ディーン・マーティンが歌うクリスマスの名曲「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」制作秘話

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Photo: Capitol Records Archives

1959年8月は、アメリカのほとんどの地域で異常に暑い夏だった。同年8月6日の木曜日、「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」のレコーディングのためハリウッドのノース・ヴァイン・ストリート1750番地にあるキャピトル・レコードのスタジオに入ったディーン・マーティン(Dean Martin)は、こんな暑い日に冬の曲を歌うのかと内心ワクワクしていた。

ビング・クロスビーの滑らかなバリトンのヴォーカルと歌い方を真似たディーン・マーティンの歌声は、ホリデイ・シーズンを祝うこの曲にぴったりだった。キャピトル・レコードからリリースされたアルバム『A Winter Romance』に収録されたディーン・マーティンの「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」は、最も素晴らしく、また人々に愛されているカヴァーであり、今ではクリスマスに欠かせない定番曲となっている。

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「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」の制作秘話

ディーン・マーティンがこの曲をレコーディングする14年前、1945年のアメリカで最も暑かった日に、この曲はサミー・カーンとジューリー・スタインの手によって生まれた。作詞家のサミー・カーンと作曲家のジューリー・スタインは、ポピュラー音楽の黄金時代を代表する偉大なソングライターだった。全盛期には1語につき1,000ドル以上の収入を得ていたサミー・カーンは、アメリカで最も稼いだソングライターと言われ、1954年の映画『愛の泉』のために彼が書いた「Three Coins In The Fountain」、映画『抱擁』の「All the Way」、『波も涙も暖かい』の「High Hopes」、映画『パパは王様』の「Call Me Irresponsible」で4度のアカデミー賞を受賞している。

しかし、これらのアカデミー賞受賞作品も、太陽の降り注ぐカリフォルニアで書かれ、今尚愛され続けている「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」と比べると色褪せてしまう。ポール・ゾロによる著書『Songwriters On Songwriting』の中で、サミー・カーンはこの有名な曲が生まれた経緯をこう回想している。

「僕が“ビーチに涼みに行かないかい”とジューリーを誘ったんです。そしたら彼が、“ここに滞在して、冬の歌を書いてみないか”と言い出して、僕はタイプライターに向かいました。“外の天気はひどいけど/暖炉は暖かくて快適だ/他に行くところもないのだし/雪よ降れ、降れ、もっと降れ”の歌詞は、“雪を降れ”がなぜ2回や4回ではなく3回なのかって?それは3回の方が叙情詩的だからです」

様々なアーティストによってカヴァーされている「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」

この曲は、1945年にヴォーン・モンローがRCAビクターのために最初に録音し、その後すぐにウディ・ハーマンやコニー・ボスウェルらによるカバーが続いた。しかし、ガス・レヴィーンが編曲し、ハイ・レスニックが指揮を執ったディーン・マーティンのヴァージョンがクリスマスの名曲となった。彼の1959年のレコーディングは、アニメーション・スタジオ“Fantoons”による、クリスマスの名曲をアニメ化するホリデイ・シリーズの最新作として2019年にミュージック・ビデオとして公開されている。

カーリー・サイモンやロッド・スチュワートもまた「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」をレコーディングして成功を収めている。カーリー・サイモンが2005年に録音したヴァージョンは、客ではなく一家の主人の視点で歌われているのが特徴的だ。一方で、ロッド・スチュワートが2012年のアルバム『Merry Christmas, Baby』に収録した「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」は、同年12月に米ビルボードの“アダルト・コンテンポラリー・チャート”で1位を獲得した。

サミー・カーンとジューリー・スタインが生んだこの名曲は、様々なスタイルで解釈が可能な、非常にアイコニックな作品で、過去にはケイト・ラズビー(フォーク)、ルイ・ベルソン(ジャズ)、アーロン・ネヴィル (ソウル)、ランディ・トラヴィス(カントリー)、トゥイステッド・シスター(ヘヴィ・メタル)、ジェレマイ&チャンス・ザ・ラッパー(ヒップホップ)、マイケル・ブーブレ(ポップス)らがカヴァーしている。

この曲をとても気に入っていたディーン・マーティンは、1966年の『The Dean Martin Christmas Album』のために再録音したが、1959年のヴァージョンを越えるのは難しかった。

1995年12月25日、ディーン・マーティンは急性呼吸不全のため、ビバリーヒルズの自宅で78歳で亡くなった。映画監督のピーター・ボグダノヴィッチは、「ディーン・マーティンがクリスマスの日に死んだというのは、彼が最後に放ったブラックジョークかもしれない」と彼を追悼した。しかし、ディーン・マーティンの魂は今も生き続けており、彼が「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」を歌っていなければ、今のクリスマスは全く違ったものになっていたかもしれない。

Written By Martin Chilton



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