ハンブル・パイのフィルモアで録音されたライヴ盤『Performance – Rockin’ The Fillmore』

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スーパーグループとして母国イギリスの聴衆の前に登場し、デビュー・シングル「Natural Born Bugie(邦題:あいつ)」をヒット・チャートの上位に送り込んだハンブル・パイは、やがてアメリカでアルバム・アーティスト及びライヴ・バンドとして大きな成功を収めることになる。本国イギリスでは、結果的に1969年夏に最高位4位を記録した「Natural Born Bugie」が唯一のヒット曲になったものの、1970年代初頭に至って、グループはアメリカで大きな成功を収めた。そんな彼らが彼の地でゴールド・ディスクに認定された1971年11月に発売された2枚組のライヴ・アルバム『Performance – Rockin’ The Fillmore』を、翌年1972年1月22日に、イギリスのアルバム・チャートに送り込んだのである。

「新しいギターを手に入れたんだ。こいつは最高だ。おかげで俺はゴキゲンだよ」というスティーヴ・マリオットの言葉からバンドは演奏を始める。『Performance – Rockin’ The Fillmore』で聴けるのは至ってシンプルな編成のロック・バンドによるライヴ演奏である。ソロ・アーティストへの転身を控えていたピーター・フランプトンはアルバムの発表を待たずしてグループを脱退することになるが、ここに記録されているのは、そのピーター・フランプトンに、スティーヴ・マリオット、グレッグ・リドリー、ジェリー・シャーリーというハンブル・パイ黄金期のラインナップによるパフォーマンスである。

ライヴ録音が行われたのは1971年5月28日、29日の両日で、会場はニューヨークのフィルモア・イーストである(イースト・ヴィレッジにほど近いこのコンサート・ホールが閉鎖されたのは、ハンブル・パイの出演からわずか1ヶ月後のことだった)。この公演に先立ってハンブル・パイはスタジオ・アルバム『Rock On』を発表。同作は5月にチャート入りを果たしていた。『Rock On』の米アルバム・チャートにおける最高位は118位に過ぎないが、彼の地におけるバンドの人気上昇を受け着実にセールスを伸ばし、実に23週に亘ってチャート圏内に留まっている。

『Performance – Rockin’ The Fillmore』は、2枚組であるにもかかわらず、長尺のトラックが多いため、オリジナル版に収録されていた収録楽曲はわずか7曲。最も演奏時間が長いのはドクター・ジョンの「I Walk On Gilded Splinters」のカヴァー(23分)で、マディ・ウォーターズのレパートリーを取り上げた「Rolling Stone」(16分)がこれに続く。ザ・ローリング・ストーンズのバンド名の由来にもなった後者は『Rock On』にも収録されているが、そこで聴けるスタジオ・ヴァージョンは6分という控えめな演奏時間で纏められていた。このフィルモア・イーストのライヴでは、同じ『Rock On』に収録されていたグループのオリジナル・ナンバー「Stone Cold Fever」も披露されている。

アルバムには、レイ・チャールズの「Hallelujah I Love Her So」や、こちらもレイ・チャールズのレパートリーとして知られるジョセフィン・アームステッド、ニコラス・アシュフォード、ヴァレリー・シンプソン作のソウル・ナンバー「I Don’t Need No Doctor」のカヴァー・ヴァージョンも収録されている。後者はシングルとしてもリリースされ、米チャートのトップ100圏内に8週に亘ってランク・イン、最高位73位という成績を残した。一方、イギリスではアルバム『Performance – Rockin’ The Fillmore』は1972年初頭にチャート入りを果たし、32位まで上昇している。ちなみに、同作と同時にチャート入りしたアルバムのひとつがジョージ・ハリスンの『The Concert for Bangla Desh(邦題:バングラデシュ・コンサート)』で、『Performance – Rockin’ The Fillmore』が32位に達したとき首位に立っていたのは、人気の絶頂にあったT・レックスの『Electric Warrior(邦題:電気の武者)』だった。

「僕が初めてこのアルバムを聴いたのは14歳の時だった。ラジオ・ルクセンブルクが流しているのを寝床に持ち込んだトランジスタラジオでこっそり聴いたんだ」と、uDiscoverの読者、マーティン・スミスさんはこんな一文を寄せている。「‘I Don’t Need No Doctor’を聴いた瞬間に文字通り僕の人生は変わった。あの曲をきっかけに僕は音楽に夢中になったんだ。あれから45年という長い歳月が過ぎたけれども、今もあの曲のすべてが大好きだ。ハンブル・パイに心からお礼を言いたいし、スティーヴ・マリオットにも感謝の気持ちを伝えたい。彼らはロックン・ロールそのものだよ」。

Written by Paul Sexton



ハンブル・パイ『Performance Rockin’ the Fillmore』

    

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