マーヴィン・ゲイがもう一度録音した「I Heard It Through The Grapevine」

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モータウンのカタログには最高の曲ばかり並んでいるが、その中でも「I Heard It Through The Grapevine(邦題:悲しいうわさ)」は巨大な樹木セコイアのようにそびえ立っている。それをふまえると意外な話かもしれないが、ノーマン・ホイットフィールドとバレット・ストロングによって書かれたこの曲はかなりの紆余曲折を経てきた。没になること2回。初めてヒットしたヴァージョンは、そのわずか1年後に別の録音がよりヒットしたせいで影が霞んでしまった。現在、傑作として世界中の人に知られているのはその2度目にヒットしたほうのヴァージョンである。

この曲の初録音は、1966年の夏、モータウンで吹き込まれたザ・ミラクルズのヴァージョンだった。しかしこれは発売すらされていない。翌年の初めにはマーヴィン・ゲイが新しいアレンジで録音するが、こちらもお蔵入り。その次にプロデューサーのノーマン・ホイットフィールドが組んだ相手はグラディス・ナイト&ザ・ピップスだった。これが大当たりとなった。

このアップ・テンポのヴァージョンは、グラディス・ナイトのゴスペル・ソウル・ヴォーカルのおかげで爽快な仕上がりとなった。1967年10月にはチャート入りし、R&Bチャートでは1位、ポップ・チャートでは2位にまで到達している。この曲は、テンプテーションズやボビー・テイラーといった他のモータウンの歌手も吹き込んでいた。それでもノーマン・ホイットフィールドは、これをマーヴィン・ゲイのヒット曲にすることにこだわっていた。

1968年の夏、この曲は既に有名になっていた。またマーヴィン・ゲイもニュー・アルバム『In The Groove』用の曲を探していた。それゆえ「I Heard It Through The Grapevine」に再挑戦するのは理にかなった選択だった。そうしてマーヴィン・ゲイとノーマン・ホイットフィールドは、激しい感情を胸に抱え込むような強烈なヴァージョンを作り上げる。やがてアルバムに収録されたこの曲をシカゴのラジオ局WVONが放送し始めると、問い合わせの電話が殺到。そうした反響に応えて、モータウンのベリー・ゴーディはこれをシングルで発売した。

1968年11月23日、「I Heard It Through The Grapevine」は全米ポップ・チャートに初登場。この週にランク入りした曲の中では一番高い34位につけた。それからわずか3週でこの曲は1位にまで登り詰め、それまでモータウンが発売した曲の中で一番の大ヒット・シングルとなった。1969年3月には、全英チャートでも1位となっている。それから45年後の2014年、イギリスITVのテレビ特番『I Heard It Through The Grapevine』では‘イギリスで最も好まれているモータウンの曲’の投票で1位に選ばれ、イギリスのファンにとって特別な曲であることが改めて確認された。

Written by Paul Sexton



 

マーヴィン・ゲイ『In The Groove』

  

 

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