伝説的なドラマー、ジンジャー・ベイカーの名演/名曲20選
ジャンルを問わず、多方面にその才能を発揮してきたドラマー、ジンジャー・ベイカー (1939年8月19日の生まれ) は、その波乱に満ちたキャリアの中で、トリオ編成によるロックの先駆者になり、ベイカー自身にとっては本意ではなかったもののその分野の最初のスター・ドラマーになった。
ここでは「Ginger In 20 Songs (ジンジャー・ベイカーの名演が聴ける20曲)」と銘打って、uDiscover Music が選定したプレイリストを紹介する。
uDiscoverの提供するプレイリストは、みなさんの会話のきっかけを提供し、末永く音楽を楽しんでいただくためのツールである。みなさんにも、コメント欄を通じ、あなたの気に入った曲や、その理由を知らせてほしい。またジンジャー・ベイカーが残したこの上なくすばらしい作品群に関するあなたの思い出も教えてほしい。
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グレアム・ボンド・オーガニゼーションは、イギリスのR&Bブームの先導者の一人でありながら、今なお過小評価に甘んじているグレアム・ボンド、ドラマーのジンジャー、ベーシストのジャック・ブルースらによって構成されたグループである。ボンドとそのバンドは、ロンドンはハムステッドのレイルウェイ・ホテルの有名なクラブ、クルックス・クリークで定期的にライヴ・パフォーマンスを披露していた。今回のプレイリストの冒頭に挙げたグレアム・ボンド・オーガニゼーション名義の2曲は、1964年10月にそのクルックス・クリークでレコーディングされたライヴ音源だ。このときジンジャーは25歳だったが、その信じられないほど力強いドラミングで、既にほかのメンバーを圧倒する人気を獲得しつつあった。
グレアム・ボンド・オーガニゼーションのメンバーとして、幾度かのレコーディング・セッションを経験したあと、ベイカーはブルースとエリック・クラプトンに合流するかたちでバンドを結成した ―― やがてロックの歴史上最初のスーパーグループとして知られることになるクリームである。
クリームの残した作品は、スタジオで録られたものであれ、ライヴ音源であれ、重要なものが多数あり、このプレイリストにも、その双方からいくつものトラックが候補として挙がった。その中から、最終的に私たちが選んだのは、ドラマー、ヴォーカリスト、ソングライター、あるいはナレーターとして、ジンジャーが主役級の役割を担っているトラックで、主にアルバムの収録曲から採用されている。
そしてそうした基準はブラインド・フェイスの長尺のトラック「Do What You Like (君の好きなように) 」にもあてはまる。これは、1969年リリースにリリースされた、あの忘れ違いブラインド・フェイスの唯一ののアルバムに収録されているベイカーの自作曲である。残念なことに、ブラインド・フェイスに次いでジンジャーが結成したジンジャー・ベイカーズ・エアフォース時代の彼の作品の大半は、目下のところスポティファイでは配信されていない。そこで、エアフォースに代えて、1970年代初頭の彼の幅広い活躍ぶりを伝えるサンプルとして、私たちはフェラ・クティのアルバム『Fela’s London Scene』に収録されていたベイカーの参加曲をリストに加えた。ベイカーの変わることのないアフリカン・リズムに対する愛着が色濃く感じられるトラックである。
また、よりオーソドックスなロックに立ち返ったプレイが聴ける作品の一例として、ベイカー・ガーヴィッツ・アーミーでエイドリアン・ガーヴィッツらとともにレコーディングしたトラック「Mad John」をプレイリストに載せた。この曲が収録されているベイカー・ガーヴィッツ・アーミーのデビュー・アルバム『Baker Gurvitz Army』は、1975年の初頭にイギリスのアルバム・チャートのトップ30圏内にランクインする成功を収めている。
ベイカーがソロ名義でリリースした作品群からは、1986年のアルバム『Horses & Trees』に収録されている1曲をピックアップ。さらにクリーム時代にたびたび衝突した相棒、ジャック・ブルースといまいちど共演を試みたトラックを2曲選んでいる。1曲は、1992年にリリースされたジャックのソロ・アルバム『Cities of the Heart』からのセレクト。もう1曲は、ベイカー、ブルースにゲイリー・ムーアを加えたパワー・トリオ、BBMが1994年に発表した作品Around the Next Dream」からのセレクトだ。
今回のプレイリストには、さらに、2005年にロイヤル・アルバート・ホールで開催されたあの歴史的なクリームのリユニオン・ショーで披露されたライヴ音源も加えている。グループのアルバム『Wheels of Fire (クリームの素晴らしき世界) 』に収録されていた異色作「Pressed Rat and Warthog (ねずみといのしし) 」のライヴ・ヴァージョンがそのトラックで、ジンジャーによるスポークン・ワードがフィーチャーされている。
リストを締めくくるのは、そのタイトルもすばらしい「Ginger Spice」 ―― ベイカーが久々にソロ名義で発表した2014年のスタジオ・アルバム『Why?』のオープニングを飾っていたトラックである。
Written By Paul Sexton
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