものに変換する方法でもある。
「俺はメロディーが大好きなんだ。目をつぶって聴いていると、その曲の世界に入り込んでしまう。昔はレコードを買ってきて、片面からずっと聴いていたのを覚えている。今は、人々はスキップボタンに手を伸ばし続けて集中力が短くなっている。だから、リスナーを惹きつけることに集中しなければならない」
「以前のアルバムでは、8曲程度しかなかったことがよくあっただろ。というのも、レコードのグルーヴを考慮しなければならなかったからね。レッド・ツェッペリンの“Black Dog”を聴くと、ロバート・プラントのボーカルが入るとき、なんとなくフェードアウトしているような感じで、突然すごく大きくなる。それは、あのレコードではグルーヴが近すぎたからだ。俺たちのアルバム“Distopia”は、15曲収録しているので、ほぼ2枚分のボリュームになるね……。音楽業界はこの数年で大きく変わり、今もなお速いスピードで変化し続けている。しかし、競争することと、リスナーの心をつかむことは別物だ」
現在のロックスター像
ロックスターのイメージも変わってきた。かつて音楽誌の表紙を飾り、世界中の親たちを震え上がらせたアイコンに比べれば、今の若い新人が、ムステインのように進み続けられるとは到底思えなくなった。その原動力について尋ねると、デイヴはこう答えた。
「信仰に基づくものもあるし、腹が立っていることから来るものもある。自分の価値を否定されることに耐えられる人は限られている。人がどう思うかというより、神がどう思うかだ。私は独学で学んだが、独学で学んだ者はタダ乗りなんてしない。俺はこの裏には何かがあり、自分に与えられた贈り物をファンと分かち合いたいんだ」
ムステインは「何時間も電話やネットで、会場の外やグリーティングでファンたちと会話をして、サインをして、自分たちは一人じゃないということを知ってもらう」ことに費やしていると語る。そして、ファンの家族や友人ほどには自分は対応できないことを認めつつも、「ただ、自分たちは一人ではないということを知ってほしいんだ」と主張する。
「俺は本当につらいことを乗り越えてきた。俺が乗り越えられるのなら、彼らも乗り越えられるのだと知ってほしいんだ。一番大切なのは、『In My Darkest Hour』のような歌に込められたメッセージだ。あの曲がこれほど多くの人の心を動かすとは思ってもみなかったよ」
今後10年ほどの間に、ヘヴィメタルの先駆者である偉大なバンドたちが引退する年を迎えるという、ヘヴィメタルにとって非常に奇妙で激動の時代に我々は突入している。新しい世代のバンドは、このジャンルを派手で誇り高いものにし続けるという難しい仕事を担うことになるが、ムステインは、サブジャンルが多くなることで、ジャンルそのものは希薄化し、ヘヴィメタルの本質が失われることを懸念している。
「そのバンドが何を象徴しているのかに大きく関係している。俺たちがまだ駆け出しの頃、人々は俺たちのことを“危険だ”とか“不良”と呼んで嫌ったものだ。その頃、クリス・ポーランド(1984年から87年までメガデスのギタリスト)が俺に気に入らないことを言ったから、彼の顔を蹴飛ばしたんだ! 自分のバンドのメンバーにそんなことをする奴がいるか? 自分が危険だと知っていて、そうならないようにするのと、自分は危険ではないと知っていて、そう思わせようと振る舞うのとは違う」
ムステインはテキサス人の「大きな帽子、牛はいらない(all hat and no cattle=口では大きなことを言うが実際には何もできない)」という言葉を引用し、「フロントマンがまるでワルで、いつでも誰かに一泡吹かせてやるというように振る舞うのは、今のメタルというジャンルで最も滑稽なことの1つだ。バカバカしい」
Written by Oran O’Beirne
2022年9月2日発売
CD / iTunes Store / Apple Music / Amazon Music
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