ドレイク記録破りの新作アルバム『Certified Lover Boy』:6つのハイライト曲を解説
カナダ、トロントが誇るヒップホップ界のスーパースター、ドレイクが2021年9月3日に全21曲を収録した新作アルバム『Certified Lover Boy』を発表し、Spotifyでの初日の再生数が1.75億回と史上最高値を更新し、収録楽曲の「Girls Wants Girls」は米国内で1日に614万6,000回再生を記録して、オリヴィア・ロドリゴが保持していた「drivers license」の記録を更新。Apple Musicでも2021年にて1日で最も再生されたアルバムに認定された。
2018年の『Scorpion』以来となるこの新作『Certified Lover Boy』には、復活祭でのイースターエッグ探しのようなワクワク感や、過去の名曲のサンプリング、じっくりと何度でも聴きたい意味深な表現を伴うフリースタイルならではの爆弾のような歌詞が散りばめられている。彼こそが、豊かなヒップホップの歴史を受け継ぎながら、遊び心を持って過去を再現する独創的アーティストである証明だ。
アルバム『Certified Lover Boy』で、ドレイクは、新作を発表する度にチャートのトップに立ち、ラップ界の偉大なショーマンであり続けられる秘訣について再び深く掘り下げている。この記事では、ハイライトとなる6つの収録曲を紹介しながらアルバム『Certified Lover Boy』の重要性を解説していく。
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1. Champagne Poetry
インスピレーション:マセーゴ、ザ・ビートルズ
『Certified Lover Boy』は、サンプリングを多用した「Champagne Poetry」から始まる。この曲では、ドレイクが地雷原をムーンウォークしたり、評価よりも常に動き続けることを選択することについて、どう猛にラップしながら、いくつもの感情を行き来する。言い換えれば、典型的なドレイクの作品だ。
序盤は、マセーゴの官能的なR&Bジャム「Navajo」から、繊細な“I love you”の歌詞とウォーキング・ベースラインを引用しているが、途中からビートが反転し、聖歌隊の声をバックにドレイクらしい思慮深いラップが繰り出されていく。オリバー・エル・ハティーブ、マネシュ、マセーゴ、40がプロデュースする同曲には、ザ・ビートルズの1965年のアルバム『Rubber Soul』からの名曲「Michelle」へのオマージュも込められている。
アルバムのオープニングを飾るこの曲には、ありとあらゆるものが詰め込まれ、頂点に君臨するドレイクが新作『Certified Lover Boy』に全力を注ぐことを多くのファンたちに向けて宣言しているかのようだ。
2. Papi’s Home
インスピレーション: モンテル・ジョーダン、アトランタ
モンテル・ジョーダンの「Daddy’s Home」をサンプリングした「Papi’s Home」は、アルバム『Certified Lover Boy』の前半のハイライト曲だ。表向きには彼の息子に向けた、またより広い意味では、過去に彼を不当に扱った人々へ向けた和解の曲である。
ドレイクはこの曲のイントロで、「世界中のすべての息子たちへ/すべての後輩たちへ/不在にしてたことを謝罪するよ、君たちに名前を残すことなく立ち去ってしまったのはわかっている/君たちがどうやって影響力を高め、お金を稼ぐことを期待していたのかはわからないが/もう心配ないさ/パパは家に帰ってきた」とラップする。
感傷的な内容でありながら、ドレイクはヒップホップ界を仄めかす古典的なスタイルも披露している。例えば、「シエラ・キングの駐車場は、マジック・シティの駐車場に似ている」の一節は、アトランタにある伝説的ストリップ・クラブで、ヒップホップ界の多くの大物スターたちがライヴを行ってきた“マジック・シティ”にちなんだものだ。
3. Love All
インスピレーション:ノトーリアス・B.I.G.
ドレイクは『Certified Lover Boy』の中で、今は亡きノトーリアス・B.I.G.を讃えている。1997年に発表されたビギーの傑作アルバム『Life After Death』からのタイトル曲をサンプリングした「Love All」は、元曲同様に、「Previous on ready to die(前回までの“ready to die”は)」という台詞で始まり、「Life After Death」にゲスト参加しているジェイ・Zのヴァースをそのまま使用。ビギーのレガシーとヒップホップ界に与えた影響への直接的なオマージュだ。
4. Way 2 Sexy
インスピレーション:ライト・セッド・フレッド
『Certified Lover Boy』の中でも最も大胆なサンプリングは、ライト・セッド・フレッドが1991年に発表したヒット曲「I’m Too Sexy」のコンセプトとサウンドを取り入れた「Way 2 Sexy」だろう。ここまでシリアス且つ内省的な曲が続いていた同アルバムにおいて、ワイルドで遊び心のあるこのトラックで、一息ついて新鮮な空気を吸うことができる。
この曲では、フューチャーとヤング・サグというヒップホップ界で最もセクシーな2人のゲストが、自分たちはどうセクシーすぎるのが、セクシーすぎて相応しくない様々なものについて説明。この2人にはうってつけの役回りだ。
フューチャー、ドレイク、ヤング・サグの3人は以前にも、ドレイクの2020年のミックステープ『Dark Lane Demo Tapes』の収録曲でこれまた最高にセクシーで遊び心のある1曲だった「D4L」で共演。2021年7月に、3人が全身白の衣装でビデオを撮影している映像が公開されてから、ファンの間ではこの「Way 2 Sexy」が2020年の新曲「Laugh Now Cry Later」に続く『Certified Lover Boy』のセカンド・シングルとしてリリースされるのではないかという憶測が飛び交っていた。
フューチャーはその麻薬のような甘いヴォイスで「俺はこのシロップにはセクシーすぎる/お前の女にはセクシーすぎる/この世界にはセクシーすぎる/この氷にはセクシーすぎる/あいつにはセクシーすぎる」とコーラスで歌い上げる。
5. Knife Talk
インスピレーション:スリー・6・マフィア
「Way 2 Sexy」以外にも、アルバム『Certified Lover Boy』にはヒップホップ界の様々なレジェンドや仲間たちがゲスト参加を果たしている。21サヴェージとプロジェクト・パットをフィーチャーした「Knife Talk」で、ドレイクはメンフィス出身のホラーコア・グループ、スリー・6・マフィアのジューシー・Jによる2017年のヒット曲「Feed the Streets」と、ジューシー・Jがプロデュースを手掛けた同グループの「Poppin’ My Collar」をサンプリング。
また、ジューシー・Jの兄であるプロジェクト・パットが歌う「Feed the Streets」のヴァースには、「Poppin’ My Collar」のフロウが挿入されていることから、この「Knife Talk」はまさに兄弟のコラボレーション作品とも言える。
6. You Only Live Twice
インスピレーション:マイケル・ジャクソン
マイケル・ジャクソンは、長年にわたってドレイクのインスピレーションであり続けている。ドレイクは、2018年の『Scorpion』の中で、キング・オブ・ポップの生前の未発表曲に自らのラップをつけたコラボレーション曲「Don’t Matter to Me」を発表。そして新作『Certified Lover Boy』に収録された「You Only Live Twice」で、ドレイクは歌詞の中で「The Man in the Mirror」に言及しながら、マイケルの名前を挙げている。
2009年に行われたマイケル・ジャクソンの追悼式の最後に「The Man in the Mirror」が流れ、今この曲が「You Only Live Twice」と呼ばれているのは偶然なのだろうか?真相は知る由もない。
Written By Sam Armstrong
ドレイク『Certified Lover Boy』
2021年9月3日配信
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