reDiscover:大胆で革新的な『Homogenic』がどのようにビョークのキャリアを再構築したか

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ビョークはカルト的インディーズ・バンドのシュガーキューブスのメンバーとして活動していた時代からすでに有名だったが、その後のソロ・キャリアであれほどの成功を手に入れるとは殆どの人が予想していなかった。メジャー最初の2作品『Debut』と『Post』と、そこから生まれたヒット曲「Violently Happy」、「Army Of Me」、そして「It’s Oh So Quiet」はどれも商業的に大成功を収め、正真正銘のポップ・スターとなった彼女が全身全霊を込めて制作したメジャー3枚目/自身4枚目のアルバム『Homogenic』へと繋がる道を開いた。

『Debut』と『Post』にはトリッキー、ネリー・フーパー、ハウィーBなどが参加するなどのコラボレーションを好んだことで、様々な要素を含んだ作品となった。しかし『Homogenic』では、彼女のユニークな美学をはっきりと定義するサウンドに一貫性(彼女の言葉を借りると“ひとつのフレーヴァー”)よりも均一的な本質を求めた。この目的に向けて彼女はエンジニアのマーカス・ドラヴスだけを招いてロンドンにてレコーディングに取り掛かった。

しかしそのセッションは恐ろしい出来事によって中断されてしまった。狂信的なファンであるリカルド・ロペスがビョークを殺害、又は損傷する目的で手紙爆弾を作っている様子を自ら撮影し、その後に自殺したのだ。マスコミは異常なまでに熱狂し、ビョークのロンドンにある自宅前にはパパラッチが24時間集まった。動揺したビョークは音楽業界を離れることも考えたが、スペインのマラガを拠点とするツアー・ドラマーのトレヴァー・モライスがスタジオを提供することを申し出てくれ、彼女はスペインに避難した。

丘に囲まれたスペインのアンダルシア地方に慣れ、落ち着いたビョークは、プロデューサーのガイ・シグスワース、ハウィーB、そしてLFOのマーク・ベルを招いて一見矛盾するテーマで定義された作品を形作る手助けをしてもらった。猛烈に愛国的でありながらも国際的、伝統的でありながらもハイテク、そして感情的でありながら防御的でもある『Homogenic』は自然とテクノロジーをバランスよく取り込んでいる。

過去の作品に含まれている要素が繰り返されているが、この作品で初めてビョークは伝統をそのまま使用し、マーク・ベルのモダンなテクノ・ビートをクラシックのオーケストラが包み込むようにアイスランディック・ストリング・オクテットが演奏している。ビョークはアイスランドの苛酷な火山の多い風景を表現するように伝え、恐らくオープニング・トラック「Hunter」でそれが最も良く表現されており、伝統的なアイスランドのアコーディオン、美しいヴァイオリンとわずかなビートが寒々と融合している。

アルバムの歌詞は直近の失敗に終わった関係に対して不満を伝えている。「5 Years」でのビョークは怒りを込めながら反抗的で(“あなたには愛は上手く扱えない”)、「Immature」はもっと内省的である(“どうして私はこんなにも未熟なんだろう/私の中で足りないものを/二人で置き換えられると思うなんて”)。そして違う形の愛情から彼女は慰めをみつけている。「Alarm Call」(シングル「Beck Remix」のB面用にベックがリミックスを手がけている)では人類全体を称賛し、「All Is Full Of Love」では与えるという単純な行為を称えている。その一方で親しい友人のためにつけられたタイトル「Jóga」は女性同士の友情の美しさを支持している。

眩しい実験的ポップから、より暗く挑戦的なものへと方向転換した『Homegenic』は、ビョークのキャリアを定義する大胆で革新的な作品の基調を決定付けた。



ビョーク『Homegenic』

 

 

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