クイーンとBBCとの強い結びつき:クイーンの貴重なライブ盤『On Air』
クイーンの華々しいライヴ音源を収録したパッケージは、既に何点もリリースされているが、それらの中でも最も新しいタイトルに当たる『Queen On Air』は、”女王”を意味するそのグループ名に似つかわしいパッケージになっているかもしれない。この贅沢なボックス・セットはグループが、長年に亘ってBBCに残した音源の集大成と言っていい内容になっており、デビュー・アルバム『Queen(戦慄の王女)』のリリースの数カ月前、1973年2月に放送された初めてのスタジオ・セッションから、彼らが世界中で圧倒的な人気を博すまでになった80年代の大規模スタジアム・コンサートの模様まで、そのすべてが記録されている。『Queen On Air』は、LPレコード3枚から成るアナログ・ボックスと、ディスク6点から成るCDボックスという2種のフォーマットで2016年11月4日にリリースされた。このうち後者には、1976~1986年に行われたメンバーのインタビューがCD3枚に亘って収録されている。
クイーンはこの年さらに2回BBCに出演。1974年にも2回出演したあと、3年間のブランクが空く。次の出演は『News Of The World(世界に捧ぐ)』発売前のことだった。このときクイーンは代表作となったシングルの曲「We Will Rock You」を初めて披露しているが、やがてファンがコンサート会場で大合唱するようになるあのヴァージョンとはかなり違うアレンジだった。この「We Will Rock You (Fast)」を聴くと、新曲の発表を控えていたこの段階でも、クイーンが新たな表現方法を絶えず探り続けていたことがわかる。
やがて1970年代が終わり1980年代が始まると、クイーンは時代を代表するビッグ・アーティストの仲間入りをし、世界中でスタジアムを満員にした。そこまで来た彼らは、もはや放送スタジオには収まりきらない存在になっていたのかもしれない。それでもBBCとの強い結びつきは途絶えなかった。クイーンのキャリアの中で大きな位置を占める重要なコンサートも、BBCを通じ、本国で放送されているのである(たとえば1981年3月20日に開催されたサンパウロ公演、1986年6月21日の強烈なドイツ・マンハイム公演などがこれに当たる)。
ライヴ番組「In Concert」のプロデューサー、ジェフ・グリフィン宛てに書かれた手紙を見ればわかる通り、クイーンの面々は、BBCセッションに対して好意的な感情を抱いていた。この直筆の手紙にはメンバー4人全員がサインをし、グリフィンに以下のような言葉で謝意を伝えている。「僕たちのためにすばらしいセッションを企画してくれてありがとう」。さらにそのあとは、グリフィンが自分たちの当時の”新曲”(のちに『Queen II』に収録されることになる)を気に入ってくれることを期待する言葉も続いていた。40年以上経った今、このすばらしいコンピレーション『Queen On Air』を聴けば、BBCもまたクイーンに対して好意的な感情を抱いていたということがわかるだろう。
Written By Sam Armstrong
クイーン『On Air 』
- クイーン アーティスト・ページ
- クイーン関連記事
- 映画『ボヘミアン・ラプソディ』関連記事まとめ
- クイーン『オペラ座の夜』の世界観がNODA・MAPによって舞台化
- クイーン+アダム・ランバート、2020年1月に来日公演決定
- 映画『ボヘミアン・ラプソディ』ブルーレイ/DVD&デジタル配信発売
- 主演ラミ・マレックのアカデミー賞受賞スピーチ全文
- 常識破り6分のシングル、名曲「Bohemian Rhapsody」
- 映画『ボヘミアン・ラプソディ』に協力した人物が語る制作の裏側
- 名曲「Bohemian Rhapsody」が持つ音楽史でのとてもつもない偉業
- QUEEN / クイーン全アルバム制作秘話
「クイーンの日」 9作品再発
2019年4月17日発売
各商品の詳細はこちら
【DVD】
『グレイテスト・ビデオ・ヒッツ1』『グレイテスト・ビデオ・ヒッツ2』
『オン・ファイアー / クイーン1982』『グレイテスト・ヒッツ・カラオケ』
『ジュエルズ』
【CD】
『ライヴ・キラーズ』『ライヴ・マジック』
『グレイテスト・ヒッツ・カラオケ』『オン・ファイアー / クイーン1982』