エルトン・ジョンが新しいフェーズへと移っていった『Blue Moves / 蒼い肖像』
1976年の秋には、エルトン・ジョンは圧倒的な勢いで音楽制作を続け、およそ7年間で11枚目のスタジオ・アルバムのリリースを控えていた。さらにこのシンガー・ソングライターとバンドのツアーも世界規模になっており、その忙しさを考慮するとさらに素晴らしい功績だと言える。そして今では多くのファンが彼のレパートリーの中でも隠れた宝と評し、エルトン・ジョン自身が今でも最も好きな作品のひとつとするアルバムがリリースされたのだ。
2枚組LP『Blue Moves(邦題:蒼い肖像)』は、プロデューサーにガス・ダッジョンを起用し、1976年10月22日にエルトン・ジョン自身のレーベル、ロケット・レコードから初めてリリースしたアルバムである。厳しいスケジュールの中で、エルトン・ジョンと作詞家のバーニー・トーピンはリリースのために新たに18曲を書き下ろし、アルバムの発売前にバンドはすでに夏のツアー”Louder Than Concorde But Not Quite As Pretty”に出向いていた。
エルトン・ジョンは少なくとも今の時点において、自分のキャリアにとっても人生にとっても、ここまで忙しいツアーをすることよりも大事なものがあると発表した。それからツアーはだいぶ減り、その判断がもしかすると『Blue Moves』の成功に影響したのかもしれない。普遍的なバラードやファースト・シングルの「Sorry Seems To Be The Hardest Word(邦題:悲しみのバラード)」を覚えている人も多いが、エルトン・ジョン愛好者にとっては、あまり知られていないエルトン・ジョンとバーニー・トーピンの宝が詰まったアルバムと考えられている。
ポール・バックマスターは、感情を揺さぶるような、ゆっくりと高まる「Tonight」や、早くもディスコ・フロアに飛び出した約7分におよぶ「Bite Your Lip (Get Up And Dance)」など、見事なオーケストレーションを行った。後者はシングルになり、また「Crazy Water」もシングル・リリースされた。
また、見事にゆったりとした「Idol」、繊細な「Cage The Songbird」、そして「If There’s A God In Heaven (What’s He Waiting For?)」も聴き逃せない楽曲であり、後者2曲はともにギタリストのデイヴィー・ジョンストンとの共作である(デイヴィー・ジョンストン共作のクレジットは全5曲)。さらに、ブレッカー・ブラザーズ、デヴィッド・サンボーン、そしてグラハム・ナッシュ、ブルース・ジョンストン、トニー・テニールなどのヴォーカリストを含む名だたるミュージシャンも参加した。
『Blue Moves』は米英ともに3位を記録し、イギリスではゴールド、アメリカではプラチナを記録し、その他の多くの国でもトップ10入りを果たした。1975年の前作『Rock Of The Westies』よりもダウンビートであると、バーニー・トーピンはサーカス誌に話した「聴く人は『Blue Moves』を深読みすることであろう:誰のことなのか、なぜバーニーはこう書いたのか、エルトンはどのようにしてこの気持ちにたどり着いたのか?ってね。聴く人が解釈するのは構わないが、でも単純に聴いて楽しんでもらった方がいいな」。
Written by Paul Sexton
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