プログレッシヴ・ロックのベスト・ギタリスト25:様々なタイプの奏者をランキングで紹介
プログレッシヴ・ロックと言われて真っ先に頭に浮かぶのは、マントを羽織ったキーボード奏者がモーグに繋いだケーブルの海を航行する姿である。それにもかかわらず、プログレッシヴ・ロック界の中枢メンバーは常にギタリストであり、ハード・ロックやメタルに並ぶほど多くの大地を揺るがすギター・ソロがプログレッシヴ・ロック界でも簡単に見つけられるだろう。
時にそれらのプログレッシヴ・ロック・ギタリストたちは自分たちのバンドのリーダーや首謀者であり、時にそれらの宇宙飛行を安定させるプレイヤーたちなのだ。この記事は、プログレッシヴ・ロック界の重要ギタリストたちに敬意を表するものである。
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25位:スティーヴ・ロザリー(マリリオン)
フィッシュ期にしろスティーヴ・ホガース期にしろ、マリリオンは常に因習に囚われないプログレッシヴ・ロック・バンドだった。彼らは自己満足のテクニック誇示は避け、主にヴォーカルを中心に作り上げたスローかつ荘厳な作品を好んだ。
そんなマリリオンの中でスティーヴ・ロザリーは、本質的に気分を高揚させるようなパートをプレイしており、抑制のモデルとなり得ている。しかし同時に、ホガースが書いた北アイルランドへの哀歌「Easter」でのプレイのようにドラマティックなソロも披露する。
24位:フランコ・ムッシーダ(PFM)
イタリアの最高級プログレッシヴ・ロック・バンド、PFMは、同時代のバンドからの影響を取り込んできた。フランコ・ムッシーダのリード・ギターを聴けば、スティーヴ・ハウ、ロバート・フリップ、アル・ディメオラの痕跡を発見することができるだろう(いずれも欧州クラシック音楽からの影響を色濃く受けている)。特にディメオラの影響は、ムッシーダがしばしば手にするアコースティック・ギターをプレイする時に出ていた。
PFMの『Jet Lag』は、3分間の純粋なアコースティック・ギターによって幕を開ける唯一のプログレ名盤かもしれない。だが、彼は切り裂くようなエレクトリックのソロも弾くことができる。ライヴでの見せ場となる「Alta Loma Five Till Nine」を聴いてみていただきたい。ソロが常にパワーを増していくのだ。
23位:ジョン・ペトルーシ(ドリーム・シアター)
メタル色を帯びたプログレ・ギタリストの第一人者として、ドリーム・シアターのギタリストは中でも最も華々しいフレーズを掻き鳴らすことができるが、彼は作品のダイナミクスを常に心に留めている。2013年のセルフタイトル・アルバム『Dream Theater』からの「Behind the Veil」は、彼の最高の瞬間を捉えたものだ。
ソロは、抒情的に抑制されたテーマと共に展開していき、やがて、高まるテンションがそれを求めたまさにその時、高速フレーズが始まるのだ。
22位:ジョン・グッドソール(ブランドX)
ブランドXは英国最高峰のフュージョン・バンドであったが、ドラムスにはフィル・コリンズ、ベースにはブライアン・イーノの長年のコラボレーターであるパーシー・ジョーンズが名を連ねていることに気づくならば、あなたのプログレ資質は損なわれていない。言うまでもなく、最もいい意味でそのテクニックを誇示するリード・ギタリスト、ジョン・グッドソールもそこに上がる。
彼はまた、数多くのセッションを行ってきたゆえに、ジャンルを越えることに何の抵抗もない(ビリー・アイドルの「Rebel Yell」に匿名で参加しているのは彼だ)。「Nuclear Burn」を聴いて、趣きのある12弦ギター、もともと複雑な曲のリフのトリッキーな変奏など、あらゆる要素を少しずつ味わってみるといい。
21位:アンディ・ラティマー(キャメル)
滑らかなタッチで豊かな感情を綴るアンディ・ラティマーは、この世のものとは思えない音風景を得意とするバンドには打ってつけのプレイヤーだ。彼のおかげで、キャメルは常に特徴的なサウンドを鳴らしてきた。結成から在籍するメンバーは彼だけになってしまったが。
『Snow Goose』のクライマックスとなる「Rhayader Goes to Town」でのソロはファンキーでありながら情感溢れるもので、絶妙なタイミングで行われるチョーキングがこの曲のドラマ性を増幅させている。
20位:ジャスティン・ヘイワード(ムーディー・ブルース)
ジャスティン・ヘイワードはムーディー・ブルースの名バラード歌手として知られていたものの、彼がロックンロール・バンドの一員であることを望んでいた時もある。
彼のような堅実なギタリストがいたことで、バンドは多大な恩恵を受けており、ムーディー・ブルースが長尺ソロを好まなかったゆえに、ヘイワードは自身のギター・ソロで簡潔なメロディを提示することに熟達していった。「The Story in Your Eyes」にも印象的かつ核心的なソロがあり、それがこの曲を今なお彼らの最も愛すべき曲の一つにしている。
19位:パイ・ヘイスティングス(キャラヴァン)
キャラヴァンの長年のリーダーは、重要な作業は最終的には他のプレイヤーに任せるほど謙虚なギタリストである。
だが、バンドはギターが一人の4人組として最も愛されるアルバムをいくつも作っており、今なお人気の高いキャラヴァン初期の大作は、パイ・ヘイスティングスのスウィングする技量とヘヴィなリフを作る才能の恩恵を受けている。そして「Nine Feet Underground」ではそのいずれもが見事に発揮されている。
18位:リチャード・ウィリアムス(カンサス)
カンサスのリード・ギタリストは控え目な人物であり、バンドはよりコマーシャルなプログレッシヴ・ロック・バンドであるゆえに、リチャード・ウィリアムスはしばしば見過ごされることがある。だが、彼がここに名を連ねているのには二つの理由がある。
まず第一に、「Carry On Wayward Son」のダブルトラックのギターリフを聴けば、誰もが拳を振り上げるであろうこと。第二に、絶頂期のカンサスは2人のリード・ギタリスト、ウィリアムスとケリー・リヴグレンを擁していたが、その後のラインナップではウィリアムスが20年に亘ってその二役を担ってきたことだ。
17位:オードリー・スウィンバーン(マザー・スーペリア)
マザー・スーペリアは事実上、英国プログレッシヴ・ロック史上唯一の全員女性バンドであり、レコード契約を獲得した最初の女性バンドの一つであった(その契約は1975年までであり、プログレッシヴ・ロックの最盛期をすんでの所で逃しているが)。
ギタリストでありメイン・ソングライターであったオードリー・スウィンバーンは、それ以前にザ・コスメティックスというグラム・バンドに在籍しており、込み入ったアイディアはお手の物だった。マザー・スーペリアの唯一のアルバムではスティーヴン・スティルスのカヴァー「Love the One You’re With」が目玉の一つとなっている。そこでのスウィンバーンのソロは原曲でのスティルスのプレイに勝るとも劣らないほど素晴らしい。
16位:ヤン・アッカーマン(フォーカス)
ヤン・アッカーマンは片足をジャズの世界に、もう片方をクラシックやルネッサンス音楽に置いている。彼はまた、全面的にリュートを使用したソロ・アルバム(1974年の『Tabernakel』)を作った唯一のプログレッシヴ・ロック・ギタリストであろう。
ジャズの文脈では、「Anonymous Ⅲ」での長尺ソロが実にスリルに満ちた飛翔となっているが、「Hocus Pocus」の典型的なメタル・リフでの彼のプレイも見過ごしてはいけない。
15位:エイドリアン・ブリュー(キング・クリムゾン、ソロ)
エイドリアン・ブリューは、優れたポップ・ソングを愛しているのと同様に、独特のサウンドスケープをも熟知するプログレッシヴ・ロック・ギタリストである。実験的なソロ・アルバムからザ・ベアーズでの洗練されたポップに至るまで、これほど幅広い表現を網羅してきた人はほとんどいないだろう。
だがブリューは、優れたギターの迸りによって印象深い楽曲書くことで本領を発揮する。「Big Electric Cat」は多くの傑作のうちの最初の一つだ。
14位:ピーター・バンクス(イエス、フラッシュ)
イエス創成期のギタリスト、ピーター・バンクスは、バンドに在籍した3人のギター・プレイヤーの中では最も注目されないかもしれないが、彼は、後にハウやトレヴァー・ラビンが発展させていったロック=オーケストラ・サウンドの発明に一役買っており、バンド在籍時には味わい深いソロも残している。
彼の才能が本格的に開花したのは、次のバンド、フラッシュ(プログレ最初期のパワー・トリオの一つ)においてであり、とりわけ10分にも及び、グループ名に相応しい閃きを放つ「Lif Time」のようなトラックに顕著であった。
13位:スティーヴ・ヒレッジ(ゴング、ソロ、システム7)
スティーヴ・ヒレッジはその正体を突き止めるのが常に難しい人物だった。地球上で最も宇宙的なプログレッシヴ・ロック集団の誇り高きメンバーであったが、後にエレクトロニカへと越境し、さらには、最高峰のテクニックでギター・ヒーローのような演奏も披露した。
ゴングを脱退してソロ活動を始めると(アルバム『L』ではトッド・ラングレンやユートピアと共に宇宙的なサウンドを展開した)、彼はアメリカのファンク・ミュージシャンと共演した最初のプログレ・アーティストの一人となった。ゴングの名曲「The Isle of Everywhere」には、ヒレッジの水晶のようなトーンと目の眩むようなテクニックが満載である。
12位:トッド・ラングレン(ユートピア、ソロ)
トッド・ラングレンは多くのことを上手くやるが、彼の恐るべきリードギターのテクニックは常にとっておきの切り札だった。初代ユートピアは、3人のキーボード奏者がいるバンドでも彼が埋もれないことを示しており、また、その時期のソロ・アルバムでは、果敢にジャズの重鎮たちとの共演に挑んでいる。
『Initiation』のタイトル曲で、彼はデヴィッド・サンボーンの超絶フレーズの後を継ぐ使命を負っているが、そのギター・ソロはまさにジャンルを超越するものとなっている。
11位:ロビン・トロワー(プロコル・ハルム)
40年に及ぶソロ活動のおかげで、ロビン・トロワーの心がブルースにあることを疑う余地はいないだろう。だが、プロコル・ハルムの一員であった期間、彼はプログレッシヴ・ロックの文脈で効果的にブルースを演奏していた。トロワーにとって、それはいずれも表現するということであり、彼の作品は要するに過剰演奏に対する孤独な反対運動だったのだ。
彼の匠の技は「Shine on Brightly」でのリード・ギターの一音フレーズにとどめを刺すだろう。創造の狂気という曲のテーマをものの見事に浮き彫りにしている。
10位:トレヴァー・ラビン(イエス)
イエスに加入するずっと以前、トレヴァー・ラビンは驚異的な才能を有するミュージシャンとして知られていた。既に全ての楽器を演奏し、いくつものソロ・アルバムを作っていたのだ。イエスの他のギタリストたち以上にアリーナを揺るがす感覚を有していたが、それは彼に楽曲に即したプレイができないということではない。
『90125』のハイライトとなる「Changes」では、オーケストラのようなリード・ギター、ポリスを彷彿とさせるリズム・パート、そしてイントロの華々しいカデンツァなど、彼のあらゆる妙技を味わうことができる。
9位:ゲイリー・グリーン(ジェントル・ジャイアント)
ジェントル・ジャイアントは実に多くの音楽的アイディアを駆使していたゆえに、もしも堅実なプログレ・ギタリストがいなければ全てが破綻していたことだろう。ジャイアントがよりストレートでアグレッシヴなサウンドへと移行した後期のアルバムでは、ゲイリー・グリーンの人生を謳歌していた様子がそのサウンドから窺える。
だが彼は、ジャイアントのより複雑な曲でも手腕を発揮した。それが最も顕著なのは「On Reflection」だ。彼は、ほぼアカペラのこの曲の主導権を握りながら、ギター/キーボードのバトルをケリー・ミネアに仕掛けるのだ。
8位:フランク・ザッパ
フランク・ザッパは全能のミュージシャンとして軽々とジャンルを超越する。だがリード・ギタリストとしての作品は、プログレッシヴ・ロックのカテゴリーに収めるのがより相応しいだろう。
コンサートで彼がソロを弾くたびに、バンドはロック、ジャズ、クラシックの交差する領域に滑らかに入っていく。インストゥルメンタルの「Hot Rats」はプログレッシヴ・ロックに多大な影響を与えており、いくつかの彼のソロ、とりわけ『Joe’s Garage』収録の「Watermelon in Easter Hay」ではその美しく繊細なプレイを聴くことができる。
7位:マイク・オールドフィールド
マイク・オールドフィールドは何をおいてもまずは作曲家であり、彼がギターの活躍する時間を設けるのは楽曲のドラマ性を高めるためだ。まずは「Hergest Ridge」のヤマ場となる“嵐”のセクションを聴いていただきたい。そこには90ものギター・パートが重ねられたと言われている。
だが、彼はギター・ソロにおいても同じくその手腕を発揮する。『Incantations』第3面の全編で聴かれる流れるようなソロ、あるいは「Ommadawn」のパート1を最高潮へと導く、いつになくアグレッシヴなソロがその好例である。
6位:スティーヴ・ハケット(ジェネシス)
スティーヴ・ハケットにはタッピングの考案者を名乗る正当な権利があるだろう。「Dancing With the Moonlit Knight」でのソロは、このテクニックのよく知られる最初の使用例と言われているのだ。
彼はまた、ナイロン弦のクラシック・ギターに並々ならぬ愛情を抱いており、アルバム全編で使用したこともある。だが彼の本当の強みは、ジェネシス時代であれ、今日までの活動であれ、映画のような壮大な表現だ。「Firth of Fifth」のクライマックスとなるソロには、ハケットの最も荘厳な姿が映し出されている。
5位:マーティン・バレ(ジェスロ・タル)
ジェスロ・タルのリード・ギタリストは本質的にはブルース・ギタリストであり、タルのサウンドの鍵は、バンドがプログレッシヴ・ロックやフォークへと越境するたびにきめ細かさを加えるマーティン・バレが握っていた。
より複雑な作品では、彼はしばしば熱いソロを聴かせ(「Thick As a Brick」の10分辺りを参照)、他のタルの名曲も彼のギター・リフを核にして作られている。伝説によれば、「Aqualung」の驚愕のソロはワンテイクで録音され、ふらりと見物に来たジミー・ペイジを感動させたとのことだ。
4位:デヴィッド・ギルモア(ピンク・フロイド)
デヴィッド・ギルモアがピンク・フロイドに加入したのは、バンドがまだサイケデリック・バンド色の濃かった頃で、そうしたコンセプトにはすんなりと入ることができた。『Ummagumma』収録の彼のソロ作品「The Narrow Way」は、スライド・ギター、スティール・ギター、ループエコーの無限の可能性を探るものであった。
だが、彼は何をおいても叙情的なプレイヤーであり、その演奏は年を追うごとにより情感溢れるものになっていった。それが最高潮に達したのは「Shine On You Crazy Diamond」冒頭の長尺ソロ。プログレッシヴ・ロックの最も輝かしい瞬間の一つである。
3位:アレックス・ライフソン(ラッシュ)
ラッシュは、時にリード・ギタリストがリズム・セクションより影が薄くなる唯一のパワー・トリオかもしれない。しかしながらアレックス・ライフソンは、他のバンドにいたならば傑出したスターになっていたことは間違いなく、彼がラッシュにもたらしたものは計り知れない。
ヘヴィなアリーナ対応リード・ギターも、繊細なタッチのパートも、大胆に冒険するソロも弾くことができる。彼の一世一代の名演「La Villa Strangiato」には、その3つが豊富に含まれているのだ。
2位:スティーヴ・ハウ(イエス)
ギタリストとして、スティーヴ・ハウはプログレッシヴ・ロックのあらゆる素晴らしさを具現化する。それは底無しのメロディ創作力、多岐に亘る音楽嗜好、そして多彩なトーンやイメージを描き出す才能だ。
そんな彼は高度なテクニックで激しいエレクトリック・ソロを奏でることができるが、同時に「Mood for a Day」のように抒情的にも、「Clap」のように煌びやかにもなれるのだ。
1位:ロバート・フリップ(キング・クリムゾン)
さぁ、ロバート・フリップをプログレッシヴ・ロック界のマイルス・デイヴィスと呼ぼうではないか。彼は、常に変わり続けるバンドを自分の楽器のごとく扱う、卓越したプレイヤーである。いかなる時期のキング・クリムゾンも未体験のサウンドスケープを提示し、フリップはそれに応じて自身のギター・スタイルも進化させていった。
激しく迸るソロ、煌めくフリッパートニックス、そして『Discipline』期のガムランのような構造は、いずれもトレードマークとなった。彼の卓越したテクニックについては、プログレッシヴ・ギタリストたちが向こう何十年と「Fracture」に悪戦苦闘することになる、と言えば十分だろう。
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