ルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキー「Despacito」: 世界的ラテンムーブメントの先駆け

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Cover: Courtesy of Universal Music Latino

2017年1月13日、カリブ海北東の島国プエルトリコのシンガーであるルイス・フォンシ(Luis Fonsi)の10枚目のアルバム『Vida』のリードトラックとしてダディー・ヤンキーをゲストに招いた「Despacito(デスパシート)」が発売となった。

レゲトンのビートと繰り返される挑発的なコーラスが印象的なロマンティックなラテン・ポップ・ソング「Despacito」は、この夏を象徴する大ヒット曲となり、現在まで続く世界的ラテン・ムーブメントの先駆けとなった。

しかし、この曲がローカル・ヒットからグローバルな現象になるまでには少し時間がかかった。

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ルイス・フォンシは、「Despacito」を彼の作曲パートナーであるエリカ・エンダーと共に書き上げた楽曲だ(後に米ビルボードのインタビューで、この曲の90%は自宅で2時間以内に完成したと語っている)。そこにレゲトンの全盛期を迎えていたダディー・ヤンキーが加わり、曲にさらなる勢いを与えた。ユニバーサル ミュージック ラティーノは、この曲を2017年の新年早々にリリースし、3週間後にはビルボードのHot Latin Songsチャートで1位を獲得。その後、首位の座を35週間に亘ってキープした。

そこに登場したのがジャスティン・ビーバーだった。ルイス・フォンシとダディー・ヤンキーにジャスティンのヴォーカルを加えたリミックス・ヴァージョンは、「Despacito」を前人未到の領域へと導いていく。ラテンの楽曲として1996年の「Macarena(恋のマカレナ)」以来となる全米シングルチャートのトップに立ち、そして16週1位という驚異的なヒットとなった。さらに、世界中のラジオ局で繰り返しオンエアされ続けた。

このコラボレーションは、ラテン音楽がメインストリームに進出した前例のない瞬間として、音楽業界の関係者やジャーナリストたちから称賛の声を浴びた。2017年8月には、ジャスティン・ビーバー抜きのオリジナル版ミュージック・ビデオがそれまでにYouTube史上最も視聴されたビデオとなり、2025年1月までにその再生回数は86億再生を記録し、子供向け動画「サメのかぞく」についで世界で2番目に視聴される動画となっている。

当時、NPRの記者は「スーパーの食品コーナーでも流れている」とコメントし、ニューヨーク・タイムズ紙は後に「メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)からレイバーデー(労働者の日)まで、唯一重要だったポップソング。それが“Despacito”だ」と記した。

この曲はルイス・フォンシに7つのギネス世界記録をもたらした。これらの栄誉は、彼のキャリアをラテン・ラヴァーから世界的なスーパースターへと押し上げただけでなく、ラテン音楽が前例のない成功を収めたことを意味していた。彼はNPRの取材にこう答えている。

「この曲は気分を高揚させてくれる素晴らしい曲だよ。しかし、私たちが生きているこの時代には分断や壁を作りたがる人々が存在し、多くの変化を経験している。だからこそ、このスペイン語の歌が1位になるというのは本当に素敵なことなんだよ」

「Despacito」は、最優秀楽曲や最優秀レコード賞を含むグラミー賞の3部門にノミネートされたものの、いずれも受賞を逃し、その理由を人種的偏見によるものだと見る声もあった。しかし、その時すでに「Despacito効果」は忘れがたい足跡を残していた。ルイス・フォンシはこう語る。

「この曲は世界的なラテン・ムーブメントの先駆けとなった。それを自分の手柄にするつもりはないし、すべて僕や楽曲のおかげだと言うつもりもない。このラテン・ムーブメントは多くの楽曲や多くのアーティストの集大成なんだ。でも、この曲は確実にその扉を開け放ったんだ」

歴史はその後、彼のこの主張を証明することになった。

Written By Judy Cantor-Navas



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