フランキー・ミラー『Frankie Miller’s Double Take』:入門盤にして大物参加のトリビュート盤
フランキー・ミラーは、ブリティッシュ・ロックの無名の英雄かもしれない。しかし、何人もの有名な友人たちが彼の偉業を誉め讃えている。彼は心を打つ曲を作れる技量、さまざまなスタイルをこなせる器用さの持ち主として有名だった。彼が作った曲は、ロッド・スチュワートからレイ・チャールズに至るまでありとあらゆる人がカヴァーしている。さらにミラーは、歌手からうらやましがられる存在だった。ドキュメンタリー『Frankie Miller: Sending Me Angels』の中で、ステイタス・クォーのフランシス・ロッシははこう語っている。「誰だって聴いた途端に思うよ。ああいう声の持ち主になれたらなってね」。
2016年に発売されたアルバム『Frankie Miller’s Double Take』は、フランキー・ミラーを称讃する大物ミュージシャンたちの力で完成した。これは彼の音楽をこれから聴こうという人向けの入門盤としても打ってつけであり、かつまた彼の偉業を称えるトリビュート盤にもなっている。ミラーは残念ながら1994年に脳腫瘍で倒れたが、未完成の曲をたくさん残していた。そうした曲をエルトン・ジョンやロッド・スチュワートといった友人たちが完成させたのがこのアルバムだった。「彼は不運続きだった。そんな彼を助けるために、みんなで力を合わせたんだ」とスチュワートは語っている。
フランキー・ミラーはとてつもない才能の持ち主であり、誰もが知る有名人になっていてもおかしくない人物だった。彼の仲間たちは、以下のような言葉でミラーを讃えている。
■エルトン・ジョン:「お互いまだ駆け出しだった1970年代からずっと大好きだったよ。彼はとてもソウルフルで、素晴らしい声の持ち主だった。彼が作った曲があんなにもたくさんあるなんて、知らなかった。フランキーが書いた楽曲のリストを見たときはびっくりしたよ。あんなにも多くの名曲を書き上げていたなんて、本当に驚きだった……。彼の曲はずっと聴き継がれていくべきだ。彼の曲はずっと記憶されるべきだし、彼の曲はずっと尊敬を集め続けていくべきだ」
■ロッド・スチュワート:「初めて彼のライヴを観たのは、リッチモンドあたりのパブでのこと。とても良い歌手だから観に行かなきゃと思ったんだ。そのとき歌ってたオーティス・レディングの「These Arms Of Mine」があまりにも良くて、こちらは目に涙が浮かんできた。最高だったよ」
■ジョー・ウォルシュ:「フランキーの存在を知ったのは、ザ・フーのエンジニアを長年務めたボブ・プリデンのおかげだよ。フランキー・ミラーの曲は聴いたことがあったけど、誰が歌ってるのかはわからなかった。だから、すごい歌声の歌手がいるって説明しようとした。オーティス・レディングみたいに聞こえるとしか形容できなかったけど、ボブはそれが誰のことかピンときたんだ。こちらが“今まで聴いた中で一番すごい歌手だ”って言ったらね。フランキーはたいていワン・テイクで録音を済ませていた。そういうことができる歌手は何人かいないよ。フランク・シナトラもそのひとりだ。スタジオ入りして、歌って、それで終わり。フランキーもそういう芸当のできる優れた歌い手だった。世間の人たちも、今以上にフランキー・ミラーのことを知らなければいけない」
■ポール・キャラック:「フランキーに初めて会ったのは1973年か74年ごろ。こちらがエースというバンドにいたころだった。ある日、ホープ&アンカーというパブに行ってライヴの仕事をもらおうとしたら、ちょうどあの店でフランキーがリハーサルをしてたんだよ。フリーのアンディ・フレイザーと一緒にリハーサルしてたと思う。あれには度肝を抜かれたね。僕としては“こいつは参った、もう一度、出直しだ”って感じになったよ。その後、一緒に仕事をするようになったんだ。すごくいい奴だったよ。最近は体調を崩してたけど、それでも不屈の精神を失ってはいなかった」
Written By Sam Armstrong
『Frankie Miller’s Double Take』