デラニー&ボニーのシングルとデレク&ザ・ドミノスとなるメンバーが集結した『D&B Together』
1960年代後期から1970年代初期にかけて、デラニー&ボニー・ブラムレットはソウル色を強めたアメリカン・ルーツ・ミュージックの世界で名を挙げようとしていた。このデュオはアルバムとツアーに活動の重点を置いていたが、全米シングル・チャートのトップ20にも2度顔を見せている。
1971年の中頃、デラニー&ボニーは「Never Ending Song Of Love(邦題:愛の歌は永遠に)」をチャートの13位に送り込んだ。これはデラニー・ブラムレットが作った曲で、イギリスでもニュー・シーカーズのカヴァー・ヴァージョンが大ヒットになっている。さらに1971年9月25日には、次のシングル「Only You Know And I Know」も全米シングル・チャートの圏内に入った。こちらは自分たちで作った曲ではなく、デイヴ・メイソン(元トラフィック)のカヴァーだった。このシングルは、デイヴ・メイソン自身が出したヴァージョンよりもいい成績を収めている。
デイヴ・メイソンのオリジナル・ヴァージョンは前年の1970年の夏に全米チャートの42位に達していた。しかしデラニー&ボニーのヴァージョンはその順位をさらに上回った。1971年9月25日、このシングルは初登場71位を記録。その後どんどん順位を上げていき、わずか2週間後にトップ40入りを果たしている。そして11月上旬には最高20位に到達。デラニー&ボニーがシングル・チャートのトップ20に入るのはこれが最後となった。
デラニー&ボニーは『Motel Shot』に続く6枚目のアルバム『D&B Together』を1972年3月に発表する。「Only You Know And I Know」は、このアルバムから先行発売されたシングルのひとつだった。デラニー&ボニーは実に魅惑的なデュオだったため、その周囲には好みの合うミュージシャンが何人も集まっていた。『D&B Together』には、当時頻繁に共演していたエリック・クラプトンのほか、レオン・ラッセル、デュアン・オールマン、デイヴ・メイソンも参加している。
こうした豪華なゲスト・ミュージシャンの中には、やがてデレク&ザ・ドミノスに参加する顔ぶれが全員揃っていた。このエリック・クラプトンのグループは、数年前からデラニー&ボニー&フレンズという名前でブラムレット夫妻のバック・バンドを務めている。他の3人のメンバー、キーボードのボビー・ウィットロック、ベースのカール・レイドル、ドラムスのジム・ゴードンは全員『D&B Together』で演奏している。またデイヴ・メイソンとでオュアン・オールマンも、のちにデレク&ザ・ドミノスのレコーディングに参加しることになる。
『D&B Together』には、さらに素晴らしいミュージシャンが数多く顔を見せていた。たとえばスティーヴ・クロッパー、ビリー・プレストン、ジム・プライス、リタ・クーリッジ、ジョン・ハートフォードといった具合。加えて、ティナ・ターナー、メリー・クレイトン、キング・カーティス、ジェームス・ジェマーソン、エディ・ケンドリックスといったR&Bの大物たちも名を連ねている。またこのアルバムには、デラニー・ブラムレットとレオン・ラッセルの共作曲「Groupie (Superstar)」も収められていた。これは当時既にカーペンターズが「Superstar」として録音し、人気曲となっていたものだ。この『D&B Together』というアルバムは全米アルバム・チャートでは最高133位を記録。しかし内容の素晴らしさから見ても参加メンバーの豪華さから見ても、もっと高い順位に入るべきアルバムだった。
Written by Paul Sexton
デラニー&ボニー『D&B Together』