アルバム・バンドへ移行していったムーディー・ブルースの『Every Good Boy Deserves Favour』
ムーディー・ブルースは常にヒットシングル曲を生む才能があったが、1970年の節目には彼らがアルバム・バンドへと移行する様を目の当たりにすることになった。ゆったりと思い描かれ、高度に洗練された一連の偉大な制作物とともに、収録した楽曲は1曲もチャート入りしていないにも関わらずアルバムがイギリスのチャート1位を獲得していた彼らは、1971年の夏にその進化をより知らしめることになった。
1971年7月に発売された『Every Good Boy Deserves Favour (邦題: 童夢)』はト音記号のEGBDFから名前がつけられた。このアルバムは、アメリカでシングル・チャート30位入りしたジャスティン・ヘイワードが印象的な「The Story In Your Eyes」を収録しており、バンドのリクエストによってイギリスで市場からは回収されたが、アルバムが1位獲得の妨げにもならなかった。
1969年、ムーディー・ブルースのアルバム『On The Threshold of a Dream(邦題: 夢幻)』はイギリスで1位を獲得した。同年リリースした次のアルバム『To Our Children’s Children’s Children(邦題: 子供たちの子供たちの子供たちへ)』はザ・ビートルズの『Abbey Road』によって2位にとどまることになったが、1970年に発売したアルバム『A Question of Balance』は3週間連続でトップの座を守り抜いた。
そして1971年にリリースされたアルバム『Every Good Boy Deserves Favour』 は、メンバー5人全員の功績が伝わる唯一のムーディー・ブルースの曲であるオープニングの「Procession」はもちろん、5人のバンド・メンバーによるそれぞれのソロが生かされた構成になっている。さらに民主的なことに、(ムッシュ)ジャスティン・ヘイワード、ジョン・ロッジ、レイ・トーマス、マイク・ピンダー、そしてグレアム・エッジは全員がそれぞれリード・ヴォーカルをとった。
当時のイギリスのアルバム・チャートではコンピレーションが好まれており、最近のヒット曲とよく似たヴァージョンを収録した人気コンピレーション『Hot Hits 6』と入れ替わりながら、ムーディー・ブルースのアルバムはイギリスのチャートの2位に登場、1971年8月14日には1位の座についた。ムーディー・ブルースのアルバムが1位だったのはその週だけだったが、その次の4週間は3位にとどまり続け、アルバムの持久力を見せつけながら合計9週間もトップ10をキープしたのだった。
Written by Paul Sexton
ムーディー・ブルース『Every Good Boy Deserves Favour (邦題: 童夢)』