藤井 風『LOVE ALL COVER ALL』でカバーされた楽曲を解説
2023年2月17日に配信されると直後に日本のiTunes Storeで1位を獲得した藤井 風の『LOVE ALL COVER ALL』は、昨年発売された自身のセカンド・アルバム『LOVE ALL SERVE ALL』初回盤CDに付随していたもので、今回初めてデジタルリリースされた作品だ。
藤井 風は昨年「死ぬのがいいわ」がTikTokから全世界的に話題となり、この曲は昨年末にSpotify Japanが発表した「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」ともなった。今、最も海外で再生されている日本人アーティストの一人である藤井 風が影響を受け、今回配信でリリースされた11曲のオリジナル楽曲の解説を掲載しよう。
また、『LOVE ALL COVER ALL』とオリジナル楽曲を合わせたプレイリストが公開されている(Apple Music / Spotify)。
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01. ボビー・ヘブ「Sunny」
アメリカ人のR&B/ソウル歌手として知られるボビー・ヘブ(Bobby Hebb)が1966年に発売した自身が作曲した彼の代表曲。
Sunny, yesterday my life was filled with rain
Sunny, you smiled at me and really eased the pain
晴れている 昨日の僕の人生は雨が多かった
晴れやかな君が微笑んでくれて 本当に痛みを和らげてくれた
という歌いだしで始まり、軽やかにボビーが歌っているが、この楽曲には彼の悲しみが込められている。というのもこの楽曲は、1963年11月23日、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された翌日、ボビー・ヘブが尊敬する兄ハロルドが喧嘩によって殺されたあとに書かれたのだ。ボビーはこの二つの悲劇に打ちのめされ、曲作りに慰めを求めた。彼は生前こう語っている「私が意図したのは、幸せな時代を思い、兄に敬意を表し、明るい日を探すことでした」。
楽曲は発売されると全米シングル・チャートで2位を記録した。
02. アリアナ・グランデ「no tears left to cry」
アメリカ人シンガー・ソングライター、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)が2018年に発売したアルバム『Sweetener』の収録曲。
この前年の2017年に英マンチェスターで開催されて自身のコンサートの最中、テロリストによって爆破された事件以降、アリアナ・グランデ初のシングルとなった。彼女はこの楽曲について、事件は触れるが、そこに浸らない希望に満ちたものにしたいと考え、「前向きでポジティブさと愛について語るものにしたい。涙は残っていないから」と本人が考えた時に誕生したものだった。
上下逆さまのミュージックビデオは、人生における見当違いの概念や、世界の複雑さや幻滅を探求している。
03. ドナ・サマー「Hot Stuff」
アメリカのシンガー、“ディスコの女王”とも呼ばれるドナ・サマー(Donna Summer)が1979年に発売した彼女の代表曲で、同年発売のアルバム『Bad Girls』からのリードシングル。
この曲は、1979年の全米シングル・チャートで3週1位を記録してアメリカだけで200万枚のセールスを記録。ジョルジオ・モロダーとピート・ベロッテによるプロデュースで、ピート・ベロッテ、ハロルド・フォルターメイヤー、キース・フォーシーがソングライティングを手掛けた今作は、グラミー賞で最優秀女性ロック・ヴォーカル・パフォーマンス賞を受賞している。
04. ジャスティン・ビーバー「Sorry」
カナダのシンガー・ソングライター、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)が2015年に発売したアルバム『Purpose』からのセカンド・シングル。スクリレックスとブラッドポップがプロデュースし、
この曲は13カ国のチャートで首位を獲得した。カナダのHot 100では7週間、アメリカのBillboard Hot 100では3週間1位を記録し、発売翌年の2016年だけで1000万以上の売上を記録し、最も売れたデジタル音楽作品のひとつとなった。
歌詞では恋人に対して許しを請うもので、以下のように許しと名誉挽回のための再チャンスを求めている。
Cause I just need one more shot at forgiveness
I know you know that I made those mistakes maybe once or twice
By once or twice I mean maybe a couple a hundred times
一度でいいから 許して欲しいんだ
一度や二度の間違いだって 君は分かってくれるよね
一度や二度くらい いやもっとかな 100回くらいかも
05. リゾ「Good As Hell」
アメリカのシンガー/ラッパーのリゾ(Lizzo)が2016年に発売した楽曲。2019年にラジオ・シングルとして再リリースされると、話題を呼びアメリカだけで500万枚のセールスを記録している。また同年にはアリアナ・グランデとのデュエット・ヴァージョンも発売している。
タイトルの「Good as Hell」は日本語でいうなら、「鬼最高」のようなかたちで地獄のように最高であるという時に使うもので、楽曲はダメ彼氏と付き合ってる女性に対して、そんなヤツとはとっとと分かれて、自分自身を愛するために時間を使おうよと背中を押している内容となっている。
You know you a star, you can touch the sky
I know that is hard, but you have to try
If you need advice, let me simplify
If he don’t love you anymore
Just walk your fine ass out the door
あなたは空に輝いてる星なの 空に手が届くでしょ
今が大変ってのは分かる でもやるのよ
もしアドバイスが必要なら 簡単にさせて
もし彼がもうあなたを好きじゃないなら
あなたのかわいいお尻はそのドアを出ていけばいいから
06. グローヴァー・ワシントン・ジュニア、ビル・ウィザース「Just the Two of Us」
サックス・プレイヤー、グローヴァー・ワシントン・ジュニア(Grover Washington Jr.)が1980年に発表したアルバム『Winelight』収録曲で、ビル・ウィザース(Bill Withers)が歌唱を務めている。全米チャートでは3週間2位を記録、日本では邦題「クリスタルの恋人たち」として親しまれた。
タイトルの「Just the two of us」とは「僕達たった2人だけ」という意味ではあるが、楽曲の共作者であるラルフ・マクドナルドによると、この曲は恋愛ではなく、トリニダード島とトバゴ島というカリブ海のトリニダード・トバゴ共和国について書かれたものである。トリニダード島出身のラルフが、当時別の統治下であった二つ島が団結する必要があるということを伝えたものであった。
07. SWV「Weak」
アメリカの3人組R&Bグループ、SWV(エス・ダブル・ヴイ)が1992年に発売したデビュー・アルバム『It’s About Time』の収録曲。全米1位獲得曲。
恋をすることで、彼氏のとりこになって弱くなる(Weak)ということを歌った楽曲。
In a daze you looks so amazing
It’s not a phase (It’s not), I want you to stay with me
By my side, I swallow my pride
Your love is so sweet
呆然とするほどあなたは素敵で
若気のいたりじゃなくて そばにいてほしい
自分のプライドなんてノムコムから
あなたの愛は とても甘いから
08. ブリトニー・スピアーズ「Overprotected」
2001年に発売されたブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)のアルバム『Britney』収録曲。
曲タイトルの「Overprotected」とは過保護のこと。過保護にされることに疲れ、ただ自分自身でいたい女の子を歌った楽曲で、ブリトニー自身も「個人的にもこの曲に共感するんです。外出するときは、事前にすべてを計画しなければならないし。この曲には他の同年代の子たちも、ある程度は共感できると思います」と語っていた。
09. ケイティ・ペリー「Teenage Dream」
マイケル・ジャクソンがアルバム『Bad』で達成した記録と並び、1枚のアルバムに収録された楽曲5曲が全米シングル1位を獲得した史上初の女性アーティストという偉業となったケイティ・ペリーによる(Katy Perry)2010年のアルバム表題曲。
10代の頃に恋をしていた時の多幸感への回帰ソングだと説明し、ペリーはこの曲について「(この曲をきいた)誰もが10代の頃に夢見たことを思い出すから、多幸感が漂うんです」と語っている。
発売から10数年しかたっていないが既にクラシックな評価もされており、ニュージーランドの人気シンガーソングライター、ロードはこの曲について「聴いていて自分の若さを感じると同時に、諸行無常を感じるような、何とも言えない切なさが漂う作品なんです」「感じる必要があるとは知らなかったようなものを感じさせてくれる作品。どこか神聖な感じがするんです」と語っている。
10. レディー・ガガ「Eh, Eh (Nothing Else I Can Say)」
アメリカのシンガーソングライター、レディー・ガガ(Lady Gaga)が2008年に発売したデビュー・アルバム『The Fame』に収録された楽曲。
ダンス色の強い楽曲が多いガガも中では、少し落ち着いた楽曲となっており、ミュージックビデオでも50年代の未来的ファッションのイメージで、彼女らしさとは反対の方向をあえて選んだと話している。
歌詞については「“Eh, Eh”は新しい人を見つけて古いボーイフレンドと別れるという私のシンプルなポップソング」と話している。
11. ポスト・マローン「Circles」
アメリカのシンガーソングライター/ラッパーで昨年Summer Sonicでヘッドライナーを務めたポスト・マローン(Post Malone)が2019年に発売したアルバム『Hollywood’s Bleeding』収録曲。彼自身4曲目、ゲストがいない楽曲としては初の全米1位となった。
この曲で歌われるのは、すれ違いを繰り返すも別れられないでいる恋人がはまった悪循環(Circles)についてだ。
I’m waiting on you again, so I don’t take the blame
Run away, but we’re running in circles
Run away, run away, run away
君のことを待ってるんだ 今回も俺のせいにしないでくれ
逃げてても 俺達は円をグルグル回ってるだけ
逃げ回ってるだけ
Written By uDiscover Team
藤井 風『LOVE ALL COVER ALL』
2023年2月17日配信
iTunes Store / Apple Music / Spotify / Amazon Music / YouTube Music
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