ビーチ・ボーイズ「Fun Fun Fun」解説:バンドがカリフォルニア・ドリームを描いた名曲
ビーチ・ボーイズ(Beach Boys)の「Fun Fun Fun」はグループ屈指の人気曲であり、50年もの間、彼らのライヴのハイライトとしてお馴染みの1曲になっている。1964年2月3日にリリースされた同曲は、2月15日に全米シングルチャートに69位で初登場。3月21日には最高位となる5位をマークした。
なお、それ以上の上昇を阻んだのはザ・ビートルズによる3つのシングル「She Loves You」「I Want To Hold Your Hand」「Please Please Me」と、4位のフォー・シーズンズ「Dawn (Go Away)」だった。アメリカでは「Fun Fun Fun」はこれだけの人気を集めているにもかかわらず、全英チャートにはランクインすらしていなかった。
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名曲の制作
そんな「Fun Fun Fun」は、60年代の楽曲制作の典型例といえる形で作り上げられた。ビーチ・ボーイズがこの曲をレコーディングしたのは、リリースからたった6週間前の1964年元日のこと。
レコーディングはハリウッドのウエスタン・レコーダーズで正午過ぎに始まり、そこにはビーチ・ボーイズのメンバー全員に加え、ドラマーのハル・ブレイン、サックス奏者のスティーヴ・ダグラスとジェイ・ミリオーリ、ベーシストのレイ・ポールマンも集められていた。ブライアン・ウィルソンはのちに、ニューズウィーク誌の取材でこう語っている。
「当時はスタジオに入ると、3時間あれば1曲完成させられた。僕も“今夜はみんなで最高のレコードを作ろうぜ”なんて言ったものだよ。あのころはそんな気概を持っていたんだ。うまく行かないと、チクショウ!って感じだったよ」
この日は、彼らのニュー・アルバム『Shut Down Vol.2』のレコーディングの初日で、彼らは手始めに「Fun Fun Fun」をスローなヴァージョンを取り上げている。バック・トラックが完成するとマイク・ラヴのリード・ヴォーカルが加えられ、その後、パーカッションやギターのパートが挿入された。最後にバック・ヴォーカルの録音を19テイク行ったところで、カリフォルニア・サウンドの最高傑作との呼び声も高いあの1曲が完成したのである。
完成度の高さの理由
この曲の完成度がこれほどまでに高いのはなぜなのだろうか。まず、ノリの良いビートがあって、演奏全体を支えるすばらしいベース・ラインがある。ダグラスとミリオーリによるサックスの音色も、当時のレコードにはなかなかないような豊かなサウンドを生んでいる。
また、この曲はマイク・ラヴとブライアン・ウィルソンの共作で、ラヴが作詞、ウィルソンが作曲を担当している。特にラヴの歌詞は、世界中の人びとが頭に思い描く“アメリカン・ドリーム”、あるいは太陽の降り注ぐ楽園での“カリフォルニア・ドリーム”を見事に表現しているといえよう。そして、素晴らしいヴォーカルのハーモニーがそのすべてを纏め上げているのだ。
同曲にはステレオとモノの二つのヴァージョンが作られたが、その両方が1964年元日のレコーディングで制作された。両ヴァージョンには再生方式以外にも違いがあり、ステレオ・ミックスはフェード・アウトするのが早くなっている (ヴォーカルより先に楽器の演奏のヴォリュームが小さくなっていく) 。他方のモノ・ミックスでは、シングル盤と『Shut Down Vol.2』のモノ・ヴァージョンのいずれにおいても、ステレオ版よりアウトロが長くなっている。
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ビーチ・ボーイズ『Sail On Sailor – 1972』
2022年12月2日発売
日本盤6CD / 日本盤2CD / iTunes Stores / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
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