ゴーゴー・ペンギン『A Humdrum Star』:瞑想的で黙想的、前進的な輝く傑作

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ジョイ・ディヴィジョン、ザ・スミス、ザ・ストーン・ローゼズとオアシスの故郷であるマンチェスターは、数々のインディ・ロックのバンドに心奪われた街であると思われがちだ。しかし近年では、新しく期待できるジャズのアーティストを生んだ地としても知られつつあり、トランペッターのマシュー・ハルソール、サクソフォニストのナット・バーチャル、そしてもしかすると最も印象的なのは、力強いコンテンポラリー・トランスのトリオで、ついに2枚目のアルバム『A Humdrum Star』をかの有名なニューヨークを拠点とするブルーノート・レーベルからリリースしたゴーゴー・ペンギンではないだろうか。

 

マシュー・ハルソールとナット・バーチャルは、天体の飛行機に乗ってジョン・コルトレーンのようなスピリチャル・ジャズの高尚な領域を探求することに満足している一方で、ゴーゴー・ペンギンはもっと直接的で地に足がついているといえるだろう。見た目にはアコースティック・ジャズ・トリオであり、構成はグランド・ピアノ、スタンドアップ・ベースとドラムであるが、実は彼らのメインとなるインスピレーションはエレクトロニカであり、3人がともに生み出す音楽は、テクノ、ヒップホップとダブステップの影響を融合し、さらにスティーヴ・ライヒのようなマイクロ・ミニマリズムとジャズ・インプロヴィゼーションが随所にあるのだ。

ゴーゴー・ペンギンは2012年にマシュー・ハルソールのマンチェスターを拠点にしたインディ・レーベルのゴンドワナから、アルバム『Fanfares』でデビューし、アルバムは瞬時に彼らを新鮮で革新的な新しいサウンドの先駆者として確立させた。しかし、その次作で大変評価の高かった2014年の『v2.0』で本当の意味で注目されるようになり、名誉あるバークレイカード・マーキュリー・プライズにノミネートされたのだ。最終的に賞を勝ち取ることはできなかったが(もう1組のトリオで、スコットランドのヒップホップ・グループのザ・ファザーズに敗北を帰した)、アルバムは目立つ名前の3人組に貴重な露出を設け、結果として2015年のブルーノートとの契約につながった。

魅力的なムードとグルーヴで満載なブルーノートでのデビュー作『Man Made Object』をその年の後半にリリースし、期待に応えた作品となった。そして2018年、トリオ(ピアノにクリス・アイングワース、ベースにニック・ブラッカ、ドラムにロブ・ターナー)はブルーノートからの2枚目のアルバム『A Humdrum Star』で舞い戻った。文句なしに今までで最も素晴らしくまとまりのある作品となっている。

アルバムは瞑想的なスタイルで始まり、その厳粛ある音楽の祈り「Prayer」は、堂々とした風格で、トリオのまるで映画のような巧みさをとらえた短い序章である。澄んだピアノのコードが響き、印象深い「Raven」もまた黙想的な楽曲として始まり、続いてベーシストのニック・ブラッカとドラマーのロブ・ターナーがドラマティックに登場し、興奮する前進的なポリリズムで楽曲を駆動していく。

繊細なピアノが、力強いが常に変動するバックビートの上に流れる「Bardo」は、エレクトロニカにインスパイアされたトランスとチェンバー・ジャズ、そしてクラシック・ミュージックの純粋なサウンドを見事に融合したトリオのスキルが現れている。心に響く美しい楽曲だ。「A Hundred Moons」も同じく美しい曲だが、それには別の理由がある。ゆっくりで哀愁漂うが、ためらいはなく、ピアノが常に流れながらタムタムのドラム、パーカッションと根底のベースラインとの組み合わせが瞑想にピッタリな雰囲気を生み出しているのだ。

 

対照的に、不思議なタイトル「Strid」はクレシェンドするサウンドのドラマと、落ち着かないオフビートのリズムで、張り詰めた作品である。「Reactor」も同様で、ニック・ブラッカの脈打つベースが曲の柱となっている。全体的により壮大なアンビエンスのある「Return To Text」はピアノのアルペジオが曲を特徴づけており、アルバムの最後の曲「Window」は安らかなムードの楽曲で、雪が月明かりを反射させているかのように輝くクリス・アイングワースの澄んだ右手のピアノ・メロディがバンドの詩的な側面を表している。

すべての偉大なジャズ・トリオのように、ゴーゴー・ペンギンもお互いのインタラクションをいとも容易く、まるでテレパシーかのようにやってのける。『A Humdrum Star』は、3人のミュージシャンとそれぞれの役割という意味では、“all for one, one for all(皆は1人のために、1人は皆のために)”という精神を具現化している。全員が音楽に対して民主主義的に貢献し、誰かを犠牲にして他の人が輝くことはない。ソロはあるが、長すぎたり派手だったり、自己中心的なことはなく、サウンドの特徴を完全に保っている。

その秘法の結果生み出されたのが人々を虜にするアルバムであり、本作をカテゴリーに分類するのは難しいかもしれないが、普段あまりジャズに傾倒しないリスナーでも、素直に聴き入れ、称賛するのは容易いことだ。

Written by Charles Waring


ゴーゴー・ペンギン『A Humdrum Star』
    



 

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